19 笑顔は最強
このストーリーはフィクションです。登場する人物や団体と関係はありません。又、一部性的な描写がございますのでご注意ください。そして、この作品は日本の歴史や神話を基にした構成があり、一部の方々に怒られそうな内容が記載される場合がございますので、先に謝ります。申し訳ありません。
波場激昂には、憧れているヒーローがいる。その人物の名前は、スカイ=ウォーカー。当時では珍しい自警団の一人である。ヴィジランテとは、その名の如く警察や消防に頼ることなく、“自分の身は自分で守れ精神”を持った人たちであり、それなりの功績を持ったヴィジランテもいた。彼の恩寵は、“空中歩行(スカイ=ウォーク)”。空を歩くことができるだけの恩寵であり、学生時代は公務員を夢半ば諦めていたが、ヴィジランテになり、多くの人々を救ってきた。
そんな救われた一人に波場激昂もいた。波場は小学生当時、強すぎる恩寵と両親がいないことで孤独だった。あるとき、波場は人災者に襲われている人を助けようと、恩寵を行使しようとした際、恩寵の暴走により、近隣の住宅やマンションを倒壊させてしまう。その場に居合わせた警官、消防士が手を打てない中、スカイ=ウォーカーは、怪我人を出さずに避難者を全て無事に救助した。
「へい、少年!無事かい?」
スカイ=ウォーカーは、瓦礫に挟まり身動きができない波場に手を差し伸べた。
「助けて……」
「大丈夫だ、少年!俺が笑顔の内は誰も死なせないぜ!少年もほら」
そう言うとスカイ=ウォーカーは、指を使って口角を上げた。
「笑顔は人の最強の攻撃さ!どんな敵にも笑顔は勝つのさ!今は君の恐怖に打ち勝つときだ!」
そう言われ、波場は微笑んだ。そのときだった。スカイ=ウォーカーは屈伸をした。刹那、スカイ=ウォーカーは瓦礫を吹き飛ばした。
「ほらな、勝ったぞ!!」
スカイ=ウォーカーは波場に手を差し伸べた。波場はそれを力強く掴んだ。
「待てや」
そのとき、スカイ=ウォーカーの背後で声が聞こえた。そこには、パンツ一丁の巨漢が立っていた。
「お前が、通報された人災者か?」
「ああ、俺様の名前は変態マン!!人に辱められると強くなっちまうんだよ!!」
そう言うと、男はパンツを降ろした。すると、全身に血管が浮かび上がり、体が大きくなっていく。
「少年!下がってな!」
「でも、アイツ強いよ!」
「大丈夫さ!正義は決して悪に屈してはいけないんだぜ!」
そう言うと、屈伸をして変態マン目掛けて飛んだ。自分の体より遥かに代大きな形の男を足蹴りで上空に飛ばした。本来、“朱雀”は力の方向にしか浮かび上がることができない。つまり、垂直か斜めにしか浮かべず、浮遊時に方向を変えることはできない。ただし、極めれば爆発的な勢いで浮かぶことができる。スカイ=ウォーカーは“朱雀”を用いた浮遊+“空中歩行”で、空中を兎の様に爆速で移動することができる。
「行くぞ!変態野郎!」
スカイ=ウォーカーは男の背後に掴まり、頭を下にして地上目掛けて、自分ごと落ちていった。あまりにも衝撃の大きなスープレックスに、辺り一面の瓦礫が吹き飛んだ。砂埃が舞い、野次馬が咳き込んだり、顔を手で覆ったりする中、血だらけになりながらも立っているスカイ=ウォーカーがいた。その勇姿に歓声が沸き上がった。
「いきなり大技を出してしまったよ……!」
しかし、変態マンは起き上がっていた。そして、スカイ=ウォーカーを片手で吹き飛ばした。
「クソ野郎が!痛ェな!」
その瞬間、野次馬の表情が恐怖に変わっていった。
「お?良いね、その顔!俺様は人の恐怖に満ちた顔でも興奮すんだよなァ!」
そう言うと男は、更に巨大化していった。
「そうだな……。このままちっぽけな殺人で捕まるより、コイツも殺して有名になるか!」
そのとき、男にスカイ=ウォーカーが飛びついた。
「まだ生きているのか!この野郎が!」
男はスカイ=ウォーカーを振りほどこうとする。
「俺はまだ諦めないぞ……!俺の力の源は笑顔だ!俺自身、笑顔を絶やさなければ最強なんだ!!」
スカイ=ウォーカーは空中でバウンドしながら、攻撃していく。
(こいつ!空中でバネみたいに飛び跳ねていやがる!酔っちまう!)
