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第22話 【勝利……?】怪物化したクズ王子をボコボコに撃破して王女様を救出しました……けど、なんだか嫌な予感が拭えません!

『シャアアアアッ!!』


 神々しき大蛇の姿を取り戻したラシュガルが、王宮の天井を揺るがす壮絶な咆哮を上げた。


 黄金の神聖なオーラを全身に漲らせ、その分厚い巨大な尻尾をまるで丸太のようにしならせる。空気を激しく圧縮し、化け物へと変貌したレオパルド王子の巨体目がけて力任せに叩きつけた!


———ドガァァァァンッ!!


「グアァッ!?」


 大理石の床が派手に砕け散り、レオパルドの巨体が横殴りに吹き飛ばされて王宮の太い石柱へと激突する。バリバリと音を立てて柱に亀裂が入り、大量の土煙が舞い散った。


「す、すごい……! これが蛇神様の力……!」


 柱の陰から見守っていたエリオが、開いた口が塞がらない様子で戦慄している。


『フン、鈍重な巨体など我が敵ではない! ノア、シロ、一気に決めよ!』


 ラシュガルの号令と同時に、シロとノアは既に動き出していた。


『任せてよ、ラシュガル!』


「(……これで……終わりにする……っ!)」


 巨体ゆえに体制を崩し、立ち上がろうとするレオパルドに対し、二つの影が左右から超スピードで交錯する。


 ノアが右側から鋭く踏み込み、自らの怨念を極限まで収束させた死の刃を、レオパルドの巨腕の関節へと突き立てる!


『グ、オオッ……腕が……っ!?』


 シュンッ! と鋭利な切り口は、頑固な骨を音もなく真っ二つにする。切断されたレオパルドの右腕は悲しく地面に落ち、ゴトリと不気味な音が響がせた。動きが封じられたところへ間髪入れず、シロが左側から天井を蹴って垂直に滑空する。


 シロの爪には、今までにないほど濃厚な漆黒の呪怨が宿っていた。大切な人を傷つけ、大勢の犠牲者を踏みにじった悪意に対する、静かなる怒りの結晶だ。


「(……みんなの苦しみを……返しなさい……ッ!)」


 ドスッ!!


 呪気の爪が、レオパルドの胸の中央――禍々しい邪気の核へと深く突き刺さった。


『ガ……ハッ……!? な、なぜだ……この私が……たかが死損ないの……野良犬どもに……ッ!?』


 レオパルドの巨大な肉体が激しく打ち震え、胸の傷口から黒い光と大量の死のオーラが噴出していく。化け物の姿を維持できなくなった肉体が、メリメリと嫌な音を立てて急速に収縮し、やがて元の生身の姿へと戻っていく。


 ドサリ。


 床に崩れ落ちたレオパルドは、目を白黒させながら完全にピクリとも動かなくなった。


「やった……! 勝ったんだ……!」


 ノアが剣を収め、安堵の息を吐き出す。ラシュガルも身体を縮め、再びユウキの左腕へと巻き付く小さな腕輪の姿へと戻っていった。


『ふむ……力任せの化け物など、恐怖に足る敵ではなかったな。』


「ラシュガルがそれ言うの?」


 水をさしたノアに「シャアァァァァッ!!!」と大蛇が威嚇する。


 しかし――勝利の余韻に浸る間もなく、ノアは眉をひそめた。


「……おかしい。レオパルド王子を倒したのに……街や城を覆っていたあの重苦しい『死の邪気』が、ちっとも消えてない……?」


「(……うん。ノアの言う通り……むしろ、さっきより邪気が強くなってる……)」


 シロが警戒露わに視線を走らせる。その視線の先は、踊り場の奥にある豪奢な大扉――王が座る「玉座の間」へと続く道だった。


『……こっちの方向だね。邪気の一番濃い場所が、玉座の向こうの部屋から漂ってくるよ。』


「行ってみよう!」


 俺たちは警戒を緩めぬまま大扉を押し開き、玉座の間を通り抜けた。そのさらに奥、隠し通路の先にある小さな部屋へと足を踏み入れ、息を飲んだ。


 そこは、壁一面に怪しげな黒いロウソクがいくつも灯され、床には見たこともない禍々しい魔法陣が描かれ、怪しい魔導書や実験器具が散乱する「儀式室」だった。


そして、その部屋の中心――。


「あ……ああ……ッ! エレノア様……ッ!!」


 エリオが悲痛な叫びを上げながら駆け寄った。


 部屋の中心にある石造りの台座の上に、一人の女性がうつ伏せで横たわっていた。長い栗色の髪、豪華な紺色のドレス。アマリア王国の寝室で幽霊となって訴えかけていた、あのエレノア王女本人だった。


「エレノア様!エリオでございます!王女殿下!目を覚まし…ッ!」


 エリオが途中で何かに気付き、言葉を失う。


「ユウキ殿!これを見てください!」


 エリオの指摘で側に向かうと全員が驚愕した。


 エレノア王女のドレスの背中部分は無惨に破かれ、その透き通るような白い肌には、赤黒い不気味な『刻印』が深く刻み込まれていた。血管のように浮き出る黒い筋が、彼女の全身へとジワジワと浸食している。


「な……なんという酷いことを……ッ! 儀式の……器として、エレノア様を贄にしていたというのか……!」


 エリオは激しい怒りに震えながらも、弱り切った王女をしっかりと抱きかかえた。


「ユウキ殿! シロ殿! ノア殿! 王女様はまだ息があります!手が遅れる前に、今のうちにアマリア王国へ帰りましょう! ここに長居は無用です!」


 エリオは焦るようにエレノア王女を背負い、退却を促した。


「ええ……そうですね。一刻も早く治療しないと……」


 ノアとシロが頷き、歩き出す。


 しかし――俺にはどうしても引っかかることがあった。その場に立ち尽くしたまま考えを巡らせる。


「(ユウキさん……? どうしたの……?)」


 シロが心配そうに袖を引っ張る。


「……ううん。なんでもないよ」


 俺は無理に微笑んで見せたが、浮かない表情を隠しきれないままだった。


(……何かが……おかしい……)


 レオパルド王子は確かに強大な化け物へと変貌した。だが、あの男がこの複雑で緻密な

『術式』を『一人で』組み上げたのだろうか?


 ギルドの受付嬢を操り、街の女性たちを生贄にし、王女の背中に刻印を刻む……。そして何より、レオパルドを倒したというのに、この部屋に満ちる邪気は弱まるどころか、まるで『儀式が完了した』かのように脈動しているのだ。


「……本当に、これで終わりなのかな……」


 不安と違和感を胸に抱いたまま、俺たちは傷ついたエレノア王女を連れ、静まり返るヴェルガルド王宮を後にするのだった。

第22話を読んでいただきありがとうございます!


ついに決着です!ラシュガルの強力な尻尾による打撃攻撃から、ノアの関節封じ、そしてシロの漆黒の呪怨による一撃必殺のコンボで、怪物化したレオパルド王子を見事に撃破しました。


ところがレオパルドを倒し、エレノア王女を救出したにもかかわらず死のオーラが消えません。隣では「何かがおかしい」と感づくユウキ。


「ラシュガルも力任せの攻撃なんだね!」「もしかしてまだ続くの…?」と思ってくださった方は、ぜひブックマーク登録と下部の**評価(★★★★★)**をよろしくお願いいたします!


明日も21:00に更新します!


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