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-Re:ika-警視庁 恩寵刑事部 特殊捜査課 通称 「零課」  作者: 灯火 由夢葉
第一幕 第二章 夫丈高校二学期
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16 聖戦 後編

 このストーリーはフィクションです。登場する人物や団体と関係はありません。又、一部性的な描写がございますのでご注意ください。そして、この作品は日本の歴史や神話を基にした構成があり、一部の方々に怒られそうな内容が記載される場合がございますので、先に謝ります。申し訳ありません。

 アリエルを倒したことで、恩寵が解除され、大樹が凋んでいった。他の生徒が『大聖徒会』の第七天使を倒しており、辺りに倒れていた。その中で一つだけ異常な光景があった。そこは、大樹の中心部であった場所で、切り落とされた片腕が、大量の血と共に流れていた。筋骨隆々なその腕は、間違いなく帯田のものであった。そして、それを取り囲うかのように対峙するミカエ&ルシファーと帯田&冷熱&炎司。帯田はあまりの激痛に床に蹲っていた。返り血を浴びたルシファーと、そんな彼を見て怯えるミカエ、その異様な光景に周りの生徒は、ただ茫然と様子を窺っている。


 それは、炎司らが最上階に飛び込んだときだった。

 「大丈夫です。自分、相当な場数踏んでいるので」

 「頼もしいね」

 「巻斗、プラン通りに」

 「応」

 「私は悲しいです。冷熱先輩。貴方は私にとって憧れでした。なのに何故私の邪魔をするのですか!私の考えは皆が幸せになるのですよ!」

 ミカエがそう言うと、手に持っていた天秤を胸の前に出した。

 「美香恵、私は何事にも必死で周りに気を遣える貴方が好きだったのに!」

 冷熱は左手から大きな氷塊を出した。その氷塊は徐々に形を変え、大きな槍の形になった。冷熱は大きな槍を回転させながら振り回す。

 「冷熱先輩、それは尾張貫流槍術ですか?」

 炎司がそう言うと、冷熱は頷いた。

 「よく分かったね。そうだよ。……炎司君、私の援護をお願い!」

 冷熱にそう言われると、炎司は辺り一面を炎で囲った。

 「この火は特殊なんでどんどん使ってください」

 炎司は更に自分自身を激しく燃え上げさせた。冷熱は槍を繊細に扱っていく。ミカエは避けるので精一杯であった。ミカエには攻撃手段はなく、今は避けることしかできない。

 「美香恵の恩寵は“天秤(てんびん)”、そして、堕の恩寵は“(ひかり)”。堕の恩寵は名前の通りだが、美香恵の恩寵は複雑なんだ。美香恵の恩寵は持っている天秤に二つの対象物を選び、自分が好きなように選ぶことができるんだ。例えば、炎司君の炎と堕の光、二つを天秤にかけ炎司君の炎が強いときに、美香恵は自分の手で、炎を弱くし光を強くすることができる。あくまで天秤だから、両方を弱くしたり、両方を強くしたりすることはできないのよ。どちらかが強ければ、どちらかが弱くなる。そういう原理ね」

 冷熱がそう言うと、ミカエは拍手を送った。

 「流石先輩ですわ。私のことをよく見ていらっしゃる。ですが今の私にはこんなこともできるのですよ!」

 ミカエがそう言うと、炎司の体が一気に重くなった。炎司は思わず跪いた。

 「今は私とそこの赤毛の男の体重を天秤にかけていますわ。そう簡単に動けないはずよ」

 ミカエはそう言うと、息を合わせたかのように炎司にルシファーが襲い掛かる。

 「炎司君!攻撃は光速じゃない!動きをよく見れば避けられる!」

 帯田が自身の帯の一部を炎司に巻き付けた。体が自由になった炎司は“白虎”も用いて、ルシファーの攻撃を避ける。


 神谷堕の恩寵“光”は、自身を光の模倣することができる。あくまで自分自身が光な訳ではないので限度があるが、光速での移動やレーザー光線が放てる。某海軍大将の様にはいかないのだ。


