18 仮免取得試験
このストーリーはフィクションです。登場する人物や団体と関係はありません。又、一部性的な描写がございますのでご注意ください。そして、この作品は日本の歴史や神話を基にした構成があり、一部の方々に怒られそうな内容が記載される場合がございますので、先に謝ります。申し訳ありません。
仮免試験までの数週間、生徒たちは各々の課題に取り組み、克服してきた。中には炎司のように、公務鎧を作った生徒もいる。
そして、仮免試験当日。会場は、長野県の郊外にある一つの高層ビル。広大な面積の更地の真ん中に一つだけ聳え立っている。ここは高校生が仮免試験を受けることができるたった一つの施設。年間何万人もの高校生が挑んでは、返り討ちに遭うので、通称“狭すぎる登竜門”と呼ばれている。炎司たちは高校専用のバスで向かい、各々が募る思いを抱えながら挑もうとしている。
到着すると、施設の入り口には夥しい程の人でごった返していた。
「良いですか?皆さん。貴方たちはまだ一年生です。チャンスはこれを含めて三回もあります。ですが、ここで取得した者と取得できない者は、これから先、天と地の差となるでしょう。君たちが最高の公務員になるためには、ここで公務員の第一歩を歩んでいただきます。是非、扱かれて行きなさい」
生徒たちは元気よく返事し、入り口をくぐった。
しかし、入口に入ろうとした夢に一人の巨漢がぶつかってきた。その男は学ランに帽子をかぶった男であった。
「こりゃ悪い。怪我はないか?」
男が夢の格好を見るや否や口を開いた。
「おいおい、まさか夫丈高校の人かい!?いやあ、生はやっぱり違うねえ!!」
そう言うと、夢の手を握り上下に激しく振った。夢はあまりの力に体が持っていかれそうになった。しかし、腰に茂の蔓が巻き付いたお陰で何とか耐えたのであった。
「漆喰、他校の生徒に迷惑を掛けないように。これは失礼。うちの一年が迷惑を掛けましたね」
そこには物凄く眩い男が立っていた。腕には黒を基調とした腕章をつけている。男は真田を見ると否や真田に近寄った。
「おや?おやおやおや!?誰かと思えば、真田先生じゃないか~!元気にしてたかな?」
男は舐め回すように真田は見回した。
「私は元気です。轟先生はお変わりないようで」
轟雷虎。恩寵“雷帝”。自身に雷の化身が纏っているらしく、自分自身を雷へ変化することができる。公務員ランキング 教員部門ナンバーツーであり、真田と同期である。根っからのポジティブモンスターであり、教育実習生時代では常に真田に付きまとっていた。
真田は、轟と距離を置くように歩きながら言った。轟は真田についていきながら会話を続けた。
「僕も元気さ!ところで君、大切な生徒が人災者に襲われたそうですね!お気持ちご察ししますよ!」
轟は何故か嬉しそうだった。真田は轟を睨みつける。轟は金縛りにあったように動けなくなった。
「何だ?また喧嘩か?」
そこに棘頭の男性が現れた。
「や、やあ、木枯。君を待っていたんだよ」
真田が木枯と呼ばれる男を見ると、軽く会釈し口を開いた。
「楓先生。お久しぶりです。その顔の傷はどうしたんですか?」
楓木枯。恩寵“竜巻”。自身から竜巻を発生させたり、自分自身を竜巻に変化させたりとすることができる。公務員ランキング 教員部門ナンバースリーであり、轟や真田と同期である。彼らは帝国大都学院の教員であり、轟は3-A、楓は3-Bの担任である。
「この傷は轟と手合わせしたときに、事故で付いたんだ。それより雷虎!もうすぐ手続きの時間だぞ!行かなくては!!!」
