第6話 なし崩し的に噂の廃墟街へ怪異調査に向かうことになりました。
「ユウキ~、それになんて書いてあるんだよ~。教えろよ~!」
「……(シロも“気になる!”という様子で紙を覗き込む)。」
「レグナードに出没する『幽霊』の調査と討伐だって。」
「レグナード~?どこだそれ?シロ姉ちゃん知ってる?」
「……(シロは首を横に振る)。」
「二人も知らないのか…そうだ。あそこにいる人たちに聞いてみよう。」
俺たちはギルドの入り口前でたむろしている3人組へと近づいた。
「(お、おい…!こっちに来るぞ!)」
「(ど、どうすりゃ良いんだ、お前が何か喋ろよ!)」
「(勘弁してくれ!まだ死にたくない!)」
「あの…すいません。」
「「「は、はい!!!」」」
「『レグナード』という場所を知りませんか?」
「レグナード…だと!」
「あんたまさかあそこに行くのか?」
「はい。まぁ何と言うか、任務で行くことになりました。」
「…レグナードはここから東に30分ほど歩いた場所にある。昔の戦争で滅んだ街の廃墟で、今は灰燼街と呼ばれている。聞いた噂では……そこには夜な夜な『幽霊』と呼ばれる恐ろしい存在が出没して、近づく者を呪い殺すらしい。」
『……!』
その言葉を聞いた瞬間、俺の背後でシロとノアが小さく息を飲んだのが分かった。
「戦争で滅んだ街……。僕たちみたいに理不尽に命を奪われた仲間たちがいるんだ……」
ノアの瞳に、切なさと複雑な感情が宿る。シロもまた、どこか憂いを帯びた表情で俺の服の裾をぎゅっと掴んだ。
「わかりました。ありがとうございます。」
「お、おう。もし行くんだったら気をつけた方が良いぞ。」
俺は3人組にお礼を言ってその場を離れた。
「(意外と普通だったな。)」
「(普段優しいヤツほどキレたら恐いって言うだろ。)」
「(まぁ、もし無事に帰ってきたら話を聞いてみようぜ。)」
3人組から離れると間もなくしてノアが子供らしい質問をしてきた。
「なぁユウキ、カイジンガイって変なヤツが出てくる街ってことか?」
「……(シロが首をかしげる)。」
「いや、カイジンは怪人じゃなくて灰のことだね。焼けた後に、辛うじて残ったカスのことさ。」
「……(シロは悲しそうに俯く。)」
「ふ~ん…そっか。なぁそこにいる幽霊ってさ、僕たちの仲間かな?」
「だといいけど…。」
少なくとも、俺は手を取り合う幽霊を聞いたことはない。
「……!……(シロはノアの肩をツンツンと叩く)」
「ん?シロ姉ちゃんどうしたの?」
「………(シロはノアにヒソヒソと耳打ちをする)」
「うんうん…。うん。聞いてみるね。」
「二人ともどうしたの?ていうかシロちゃんは喋れるんだね。」
「シロ姉ちゃんは、僕に相談があるときはいつもこうするの。」
「あぁ、そうなの。」
どうやら二人だけのルーティンがあるらしい。
「なぁユウキ。シロ姉ちゃんがね、“それが終わればお金がもらえるの?”だって。」
「そうだ、ええと……報酬については…」
———報酬金額
1,000,000ルーン
「100万ルーン!」
「マジかよすげ~~~!!!一生遊んで暮らせんじゃん!!!」
「……(シロは喜ぶノアの頭を笑顔で撫でる)。」
こっちの世界に来たばかりで、正直100万ルーンの価値はわからないけど、日本だと結構な金額だ。一仕事100万円、そう考えると気が重い。
隣りには17歳の女の子と12歳の男の子。“100万”という金額を聞いてそれぞれ反応が違う。俺も子供の頃は100万円っていう金額があれば「何でもできる」と思っていた。でも少し成長すると100万円は「ものすごく助かるけど、遅かれ早かれなくなってしまう」金額だと知った。そして100万円の本当の重みを知ったのは社会人になってから。
異世界に来たばかりの俺、そしてまだ子供の女の子と男の子。どのみち、この世界での100万ルーンという金額の価値を正確に知ることはできなかった。
最初はもっと簡単なのが良かったけど、今ギルドに戻るのも気まずいし、二人にもご飯を食べさせてあげたい気持ちが先行して、このままやってみることにした。
「とにかく頑張って任務をやってみよう。達成すればきっとご飯もお菓子もいっぱい食べられるよ!」
「お~~!!!」
「……(シロは右腕を大きく上げた)!!!」
――こうして俺たちは一路『レグナード』を目指して出発した。
「二人が育った街とは別の場所なんだよね。やっぱり……気になるかい?」
「……まぁ、ね。僕たちの街と同じように、酷い戦争でたくさんの人が死んだ街だし。あそこにいる『幽霊』たちも……きっと、生きている人間を恨んでるんじゃないかな。」
ノアは悲しそうに遠くを見つめた。
「それは僕も同じ。僕たちの街、アルヴェインに乗り込んできた奴らは皆殺しにしてやりたいって今でも思ってる。でも、ユウキがいるから……その気持ちが少し和らいでる。」
「……(小さく頷き、ノアの手を包み込むシロ)。」
「ありがとう……。理不尽に命を奪われたら、そりゃあ怒りたくもなるよね。」
俺は二人の手を、両手でしっかりと包み込んだ。二人の手の冷たさが俺にも伝わってくる。
「討伐なんて物騒な言葉がついてるけど……どうすれば良いか見当がつかないな。」
「説得すれば仲間になってくれるんじゃないか?」
「う~~ん。シロとノアのように話が通じる相手だと良いけど。」
「……(シロは不安そうな表情を浮かべた)。」
やがて、薄暗い霧に包まれた鬱蒼とする森を抜け――。不気味な静寂と、焼き尽くされた建物が無残に残る灰色の街、『灰燼街』の入口へと到着した。
「ここが……灰燼街……」
立ち込める冷気と、漂う不穏な気配。しかし俺は、怖がるシロとノアの手をしっかりと握り締め、一歩を踏み出した。
第6話を読んでいただきありがとうございます!
どうやら「戦争の犠牲となった怪異たち」はシロとノアだけではないようです。灰燼街と呼ばれるレグナードにはどんな幽霊が待ち受けているのでしょうか。
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明日も21:00に更新します!