 彼らのプランは、厄介である美香恵の恩寵を常に絞らせないこと。そのためには冷熱の恩寵で常に氷で視界を遮りつつ、神谷対帯田の状況を常に作り、炎司という伏兵を決定打とすることであった。彼らの予想では、美香恵は常に自分の体力と堕の体力を天秤にかけ、堕の体力を強化していると考えている。美香恵の恩寵は、一つのことにしか効果がない。彼らの予想は当たっており、堕の体力は無尽蔵と言っても差し支えないほどになっていた。美香恵を止めようと替は攻撃を仕掛けるが、堕に止められる。帯田が帯で堕を拘束しようとするが、捕まえられない。

 「帯田さん、拘束の相手を捕まえられるんですか?」

 炎司は思わず問い掛ける。

 「俺と堕は二年以上お互いを高め合ってきたんだ。そんな中でアイツの行動は大体目視で追えるようになったんだが、今日は何かが違う気がするんだ。友人の勘だが」

 「勘は当たってそうですよ」

 炎司は堕の首を指さした。彼の首元には微かに血が出ており、何かを刺した跡であることが明確であった。

 「あの跡は何なんだ……?」

 帯田が言うと、冷熱が答えた。

 「恐らくドーピングだろうね……。前に資料で見た」

 「道理でいつもと雰囲気が違うわけだ!」

 帯田がそう言った。

 「どうします?プラン変更しますか?」

 炎司がそう言うと、帯田は首を横に振り言い放った。

 「いいや、こちらも本気を出す」

 帯田は体中に帯を全身に巻き付け始めた。


 帯田の恩寵“消帯”は、巻き付けることで対象者の恩寵を消すことができることとは別に、裏面を自分自身に巻き付けることで、自身の身体機能を飛躍的に向上させることができる。

 

 帯田の体が一回り肥大化した。その容姿はまるで明王のようだった。

 「行くぞ!堕ィ!」

 帯田は音速に劣らない速さで、ルシファーの間合いに入った。帯田の拳でルシファーは吹き飛ばされた。堕は壁にめり込んだが、直ぐに飛び出し、地面に着地した。そのときには背後には帯田の足蹴りがルシファーの首元を襲っていた。しかし、ルシファーは光速で避ける。そして、右手からレーザーを放った。帯田はそれを片手で弾いた。帯田は背中から蜘蛛のように帯を出した。その帯たちがルシファーを襲う。ルシファーはそれを躱していく。

 「“光降刑(こうこうけい)”」

 ルシファーの光が雨のように降りそそぎ、3人を襲った。炎司は白虎を用いて光を避けていく。帯田は肉眼で避けていく。冷熱は大きな氷で防御した。しかし、光は氷を貫通し、冷熱に被弾した。冷熱は吹き飛び、帯田が彼女を抱きかかえ彼女を庇った。ルシファーは大声で笑いながら、更に強く光を放った。光降刑は無差別で行われ、ミカエにも被弾した。その拍子に天秤が落ち、彼女の恩寵が解除された。しかし、もうルシファーは誰にも止められなかった。

 元々、ルシファーには殺すことに興味があり、これまでに何匹もの動物を殺してきた。しかし、それでは満足できずにいつしか人を殺したいと思うようになっていた。そんな彼に運命の出逢いがあった。それが、ミカエとの出逢いだった。彼は彼女に一目惚れし、彼は彼女のために尽くそうと思っていた。しかし、彼のそんな想いは、「ディアブロ」によって、歪に変わっていった。

 「俺は好きな人を自分の手で切り刻みたい……!俺のものだけになればいいんだ」

 ルシファーはそう言うと、光速でミカエの元に現れると、ミカエの唇を奪った。ルシファーはミカエの唇を甘噛みするとミカエの顔を舐め回すかのように甘嚙みしていく。ミカエは必死に抵抗するが、ドーピングしたルシファーには無意味だった。ルシファーがミカエの首筋を噛もうとしたときだった。炎司の炎がルシファーを襲った。ルシファーはミカエから離れると、炎司を睨んだ。炎司はミカエの前に立つと、ルシファーを睨んだ。

