初めての再開
「少しの間、意識を失うが、平気か?」
「はいはい、問題なしだよ。」
私は、にーにを下ろして冬華さんに身を委ねた。
なんだか、デジャブのような感慨を覚えていた。
最初冬華さんに連行されたときと同じだったからだ。たぶん。
それから、いつの間にか私は、"私"を手放していた。
目的地までまだ時間はあるが、早めに取り掛かっておきたい。
私含め3人を守れるような戦闘力に自身はない。この状態が長く続くと心許ないからな。
作業を始めるために、
「蒴果玩具壱型」
そう言い捨て作業用の台を用意し、荷袋からアリエボを取り出そうと手を伸ばす_
_悪寒がした。
あのときから何度も智覚したことのある、何度も戦慄したことのある、何度も憤怒してきたその悪寒。
視覚という五感を使わずともはっきりと魔敵の姿を身体で捉えた。
「蒴果玩具...参型。」
これを真上に投げ上げる。これは撃退用などといった優れたものではない。ただのデコイだ。
慣性力と投げ上げ速度で落下地点はある程度予測がつく。このまま追ってくることはないと信じたい。
戰く思いにふけっていたが、それは杞憂に終わったらしい。
_悪寒が、消えた。...なぜ?
それを理解するには十数秒を要した。
なぜなら、そこには、才人が立っていたからである。
さらに言えば、その才人は私の知っているはずの才人とは雰囲気が全くと言っていいほど違っていた。
また別の視点で見れば、櫻良を寝かせる前、確かに拘束は解いていた。その部分だけならば納得できる。だが、そもそも目が覚めていること自体、異常だ。櫻良のデバフ効力は大、そもそも耐えられる事自体おかしな話だ。そして、呪印の効果により正気を保ち続ける、即ち意識がある状態を維持することは、生命力そのものを削ることであり、全てが噛み合わない。
こうして理解するための思考を巡らせていたが、その様子に、その才人らしきものが痺れを切らしたのか、口を開き発言する。
「ほんとに趣味は戦闘用じゃねぇみたいだな。」
「君には現状が理解できているのか?才人。」
「完全に理解しているのは才人じゃねぇ。俺だけだ。」
「...確かに、お前は才人じゃないということはなんとなくだがわかる。ただ、わからないことだらけなのだが_」
「はぁー説明なんかめんどくせぇからイチイチしてやんねぇ。お前が心配してる才人本人のことなら心配いらねぇとだけ言っといてやる。あとよぉ...」
声色が、変わった。思わず固唾を呑む。そのくらいの圧を感じた。
「_妹だけは何が何でも危ない目に遭わせんな。いいな?」
「...もちろんそのつもりだ。」
「口はしっかりしてんだけどなぁ。さっきの魔敵、デコイに引っかかってなかったぞ。等級が高かったからなぁ。そうじゃなかったら俺も出てこずに済んだってのに。
まあこれからも妹と俺が危なくなったら渋々出てきてやるよ。よろしくな、非戦闘員。」
才人がまた、動かなくなった。




