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第21話 【ブチギレ】王女様を騙して生贄にしたクズ王子をボコろうとしたら化物に変貌しました……が、蛇神様が参戦してくれたのでこれからボコボコにしてやります!

「汚い野良犬どもめ……我が帝国の聖域を穢した罪、万死に値するぞ!その惨めな命で支払うがいい!」


 レオパルド王子が底意地の悪い蔑みの笑みを浮かべ、背中に携えた豪奢な大剣を怒りに任せて抜き放った。刃が鞘を滑る甲高い金属音と同時に、禍々しい紫黒色の衝撃波が放たれる。大理石の床をバリバリと削り取りながら一直線に狙うは、陣形の中心に立つ…俺!?



――あ、これダメなやつだ。



ドガァァンッ!!


 激しい破壊音と衝撃波の余波が、広々とした踊り場全体に激しく響き渡る。一瞬で白煙が立ち込め、砕け散った石片が周囲に飛び散った。だが———衝撃波がユウキの肌に触れることはなかった。


『フン、何が聖域だ。増長するな。』


 俺の左腕からぬりと身を起こしたラシュガルが黄金の神聖な魔力を一瞬で展開。強固な半透明の障壁を出現させ、レオパルドの凶撃を完全に防ぎ切っていたのだ。


「これはこれは…迷いの森の蛇まで飼いならしていたとは…ユウキと言ったか…お前は相当な好き者だな。」


 刺客が放ったナイフが想起される。現実を目の前にして、俺はまた恐怖に包まれていった。


「ユウキどけっ!」


 即死攻撃で死なないことを良いことに、恐怖心で足がすくんだ俺をノアが安全な場所まで吹き飛ばした。巻き込まれたラシュガルも「ぐえっ!?」と声を出し、脳が揺られた影響で気が朦朧としてる。


「ユウキ殿、こちらへの物陰へ!」


 エリオが俺の身体を強引に起こし、足がもつれそうになりながら柱の陰に身を隠した。物陰に隠れたことを確認すると、先に動いたのはシロとノアの方だ。俺に命の危険が及んだことで、死者である二人の感情が一気に激化する。


「(……ユウキさんに手を出すな……ッ!)」


 シロが壁を鋭く蹴り上げ、漆黒の死の呪気を両手にかざしながら、豹のようなしなやかさでレオパルドの喉元へ襲いかかる。その速度は肉眼では追いきれないほどだ。


「ほう! 死者の分際でこちらへ向かってくるか……! だが甘いぞ!」


 レオパルドは焦りを見せるどころか、洗練された素早い身のこなしで刃を交え、シロの鋭い連撃を大剣の刀身で完璧に受け止めてみせた。


「(なっ…!?)」


 背後からノアが霊体特有のすり抜け能力を活かして床下から飛び出し、レオパルドの死角である死角――脇腹を狙って挟み撃ちの打撃を打ち込む。


「ぬうっ!?」


 レオパルドはギリギリのところで身をひねり、間一髪でノアの奇襲を回避した。月明かりが差し込む王宮の踊り場を舞台に、二対一の激しい近接戦闘が本格的に幕を開けた。


「ふむ……やはり話に聞いていた通り、雑魚怨霊ではないようだな。まさか自我を持ち、明確な殺意を持ってこの私に呪いを振るってくるとは。」


 レオパルドは余裕の笑みを崩さぬまま呟いた。


「やっぱり…僕たちの姿がハッキリと視えるんだな。ただの甘やかされた王子じゃないってわけだ……。」


 ノアがギリッと歯を噛み締めて警戒を強める。


「(ノア、気を付けて! コイツ……強い……ッ!今までの敵とは身体能力が違いすぎる……!)」


 シロが強く警告を発した。剣技のキレ、踏み込みの深さ、そして全身に纏う常人離れした密度の魔力。レオパルドが持つ力はただの一国の王子という枠組みを明らかに逸脱していたのだ。


「シロ姉ちゃん、僕にもわかってるよ。“コイツが…魂を売ってる”ってことに…!」


 激しい感情を言葉にのせ、床を蹴ったノアは全身を震わせて呪怨を帯びたエネルギーを放出した。


「ふんっ!」


 大剣では受け止めきれないと判断したのか、レオパルドは高く飛び上がって避ける。今度はシロが着地のタイミングを見計らい、獰猛な獣を彷彿とさせる呪気の爪で襲い掛かる


「二度同じ手は喰わんッ!」


 シロが飛び掛かってくることを予測していたのか、レオパルドに攻撃がたどり着く前に大剣を振るい、禍々しい衝撃波で応戦する。


「(くっ…!)」


 すんでのところで避けたシロ。しかしレオパルドの少しの隙を見逃さなかった。先ほども隙があった脇腹…きりもみして体勢を立て直し、そこへ呪気の一撃を喰らわす!


