15 聖戦 中編
このストーリーはフィクションです。登場する人物や団体と関係はありません。又、一部性的な描写がございますのでご注意ください。そして、この作品は日本の歴史や神話を基にした構成があり、一部の方々に怒られそうな内容が記載される場合がございますので、先に謝ります。申し訳ありません。
四層目では、一人の大きな男が立っていた。刈り上げた髪型に黒いマスク。言葉を発さずとも彼から滲み出るオーラは、凄まじかった。
「いたぞ。こいつが実力ナンバースリーの四力静だ!」
「我の名は、メタトロン。第七天使の一人なり。この先にはなんとしても行かせん」
メタトロンがそう言うと、茂は構えた。
「ここは私がやるわ」
名乗り出たのは、夢だった。残りのメンバーは草木茂、筒井炎煙、切田鋭利だけだった。
「大丈夫なのか?」
茂がそう言うと、夢は何も言わずに頷いた。
「……任せたぞ」
茂はそう言うと、奥へと進んで行った。
「さあ、やりましょう」
夢がそう言うと、懐から拳銃を二丁取り出した。すると、メタトロンは服を脱ぎ、上裸になった。すると、体中に大きな目があった。
(既存の情報だと眼の下の眼だけメタトロンの持つ恩寵“目”の眼……!やっぱり、ドーピングしてる!一目見たときから脈も呼吸もだいぶ荒かったし、ドーピングした人の様子は過去の映像で把握済み。実力ナンバースリーがドーピングしてたら、そこら辺の生徒では対応できない……。私も本気出さないといけないみたいね)
夢は一度目を閉じた。
「何をしているのだ?」
夢に返答はない。不服そうなメタトロンは、いくつもの眼球からレーザー光線を放つ。夢は目をゆっくりと見開くと、猫のようにしなやかに動き、レーザーを躱していく。そして夢は、壁に向かって拳銃を撃つ。弾丸は跳弾し、体にある一つの眼球に当たった。
夢の恩寵“ハイスペック”は、IQが一万五千を超えている。シンプルだが、頭脳においては右に出るものはいない。
そして今、夢は恩寵をフル活用して“趨勢先見”という状態になっている。この状態は五感+第六感が覚醒しており、殆どが脊髄反射のみで行動でき、脳に割く労力を低減させることができる。つまり、脳では十五手先以上のことを常に予測し、行動を取ることができる。そのため、脳の消費が異常で三分程度しか行動できない。
(私の戦闘スタイルは、短期決戦。私の二丁の回転拳銃は、二つ合わせて十二発。マガジンは嵩張るし、再装填は相手に隙を与えてしまうし、一高校生として持っていたら怪しまれるから持たない……。残り十一発で奴を沈める)
夢は十発の弾丸を発砲した。夢の弾丸にも特徴があり、普通の弾丸に比べ、殺傷能力がない。体育祭の際に使用した特殊なゴム弾や重弾の他にも様々な特殊な弾丸を所持している。その一つとして、発条弾がある。発条弾は飛び跳ねる度に勢いが増す特殊弾であり、普通の跳弾の改良版にあたる。政府の秘密研究組織『アンチラック』が開発した夢だけの弾丸である。というのも、軌道計算に普通の人間は撃つのが不可能である。夢の恩寵だからこそ撃てる弾丸である。
(曲射も加えて……)
十発の弾丸は不規則に飛び跳ねる。弾丸はメタトロンを掠りながら、眼球に掠ると、眼は閉じた。眼球の残りは十個ほどである。発条弾は壁に当たると、勢いを増して跳ね返る。発条弾は残りの眼を全て撃ち切った。夢は弾丸を一つ残し、メタトロンを完封した。眼球を失ったメタトロンの上に夢は馬乗りになるとメタトロンの額に拳銃を突き付けた。
「これで大手よ……」
夢の目は充血してきていた。夢は目頭を押さえる。
「私が負けたとも言うのですか?過信している貴方に良い情報を与えましょう」
すると、夢の背後で無数の気配を感じ、夢が振り返ったときには無数の眼が光線を放っていた。夢は辛うじて避けるが。最後の弾丸が入った拳銃を手放してしまった。
「ドーピングで私があの数しか出せないとも?」
無数の眼が、夢を覗いている。
(クソッ!せめて手放した拳銃だけでも手にあれば……!)