約数十分間も攻撃を続け、男は倒れた。スカイ=ウォーカーは辛うじて立っていた。そして、片腕を上げた。そのとき、凄まじい歓声が上がった。
波場は助けられたときから、スカイ=ウォーカーの大ファンとなり、彼の背中を追った。そのとき、スカイ=ウォーカーにインターン生として、夫丈高校の生徒が就くというニュースを目にした。波場はそのとき夫丈高校に入学しようと決意した。散々だった勉学を死に物狂いで学んだ波場は、推薦をとることができ、無事に夫丈高校に進学したが、進学する前に“秩父大人災事件”で命を落とした。
波場は亡き彼の使命を全うすべき考え、彼は常に笑顔になったのだった。
波場は、全身に衝撃波を纏わせた。
「炎司!俺もお前の真似するぜ!!」
波場は更に衝撃波を圧縮させていく。その様子は、先程炎司が行った“甕速日”だった。
「え?激昂。それできるのか?」
「感覚でできた!」
炎司はその発言に心底驚いた。これはある程度“神域”が行えないとできないと思っていたので、こうも容易く行えてしまうと、努力の成果が薄れてしまうと感じた。波場は全身から一点に意識を集中させ、掌から玉を作り出した。波場は玉をに“玄武”と衝撃波を纏わせていく。波場はその玉を放つと、凄まじい衝撃が辺りを包んだ。その玉は魁を吹き飛ばした。思わず波場はガッツポーズをした。派手に吹き飛んだ魁は咳をしつつ、起き上がっていた。
「さっきの攻撃でびくともしないんなんて……。まだ人手は足りそうに……」
佃煮がそう言おうとしかけたとき、後ろから肩を組まれた。佃煮は思いがけず咄嗟に振り返った。そこには大道寺鳶鷹がいた。
「良いねえ。楽しそうじゃん、炎司。俺も入れてくれよ」
鳶鷹は炎司の肩も掴み、微笑んだ。
「俺たちも入れてくれよ」
声の方向には、草木茂と國咲悟空がいた。
「茂に國咲も?良いのか?」
鳶鷹は茂に尋ねた。
「ああ、あの噂か?あれは挑むと返り討ちにされてただただ何もできずに不合格になるってだけさ。負けなければ合格の可能背はあるぞ」
茂がそう言い笑った。
「俺たちはもう腐れ縁だろ」
悟空も同じように笑った。
「大道寺の友だち、心強いな」
佃煮は思わずそう言った。
「な?最高だろ?」
炎司がそう言うと、笑顔を見せた。
「話は済んだか?」
鬼瓦が鋭利な爪を見せながら、襲い掛かっていた。しかし、悟空が爪を両手で掴んで防いでいた。
「牙狼は任せろ」
悟空がそう言うと、爪を掴んだまま吹き飛ばした。
「俺はあの像をもう一回吹き飛ばしてやる!」
波場はそう言って、魁の方へ走っていった。
「耳鼻先生は俺に任せて二人は、天掛さんを頼んだ」
茂はそう言い残し、向かった。
「行きますか、大道寺」
佃煮はそう言い、炎司を見た。炎司は静かに頷いた。
魁は警戒していた。
そもそも、彼らには事前に受験する生徒の顔や成績、恩寵が把握される。そこで魁たちには、推薦学生や、上位成績者が報告されるのだが、そこに波場の名前があり、彼の“血縁”も記載されていた。
「アイツの曽孫なのか!?」
資料を見ていた魁が思わず立ち上がった。
「別に無理な話ではないだろ」
鬼瓦がそう言うと、魁は思わず鬼瓦の胸ぐらを掴んだ。
「お前!!アイツのせいでどれだけの人が死んだと思っているんだ!」
「あー、そっか。お前さんの師匠もそれで一時期重篤になったもんな」
耳鼻がそう言うと、魁は耳鼻を睨みつけた。
「この野郎……!!」
魁は拳を振り翳した。
「止めましょう」
天掛がすかさず止めに入る。
「彼は彼。奴は奴です。子孫に罪はない。失ったのは、鬼瓦さんも同じでしょう?私もそうです今は彼の試験に対する意気込みに関心を持ちましょう」
そう言うと、魁は手を降ろした。
「お前。奴の曾孫なんだってな……」
魁の発言に波場の動きが止まる。
「その反応、お前を知らないって訳じゃないんだな。俺はな、あの事件で大切な人を失いかけた。結局他の事件で命を落としたが……。ここで会ったのは運命かもな」
魁の長い鼻が波場の上空から振り落とされた。波場の足元がひび割れる。辺りに砂埃が舞う。そのとき、波場の顔から笑顔が消えた。魁は波場の顔を見た。そのとき、全身が金縛りのように動かなくなった。と言うよりも、体が恐怖に震えているようだった。
「……!?どういうことだ!体が思うように動かないし、震える!お前、何をしたんだ!!……まさか!お前、“麒麟”を……?」
「俺は“過去”と決別したんだ。あの人に言われたんだ。君は君だって。俺はあんなクソ野郎ではないんだ!!クソじじいが殺した分、俺は人を助ける。そのために俺は最強の男になるんだ!!」
波場の衝撃波が広範囲に及んだ。空を飛んでいた鳥が落ちていく。鳥は泡を吹いて気絶していた。
(ここで潰さないと脅威になるぞ!)
魁は鼻に空気を溜めた。大きく膨らんだ鼻から強力な空気を発射した。
「“嚏象牙”!」
「“鬼王・黒点苦”」
波場は人差し指に意識を集中させた。波場は無意識に“麒麟”を纏っていた。より強力になった点苦は魁を襲った。先程の攻撃では、少ししか傷を負わなかった魁は、更に全身を“玄武”で纏っていたが、凄まじい攻撃に魁は遥か上空に吹き飛んだ。魁は地面に落下していたときには気絶していた。