 「お前も……、俺の恋路の邪魔をするのかァ!!」

 ルシファーがそう言うと、懐から数十本の「ディアブロ」を取り出した。すると、ルシファーは首元に一斉に「ディアブロ」を突き刺した。

 「美香恵ェ……!お前は俺のもんだ!誰にも邪魔させねェ!!」

 そのときだった。ルシファーの背中から黒と白の大きな翼が生えたのだった。ルシファーは呻くと、更に首元には(えら)が生え始め、腕には鱗が生え始めた。

 「……古代人」

 冷熱がそう言うと、炎司が反芻した。

 「前に授業で習ったんだ。古代人には、今の人にはない特徴があるって。翼に鰓、それに鱗だってね。でも、文献でしかないから断定はできないってね」

 冷熱がそう言うと、続けて帯田が口を開いた。

 「これは俺の勘だが、奴らが使っている「ディアブロ」が当人の遺伝子を活性化させる薬だとしたら……?」

 ルシファーは翼を大きく開くと、四人を威嚇した。

 「炎司君、美香恵ちゃんを安全な場所へ」

 帯田がそう言うと、更に全身に帯を巻き始めた。

 「さあ!」

 帯田がそう促すと、炎司はミカエをお姫様抱っこして走りだした。炎司の背後には背の高い氷が出現した。炎司が走り出した瞬間だった。炎司のすぐ横で氷が切り落とされた。それと同時に大樹が枯れていく。炎司は訳も分からず辺りを見回した。そこには片腕を失った帯田が倒れており、それルシファーは見下していた。

 「力が……!溢れる……!!」

 ルシファーがそう言うと、大きく吠えあがった。そして、ミカエを見ると片手から巨大な光を放出させた。あまりにも巨大な光は地面を抉りながら炎司たちに襲い掛かった。そのときだった。辺り一面が闇に包まれた。

 「まさか、私の“反対(アナストロフィ)”で反対にさせた闇で、夜にさせてしまうとは恐れ入ったよ」

 炎司たちの前にいたのは、白龍院だった。

 「校長……」

 炎司がそう言うと、白龍院は背中を向けたまま話し始めた。

 「遅れて済まない。まさかこんなことになるなんて予測できなかった。既に警察には通報している。後は大人に任せなさい」

 白龍院はそう言うと、ルシファーを見つめた。

 「俺の邪魔を……、するなァ!」

 「神谷君……。君は常に全力が出せずにいたんだよな。光速で殴ればこの地球ごと破壊してしまうかもしれないからね。でも安心しなさい。この私なら全力の君に応えられる」

 白龍院がそう言うと、全身が巨大化していく。

 「“反対(アナストロフィ) (オメガ)”」

 十倍ほどに巨大化した白龍院は拳を構えた。ルシファーは拳に光を纏わせた。


 白龍院の恩寵“反対”は、発動すればあらゆるものを反対にすることができる。速いものを遅く、重たいものを軽くする。“反対 極”は、自分自身を反対にすることで最強の体を作り上げる。加減を間違えれば体が爆散してしまう技ではあるが、白龍院の技量によりなし得ることができている。

 

「大道寺君、彼女を守ってください」

 白龍院がそう言うと、炎司は口を開いた。

 「彼女は俺の命に代えてでも守りますよ」

 ミカエは酷く赤面している。白龍院は炎司の言葉を聞いて安堵した様子だった。白龍院は人差し指を立てると、ルシファーに向かって振りかぶった。

 「“神槍(グングニル)”」

 白龍院の人差し指がルシファーの拳に触れると、辺り一面に凄まじい衝撃波が襲った。


 彼はルシファーの光速を抑えるべく、“反対”で光速を鈍足にした。更に光のルシファーを捉えるべく、掴めないを“反対”にし、掴めるようにした。更にルシファーの衝撃を“反対”にし、自分の攻撃を上乗せさせた。白龍院はこの動作を刹那の如く行ったのだ。