そのとき、辺り一面に濃い煙が辺りを覆った。二人は辺りを見渡した。
「憾咲さん!」
そこにいたのは、A組の筒井炎煙だった。
「筒井さん!?どうしてここに?」
夢がそう言うと、筒井は夢の手を取った。
「とにかく今は逃げて!」
そのとき、筒井の肩にレーザーが貫通した。筒井は一瞬顔を歪めたが、直ぐに顔を上げ夢の手を引き続けた。煙は更に濃くなり、メタトロンは二人を見失った。二人は木の陰に身を潜めると、小さな声で話した。
「どうしてここに!?貴方には危険すぎるわ」
夢はそう言いながら、筒井の肩を止血した。
「いや……、正直アイツとの相性は私が一番良いはずなの。でも、あのとき、夢ちゃんが名乗り出たから押されちゃったけど、本来は私がいるべきよ。……それに筒井さんなんて随分距離があるね?」
筒井がそう言うと微笑んだ。口元にはガスマスクがあり、本当に笑顔であるか分からないが、夢はその顔に見覚えがあった。
「待って……。もしかして伊藤さんなの?」
夢がそう言うと筒井は頷いた。
夢が小学生のときだった。夢の性格上、友だちが少なかったというか独りだったのだが、唯一友だちと呼べる友だちがいた。それが当時の伊藤炎煙だった。彼女も夢と同じように独りだった。彼女は今と違い、ふくよかな体系であった。
「嘘でしょ?全然違くて気付かなかったわ。その……、体型も顔も……」
夢がそう言うと、筒井は微笑んだ。
「そうだね。あの後、痩せたし、メイクも地雷系に目覚めたからね」
筒井はガスマスクを外すと、満面の笑みで微笑んだ。夢はその笑顔が当時と変わらないことに何故だが安堵した。
「それより、この後どうしよう……」
筒井がそう言うと、夢は筒井の肩に手を置き、口を開いた。
「もう大丈夫、後は私に任せて」
夢がそう言うと、筒井は口を開いた。
「昔と変わらないね。夢ちゃんは私にとって英雄だよ」
夢は理由が分からず、首を傾げた。筒井は首を横に振ってそれ以降ガスマスクをしてしまった。
夢は姿勢を低くして、一気に落ちている拳銃に駆け寄った。滑り込みながら拳銃を取ると、天に向けて弾丸を発砲した。
(最後に込めた弾丸は“趨勢先見”で最悪を予測したときの弾丸……!この弾丸は発砲後に、弾丸に衝撃を与えることで効果を発揮する。『アンチラック』内では最強に値する弾丸!その弾丸は『アンチラック』謹製 恩寵模倣弾 “ウラナイ”!)
発砲された弾丸は天井に刺さると、夢は拳銃を弾丸に向けて投げた。拳銃の握り(グリップ)の底に弾丸が当たると、弾丸が小爆発した。すると、弾丸から龍のような衝撃波がメタトロンを襲った。あまりの衝撃にメタトロンは壁を破り、外へと放出された。夢はその光景を見て安堵すると、筒井の元へと走っていった。
五層目に入るときには、A組の切田鋭利と、茂しか残っていなかった。目の前には、女子用制服を着た男が木と一体となっていた。
「奴が五角樹か……」
茂は言った。
「違うよ……。僕は第七天使、アリエル。君たちが来るのを待っていたよ」
アリエルは脳内に直接語り掛けるように言った。というのも、二人のいる場所で反響するようにアリエルの声が聞こえるのだ。
「良く来ましたね、迷える羊さんたち……。僕が導いてあげましょう」
アリエルの足元から大きな根が襲い掛かる。それを止めたのは、切田だった。
「こいつは俺が喰い止める!良い女だから喰ってもやるぜ!!」
「切田、それは止めとけ。可愛いが奴は男だ」
茂は切田を制止しながら言った。
「これで僕を止めたつもり?君たちに報告しておくよ。今止めたのは、この木の根っこの毛根にすぎないんだよ。つまりはもっと強大な攻撃が君たちを襲うよ!」
無数の毛根が二人に襲い掛かる。切田は腕から発現させた日本刀のような刃で切っていく。
切田鋭利の恩寵“刃”は、体から刃物を発現することができる。刃物の種類は鎌のように湾曲した刃から、鋸のように刃が尖っているものまで種類が豊富である。
「まだまだいけるよなあ!?草木ィ!」
切田は興奮気味に叫んだ。彼は昔からそうだった。戦闘に異常に執着する性格であった。切田は回転しながら切り進むと、アリエルの元へ近づいていく。切田の刃がアリエルの首筋に触れかける瞬間。切田の足元から丸太のように太い枝が飛び出してきた。反応できずに切田は吹き飛んだ。その瞬間、切田の四肢に毛根が巻き付いた。
「切田!」
「俺のことは気にすんな!あの野郎!次は首を搔っ切ってやる!切り刻んで豚の餌にしてやる!!!」
切田は舌を垂らし、憎たらしい顔をしていた。茂は腕から数本の蔓を伸ばした。その半数は錯乱用に四方八方に伸ばした。アリエルは少し混乱しながらも、対処していく。そのとき、アリエルの体に蔓が巻き付いた。
「くっ!どこから?」
「俺の蔓は、別に腕からだけ伸びないぞ」
そう言って、茂はアリエルの背中を指さした。そこには数本の蔓が伸びていた。アリエルは大きな枝を茂の左右から物凄い勢いで伸ばした。茂は体中に蔓を巻き付けて防御したが、瞬く間に茂は潰されてしまう。
「これが僕の本気さ!参ったか!!」
「アンタに少しばかり忠告だ。アンタはこの大樹を動かすために、神経をそっちに意識しなければならなそうだったな。そのせいで行動に少し遅れが生じてしまう。だが、アンタは上手いよ。俺と一緒だ。自分の周りに目に見えないほど細い根毛で纏って、それが触れた瞬間に根や枝が飛び出すのがギミックだな。だが、俺ばかり見てちゃ甘いぞ。拘束できたと思ったか?アイツは俺同様、腕だけに刃が生えてくるわけじゃないぞ?」
アリエルは拘束していた方向を見た。そこに切田の姿はなかった。振り向こうとしたとき、首元に冷たい感触が伝わった。
「本来なら殺してるが、今日のところは勘弁してやる」
切田がそう言うと、腕の刃を収めた。それとほぼ同時に、白龍院がやって来た。
「校長……?どうしてこんなところに?」
茂がそう言うと、白龍院は少し焦りながら話しかけた。
「やあ、詳しい話は後だ。少し嫌な予感がするんだ。それに血生臭くないかい?これ以上は生徒の出る幕ではない。早く皆の所に行きなさい」
白龍院がそう言うと、白龍院は少し速い歩みでその場を去ろうとした。そのときだった。