「だから君を待ってるって言ったじゃないか!君のトイレが長いのと、方向音痴は最悪で最高だな!じゃあな、真田先生!後ほど……」
そう言うと、二人と佃煮が去っていった。真田は眼鏡を正しながら、生徒の方を見た。
「良いですか?あの世な大人にはなってはいけませんよ……。それでは私たちも行きましょうか」
真田がそう言うと、生徒は控室へと向かった。しかし、一人の生徒が真田の元へ戻った。それは雨水貯であった。
「真田先生?」
「どうしましたか、雨水さん」
「さっきの二人は、ランキング上位のお方ですが、真田先生に付きまとっているのは何故ですか?言いにくいですけど、先生はランキング圏外ですけど……」
雨水は言いにくそうに言っていた。
「逆にそれが原因なのかもしれませんね……」
「じゃあやっぱり、ランキング一位に最も近い人って……」
雨水は言い掛けてところで、真田は制止した。
「もう時間ですよ。早く皆さんの所へ行きなさい」
雨水はそう促され、控室へ向かった。
「……大輝。お前との約束。俺は忘れてないからな」
それは真田がまだ学生だった頃。
真田は所謂不良であり、教員の手を焼いていた。
髪型はリーゼントで目つきは悪く、一匹狼という言葉がとても似合っていた。真田は当時、三人+一人とつるんでいた。後の消防士部門一位の煉獄太陽、後の自衛隊部門一位の三上芯、後に一部の人たちに伝説と呼ばれる警官となる神楽大輝。そして、この真田、神楽の幼馴染の後の夫丈高校保健室の先生になる堀田恵子が、ほぼ毎日同じように行動していた。当初は真田が独りで行動していたが、神楽のカリスマ性に惚れ、一緒につるむようになった。
「真!お前、不良のくせに勉強教えるの上手いな!先生向いてるんじゃないか!?」
神楽がペンを耳にかけながら言った。
「嫌だよ。俺は不良の更生物語が死ぬほど嫌いなんだよ。それに教員は公務員じゃないぞ」
そこで煉獄がツッコミを入れる。
「いやいや真。それは不良が嫌いな人が言うセリフだよ。それに近年では教員も公務員にしようって取り組みがあるらしいぞ」
教室に笑い声が響く。
「良いか、真。俺は最高の警官になる!太陽は最強の消防士に!芯は自衛隊最強の男に!真は最強の先生になれ!!!」
「いやいや、教員は恵子がなるだろ」
真田はそう言うと、すかさず堀田が
「私は細々とやりたいからパスよ」
「だとよ!真!約束やかんな、真!」
この約束が、真田が亡き友人との約束だった。
「大輝。後は俺だけだ、ナンバーワンになっていないのは。他の皆は俺のために待っていてくれるのかな……。頑張るよ」
真田は一人でそう言って、教員専用の観客席に向かった。
「お早うございます。本日は遠路はるばるご苦労様でした。私全国公務員協会の遍です。本日の日程をお伝えしたいと思います。その前に少し歴史の話をしましょうか。近年ではランキングが当たり前の世の中になりましたが、十二年前にはなかったものですから、まだまだ浸透はしていないでしょう……。元来“公務員”とは国家や地方自治体に所属する人を指していましたが、現代では戦闘場面がある職業に絞られ、教員は最近“公務員”に追加されました。今では大部分を占める警察官、消防士、自衛官に次ぐ人気な職業となりました。“公務員”の枠が収まり切れないので、名称を変えようという議題が出てますね。まあ、話はこれぐらいにして……」
遍と呼ばれる男は、机に肘を付いて気だるそうに話を続けた。
「本日は午前に筆記試験を行い、お昼休憩を挟み、午後には実戦形式の実技を行います。今から役員から案内を貰えると思うので、貰ったら記載されている部屋に移動お願いします」