 ルシファーはは凄まじい衝撃波と共に、彼方へと飛んで行った。白龍院は着地と同時に体を萎めた。

 「久々で手加減できなかったわい」

 白龍院のたった一度の攻撃により、「聖戦」は終結した。神谷堕は警察の捜索も虚しく、見つかることは無かった。帯田は右腕を失ったが、命に別状はなかった。彼以外に大きな怪我をした人は殆どいなかった。

ただ一つ。

変わったことと言えば。


 数日後。

 「あの薬中野郎は、結局見つからずじまいかあ」

 鳶鷹は机に頬杖をつきながら、溜め息交じりに言った。

 「強さは本物だった。あのときのホワイトキラーみたいだったよ……」

 炎司は怪我で治療した箇所の様子を見ながら言った。そのときだった。

 「だ、大道寺さん……」

 1-Bに現れたのは、美香恵だった。美香恵はもじもじしながら手に大きな箱を持っていた。

 「ん?俺?」

 ふざけた様子の鳶鷹を無視した美香恵は、炎司に弁当を渡した。

 「今日も?前にも言ったけど付き合えませんよ」

 「良いんですよ、どうせそのときはいつか来ますから!」

 そう言って美香恵は教室を出ていった。炎司は弁当箱を開けた。そこには桜でんぶで大きなハートが模られた弁当があった。

 「ひゅー!ラブラブやな」

 鳶鷹は炎司を冷やかした。

 「何故なんだ……」

 炎司は静かに蓋をした。

 「それより凄いよな、まさか敵同士で恋に落ちるなんて」

 「俺は落ちてない」

 炎司のツッコミをあしらった鳶鷹はほぼ独り言な会話を続けた。

 「自然解体された『大聖徒会』は幹部が殆ど入院で残ったのは、神門先輩だけか」

 聖戦後、改心した美香恵は、制約の見直しを行い、以前のように自由な校風に戻ったのだった。


 「ディアブロ」が再び彼らに事件を巻き込むのは、未だ先のお話である。


 「ああ……、随分こっぴどくやられたね。(あたえ)、彼を治してあげて」

 ルシファーが朧げな眼で辺りを見回すと、そこには全身が黒い服装の男の子と、若い男性がルシファーを見下ろしていた。ルシファーはそのとき、腹部に激しい痛みを覚えた。ルシファーは数時間前の出来事を思い出していた。記憶が鮮明になっていくのと同時に、ルシファーは脚の感覚がないことに気づいた。與と呼ばれる男はルシファーの体に触れると、一瞬にすてルシファーの下半身が再生した。ルシファーは起き上がると、口を開いた。

 「何者だ?」

 ルシファーがそう言うと、男の子は口角を上げ答えた。

 「別に怪しいものではないよ。我の名は“Z(ゼット)”。宜しくね」

 Zはルシファーに手を差し伸べた。ルシファーはZの取らずに自力で立ち上がった。

 「君の姿はまるで古代人のようだね。……それじゃあ、もう人前で生きることはできないよ」

 Zがそう言うと、ルシファーは自分の体を見ながら言った。

 「別に構わん。元々俺は孤独だったからな」

 「そんな君の居場所を我は知っているよ」

 Zがそう言うと、話を続けた。

 「“終わりを告げる者達”……。君のような見放された人たちが集まる場所さ。今はまだ少ない人数だけど、君もどうかな?」

 Zがそう言うと、ルシファーは考え込んだ。

 「まあ、別に今行くところないからな……。良いぜ」

 ルシファーがそう言うと、Zは再び手を差し伸べた。ルシファーがZと握手したときだった。

 「“終わりを告げる者達”に身分の上下はない。だけどね、これだけは覚えておいてくれ。……我が全ての者の頂点に立つ者だからね」

 そのとき、ルシファーはZから凄まじい殺気を感じた。後退ろうにもZの手から離れることができない。ルシファーは気絶しそうになりかけたときだった。そのときZは手を放した。

 「悪いね。……君の名は?」

 Zがそう言うと、ルシファーは冷や汗をかきながら答えた。

 「ルシファーだ」

 「うーん……。でも今の君は堕天使(ルシファー)じゃなくて魔王(サタン)だよ。今日から君はサタンだね」

 Zがそう言うった。ルシファーは何も言うことができなかった。

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