その③
「そもそも異界への扉を渡るのには、私共のいる管理局を通過しなければ渡る事は不可能なはずなんですよ。
ですが、あなたはやってのけてしまった。
それについて調べて結論も出たんですが、あなたはいつの間にか元の世界に戻り普通の生活を送っていた訳で、この話しは今まで保留となってたんです。」
突然話しをし始める彼を見ながら涙をタオルで拭いていた。
「あぁ。すみませんねぇ。こんな道端で・・・・
あちらの空き地にあるマンホールの上で少しお話ししましょうか。」
こくりと頷きわたしは彼の指差す方へと歩いて行き、腰を下ろした。
「さっきの続きですが・・・・・・
普通の生活を送っていてくれれば、私はこうやってあなたの元に顔を出す事も無かったんですよ。」
・・・・・普通に暮らしていれば?・・・・・・
「シルビスの事?」
わたしの言葉にこくりと頷くランハード。
「彼等の姿は一見、人に見えますが魔力の巨大さからして人では無い物と呼ばれています。氷の世界と言う険しい環境がそうさせたのかは分かりませんが・・・・。
兎に角、どんな目的かは分かりませんが、私達の管理局を通らず、彼等はあなたに接近した。それこそがあってはならない事なのです。」
「あってはならない事。あっちゃいけない事。それは本当に恐ろしい事~!!!!」
コートの中から突然白いインコの様な鳥が顔を出し喋りながらランハードの肩の上へと止まった。
「え゛っ?あっ・・・・・ん????」
突然の事に驚きあたふたしながら鳥を見た。
「彼は二コルって言いまして私のパートナーなんです。」
・・・・・パートナー?・・・・・
「よろしく。よろしくね?」
二コルは首をクネクネさせながらわたしにお辞儀をした様に見えた。
「こちらこそ・・・・よろしく・・・・?」
わけがわからないが取りあえずわたしもお辞儀をした。
「あなたはシルビス達をどうするつもりなの?」
話しを元に戻し彼に聞く。
すると彼はニッコリと笑みを浮かべて・・・・。
「もちろん。元の世界に戻ってもらいますよ。魔力のある者に余所の世界で色々とやられたら、何がどう反応して闇が目覚めるか分かりませんからね・・・・・。」
「・・・・・闇?・・・・・・」
突然口を紡ぐランハード。
「あまり話してしまうとカミルさんに怒られてしまいますね。
あっ・・・・カミルさんと言うのはですね。局長です。彼はあっち行ったりこっち行ったりするから今は友であるこの私が局長代理を務めているのです。他にも側近の方や仲間達もいたんですが、皆さん局長代理と言う席が妙に恐いらしくて、押しつけられてしまった訳で。」
「後でボコボコだボコボコ。」
二コルは彼の肩の上で顔をキョロキョロ動かしながらそう言った。
「そんな事はありませんよ。カミルさんは優しいですよ。歳の割に行動が幼い所はありますが・・・・・。」
わたしは話しがそれて行く様子を呆れた感じで見ていた。
「あなたは知っているのよね?わたしが夢だと信じていた向こうの世界に何故行ったのか。」
話しを元に戻され、コホン!と彼は咳払いをした。
「はい。それは夢渡りと言う現象ですよ。まれにいるんです。強い心の持ち主が夢の中を通って別世界へ入ってしまう事が・・・・。
一般的には小さい子供に多いらしいです。
流石に私達管理局も夢を渡って、何処へ飛んだのかを追うのだけで一苦労。」
・・・・・だから夢渡り・・・・かぁ・・・・・
「しかし何故あなたは、この世界に一人で戻って来れたんですか?
何か思い出せますか?」
聞かれるが、思い出せる事はあまり無かった。ただ・・・・・。
「さっき・・・・・シルビス達が教えてくれた。
わたしが、命の力って言う物に願ったから、こっちに帰って来れたんだって。でもその力を使ったせいで、シルビスのお兄さんが死んでしまったみたい・・・・。だから・・・・わたしは・・・・・。」
再び目から涙が零れ出した。
ランハードはわたしの頭をそっと撫でた。
「彼も寿命が近かったのでしょう。ですから最後にその力であなたを送り返したのだと思います。」
「だとしても・・・・わたしは結果的に人の死を早めさせた事には変わらない。
シルビス達がわたしを敵だと言って殺そうとしても、わたしは受け入れるしか無いのかも知れない。」
・・・・・わたしは死んだ方が良いのかも知れない。そしたらもう寂しくなる事だって無くなる・・・・・