そう言われる夢たちは、役員に書類の入った封筒を渡された。封筒を開けると一枚目に番号の書かれた紙と、簡略化された案内図が同封されていた。夢たちはほぼバラバラとなった。
百人近く収容できそうな部屋に着いた夢は同じ番号の机に座り、教科書をめくった。夢自身一度教科書を見れば覚えるのだが、周りの雰囲気に合わせるように教科書をめくっていた。
数分後、役員が現れ用紙を配っていく。そして、チャイムと同時に用紙がめくれる音が四方八方で鳴り響いた。数十分後、テストは何事もなく終わり、役員から改めて説明が言われ、お昼休憩となった。
午後になり、場所を移された夢たちは広大な場所へ移動した。この場所は、試験のために用意された都市を模して作られた場所である。この時点で筆記の試験結果が発表されており、既に何百人もの生徒が落選していた。
「ええ、皆さん、午前はお疲れさまでした。既に不合格者はここにはおりませんが、まだまだいますね……。えー、では、これから実技を交えた模擬救助試験を開始いたします。説明をさせていただきます。この場所には既に数百名の避難者役の人たちが隠れます。皆さんにはその人たちを救助してもらいます。人数には限りがあるのでお気を付けて……。制限時間は一時間。禁止行為は二つ。一つ目は殺害行為、即刻失格となります。二つ目は避難者役の人の迷惑行為、大きな減点とさせていただきます。その他、暴言や暴力、雑な対応などなど……。このような行為を行った生徒には、試験官を通して減点とさせていただきます。一定数の減点を越えると、こちらで提供させていただきました耳元のインカムにてご報告させていただきます。その他、生徒同士の妨害行為は許容範囲です。何卒……」
そう言うと、急に辺りが暗転した。数秒後、轟音と共に明りが灯り周りが災害現場に変わっていた。当たり一面を炎が包み、先程までなかったビルは何棟も倒壊していた。微かにだが、救助を呼ぶ声が聞こえていた。
「一体何が起きているんだ!?」
多くの生徒があたふたしている中、真っ先に動いたのは帝国大都学院の佃煮と炎司、鳶鷹、悟空だった。佃煮は腕から黒い謎の物体を四方八方に伸ばした。そして軽々と瓦礫を持ち上げた。そして、安全な場所に瓦礫を置き、救助を開始いていく。炎司は炎を吸収していく。他の生徒も遅れて救助を開始していく。帝国大都学院と夫丈高校以外の学校は手際が悪い中、半数を救助していった。
そのとき、上空から四つの人影が現れた。
「真田先生!あれ!!」
水田寺の指さしで真田も気づく。
「まさか、あの人たちが試験官なのか?本当に合格者出すつもりか?」
謎の四人が地面に着地すると、その存在にいち早く気付いたのは、雨水だった。
「あの人たちって……!!どれもランキング上位の人たちだわ!!」
降り立ったのは、全員が各部門上位十位に位置する面子であった。
東北にある有名校の音楽教師である耳鼻大。公務員コード:ダイナマイト・ヴォイス。教員部門第十位。
かなり屈強な狼の見た目であるが、児童からの人気のある警察部門第七位、鬼瓦勤。公務員コード:牙狼。
こちらは屈強な象の見た目なため、同業者にすら恐れられる消防士部門第九位、魁太。公務員コード:水泡象。
恩寵と相まって自分自身を改造してしまった狂人隊員、自衛隊部門第三位、天掛翔。公務員コード:装兵。
周りの生徒はそれを聞き、咄嗟に距離を取った。しかし、そこでも佃煮は距離を取ることなく間合いを詰めようと試みた。黒い物体を足から放出し飛び出した。
「まさかここまで大物がやって来るとは……。でもまさか本気で来ないよな……?」
観客席で見ていた轟は、木枯に問い掛けた。しかし、答えたのは真田だった。