「ぐはッッッ!!」


 初めて喰らわせた重たい一撃。ただで転ばないレオパルドは鋭い大剣の振りでシロの追撃を許さない。


「一撃で…なんて衝撃だ…。素晴らしい…!」


 脇腹を抑えるレオパルド。しかし、彼に宿っているのは恐怖心ではない、感嘆や好奇心のような、怨念の力に魅入られた表情をしている。


「おい変態野郎! エレノア王女はどこにいる!? この城のどこを探しても、彼女の生命力や気配が一切しないぞ!」


 激しい攻防の最中、ノアが鋭い声で詰問した。すると、レオパルドは心底可笑しそうに邪悪な大笑いを上げた。


「エレノア……? ははは! あぁ、あの哀れな女のことか! どこにいるかなど、この俺にも判るはずがなかろう! 自分が『大いなる術式の依り代』となるとも知らず、我がヴェルガルドへノコノコと嫁いできた愚かな女のことなどな!」


「(……酷い……っ! 自分の妻を…人の心がないの……!?」)


 シロの漆黒の瞳に激しい怒りの火が灯った。


 両親と故郷を愛し、夫となる男を信じてヴェルガルドへと渡ってきた一人の王女。その健気な思いを踏みにじり、最初から生贄を回収するための使い捨ての道具としてしか見ていなかったこの男の残忍さ。


「ふざけるなッ!!」


 ノアとシロの怒りが頂点に達し、爆発した。二人の連携はさらに苛烈さを増し、死の呪気を纏った連撃がレオパルドの防具を削り、ついにその頬を浅く切り裂いた。


「チッ……! 調子に乗るなよ、死損ないどもが!」


 頬から流れる血を指で拭い、レオパルドの余裕の笑みが消え去った。


「思ったよりやるじゃないか……。ならば、これならどうだ!」


 レオパルドが叫ぶと同時に身体から噴き出したのは、王国の街を覆っていたものとは比べ物にならないほど濃密でドグロい「死の怨念」だった。


 バリバリと骨の砕ける不気味な音が響く。


 レオパルドの身丈が二倍近くまで膨れ上がり、皮膚は黒く変色し、角のような突起が全身から突き出していく。辛うじて人型を保ってはいるものの、その姿はもはや人間ではなく、怨念の塊と化した化け物そのものだった。


『グオォォォォォッ!!』


 凄まじい咆哮とともに、巨大化したレオパルドの丸太のような腕が振り下ろされる。


ドガァァァンッ!!


 床の大理石が派手に砕け散る。力と耐久力は跳ね上がったものの、巨体ゆえにその動作は明らかに鈍足となっていた。


「速さなら負けない……っ!」


 シロとノアが残像を残すほどの超スピードで化け物の全方位から高速の乱舞を叩き込む!


 しかし――化け物となったレオパルドは、ダメージを無視して巨大な拳を振り回してきた。広範囲を薙ぎ払う凶悪な一撃がシロとノアに迫る!


「危ないっ!」


 ユウキが叫んだ瞬間、巨大な黄金の障壁が二人の前に展開され、化け物の拳を完璧に受け止めた。


『……フン。これ以上、子供たちを傷つけさせるわけにはいかんな。』


 ユウキの左腕から離れ、宙へと躍り出た腕輪蛇ラシュガルが、光を放ちながら巨大な真の姿――神々しき大蛇へと変貌を遂げた。


『死者を弄び、魂を穢す愚か者め。神域の力、その身で味わうがよい。我も力を貸そう!』


「(……うん! 一気に倒す……!)」


「起きられて良かったじゃん。」


『小僧、お主には後で説教じゃ。』


 頼もしすぎる助っ人の参戦に、シロとノアの士気が最高潮に跳ね上がる。化け物と化したクズ王子に対し、俺たちの反撃の宴が今、始まろうとしていた。


第21話を読んでいただきありがとうございます!


ついにレオパルド王子との戦闘が始まりました。怨念の力に魅入られた王子は、剣の素養も相まって、禁忌であるはずの力を自在に操ってシロとノアを苦しめます。


激化した戦いは第二ラウンドに続きます…!


「シロとノアがカッコイイ!」「ラシュガルが間に合って良かった!」と思ってくださった方は、ぜひブックマーク登録と下部の**評価(★★★★★)**をよろしくお願いいたします!


明日も21:00に更新します!

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