第4話 ギルドで絡まれましたが、勝手に血を吐いて倒れたので『無詠唱の即死魔法使い』と勘違いされました
翌朝。すっきりと晴れ渡った空のもと、俺は隣り街「ベルグラン」まで足を運んでいた。
早速、中央にそびえる冒険者ギルドへと向かう。シロとノアに美味しい肉とお菓子をご馳走するための資金稼ぎが目的だ。ゆくゆくはノアの家も修復してあげたい。
「さて、どんな雑用依頼があるかな……」
ちなみに、二人は「ユウキから離れたくない」と言い張り、俺の後ろをピタリとついてきている。
「ユウキ、今日も温かいご飯を食べられるのか?」
「…(小さくガッツポーズをしてうなずく)」
「う~ん、それは依頼の出来次第になるなぁ…。」
「え~~頑張れよ~。」
「わかったわかった。」
冒険者ギルドに入ろうとしたとき、入口の扉の前でたむろしている連中の会話が耳に入って来た。
「なぁ、聞いたか?灰燼街で幽霊ってのが出るらしいぞ。」
「幽霊…?なんだそりゃ?」
「実体が視えない強い怨念らしい。誰彼構わず呪い殺すんだってさ。」
「はぁ…?なんだそりゃ。ていうか視えないって…じゃあなんで、最初のやつには視えたんだ?」
「さぁ…そこまでは俺も知らねぇよ。」
その会話がシロたちにも聞こえたのか、シロは俺の服の裾をぎゅっと掴んだまま俯いている。ノアは冒険者を見つめたまま沈黙していた。
俺は空気を変えようと二人に話しかける。
「まずは中に入って、依頼内容を確認してみようか!」
「そうだな…。」
「…(小さくうなずく)」
しっかりと稼いで美味いものを食わせてあげないとね。そんなことを考えながらギルドの扉をくぐった。
「なぁ…今のヤツ、誰に話しかけてたんだ?」
「誰もいないところに話しかけていたぞ。」
「世の中おかしい奴もいる。あんなのには近づかない方が良い。」
建物の中は、ギルド、というよりは酒場と言った方がしっくりくる。むさくるしい男と果てしない自信を持ってそういな女が酒を酌み交わしている。行く当てはギルドしかないようだ。
「ユウキ。なんだこれ。」
「…(怪訝な表情を浮かべている)」
「二人の教育に悪いものだよ。用が済んだらすぐに出よう。」
周囲を確認してもシステムがよくわからなかったが、傍にいた受付嬢は丁寧だった。
「いらっしゃいませ。始めてのご利用ですか?」
「はい。そうです…」
「――おいおいおい! 見ねえ顔だと思ったら、ひ弱そうなガキが迷い込んできやがったなァ!」
ガシャーン!と荒々しい音を立てて、大柄な男が俺の前に立ちふさがった。身の丈二メートルはあろうかという巨漢。背中には巨大な大剣を背負い、酒臭い息を吐き捨てている。
「あ、あのっ!ガ、ガデンさん!どうか落ち着いてください…!」
この男はガデンと言うらしい。止めようとする受付嬢の勇気を見習いたい。
「おいコラ、新入り。この俺様に挨拶もなしか? ギルドの『通行料』として、持ってる金を全部置いていきな!」
「落ち着いてください…。ガデンさん、当ギルドにそんなルールはございません――」
「てめえはすっこんでろ!―――おいガキ…!痛ぇ目見なきゃ分からねえようだなァッ!」
ガデンが笑みを浮かべ、脅しのために俺の胸ぐらを掴もうと、太い腕を伸ばしてきた――。
「さっきからギャーギャーうるさいんだよ。」
ガデンを包み込む空気が一瞬で凍りつく。
「ガっ……!? ぶふっ――!?」
ガデンの動きが、ピタリと止まった。胸ぐらを掴む寸前で静止した腕が、ガタガタと生まれたての子鹿のように震え出す。何が起こったのか見当がつかない。
「ひ……ひぃ……ッ!? こ、骨が…から…が……うご…い…ッ!?」
ガデンの顔面から血の気が引き、土気色へと変わっていく。鼻、口から血を吹き出しながら、彼は信じられないものを見る目で俺を凝視した。
「あ、あの、大丈夫…ですか……?」
俺は急に青ざめて血を吐き出したガデンを心配して一歩踏み出した。
「く… 来るな… 許して…」
ドサッと重たく響く音を残し、ガデンは泡を吹いて倒れ、そのまま白目を剥いて気絶してしまった。
「「「キャーーーッ………………」」」
悲鳴をあげる受付嬢、騒然とするギルド。
大騒ぎしていた周りの冒険者たちが、ガタガタと震えながら俺から距離を取っていく。すっかり酔いがさめ、恐怖で引きつっていた。
「な、なんだ今の……!? ガデンの奴、あいつが手をかざすどころか、一歩近寄っただけで血吐いて倒れたぞ……!?」
「詠唱なし……魔方陣もなし……! まさか、思考しただけで対象を即死させる《無詠唱の即死魔法》かよ……!?」
「ひぃぃっ! あの男、とんでもねえ化け物だ!! 目を合わせるな! 殺されるぞ!!」
「これは…まさか…」
俺は恐る恐る後ろを振り向いた。
「ユウキ、わかったか?普通はこうなるの。お前がおかしいの。」
「…(小さくうなずく)。」
シロとノアがやりました。シロの瞳は、俺ですら凝視できない程に呪怨の冷気を帯びて輝いていた。でも2人は他人には視えない思念体…。周囲の目は、当然俺に向けられる。
「そんなことより…まずいよ…!このままだと依頼がもらえない…!ご飯が食べられないぞ!」
「おいユウキ!何してんだ!早くソイツを助けろよ!」
「…(大きくうなずく!)」
「無茶言うなよ!2人がやったんだろ!どうすれば助かるんだよ!」
シロとノアが急に手のひらを返してきた。俺にもどうすればよいかわからず、右往左往していると、
「おい…!!なんの騒ぎだ…!!」
図太い声が周囲のざわつきを断ち切った。
第4話を読んでいただきありがとうございます!
ユウキに効かないだけで、シロとノアの力は普通に強いのでご安心ください。
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明日も21:00に更新します!