「いや……」
「咄嗟の判断にしては、上出来だな。しかし……、甘い!!」
魁の象の鼻が、佃煮の脇腹を叩きつけた。佃煮は咄嗟に黒い物体を身に纏い防御をとった。地面にヒビが入るほどの衝撃を受けたにも関わらず、佃煮は無事であった。
「君の恩寵、未知数で面白いな」
魁は未知の存在に遭遇し、興奮している様子だった。
「それより、俺だけに目を合わせていて良いのか?」
佃煮は咄嗟に後ろを向いたが遅かった。鬼瓦の強靭な爪が佃煮を襲う。しかし、遠方から紫の炎が一直線上に飛び出してきたことにより、佃煮は難を逃れた。その炎は炎司だった。容易に避けた鬼瓦は、炎司に話しかけた。
「大道寺炎司君。君は素晴らしい。周りの状況を判断しながら、その場に合った対処をしている。君はそこら辺の公務員より動けているぞ。君は一体どんな場数を踏んでいるんだ?」
「教え方が上手い先生が沢山いるだけです」
(鳴上先生と手合わせしてみて気づいた。やっぱり、“神域”には延長性がある。しかも、恩寵と密接に関わっている。俺の炎も使い方によっては……。俺の修行段階で見つけた俺だけの“神域”)
炎司は全身を燃え上がらせ少し浮いた。そして、その炎を圧縮させていく。
(炎を圧縮した上で全身を玄武で纏い、それを何層にも重ねることで威力、強度を格段に上昇させ、何層にも重ねた炎をバネのように伸縮性に特化させた俺の“炎舞神”の新境地……!)
「“甕速日”」
炎司は目にも止まらぬ速さで動き回る。そのスピードは“炎舞神”の最高速よりも格段に速かった。天掛の砲撃を見て躱し、炎司は間合いをつめた。炎司の足蹴りが天掛の脇腹に直撃する。刹那、天掛は吹き飛んだ。
「私の恩寵上、痛みはないが良い攻撃だったぞ!私に挑戦する硬い人災者は沢山いたが、ここまで強いのは初めてだ!是非自衛隊に来ないか!?」
「誘うな誘うな!」
耳鼻が思わずツッコミを入れる。
「大丈夫か、お前」
炎司は佃煮に手を差し伸べる。佃煮は炎司の手を取った。
「ああ。助かった。先輩から聞いたんだ。この実技で人災者役の人に挑んだ奴はもれなく落ちるんだとさ」
「へえ、それは最高だな」
炎司は微笑む。それを見た佃煮は引き気味に言った。
「受かりたくないのかよ。それに俺たち帝国と夫丈は水と油。お互い交わることなく対立する仲だぞ。なんで俺なんかを助けた?」
「困っている人がいる。それだけで十分。助けるのにいちいち理由なんか必要ないだろ?」
炎司はそう言うと、微かに微笑んだ。佃煮はそれを聞いて、同じように微笑んだ。
「俺はそういう奴に逢いたかったよ。上辺だけで判断されるなんて糞喰らえだ。ありがとうな。俺は佃煮漆喰。アンタは?」
「大道寺炎司。よろしくな」
「ところで、大道寺。この状況、どうする?二対四だ。更に向こうは格上。圧倒的に不利だぞ?」
「そうだ!俺たちに挑もうとした心意気は評価してやる!!だが、俺らを倒さないと避難者を救助できないぞ?あぁあ、それだとお前ら落ちちまうな!!」
耳鼻はそう言うと、口を大きく開けた。
「“VERY・雑言”!!!」
鼓膜が破れそうになるほどの大音量と衝撃波が、炎司たちを襲う。そのときだった。
「“黒点苦”!」
耳鼻の攻撃が相殺された。相殺したのは波場であった。
「激昂……?どうした急に」
炎司は突然の波場に戸惑いを隠せなかった。
「さっきの炎司の言葉!俺にも響いたぜ!!俺も炎司と同じ意志だ!」
波場の衝撃波に、耳鼻は軽く吹き飛ばされて。
(俺の声がガキに負けた!?)
「なんだお前!!」
「俺か……?俺は正義のヒーロー!!波場激昂だ!!」




