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第20話 【罠か?】刺客を追って王城の裏口へ侵入したら血まみれの死体と化していました……そこへ王子がやってきて…?

 刺客が残した微かな足跡と、澱んだ死のオーラを辿り、俺たちは深夜のヴェルガルド王宮の敷地内へと足を踏み入れた。


刺客の気配は、兵士の姿もない静まり返った王城の裏口へと一直線に続いていた。重々しい鉄製の扉が、まるで俺たちを招き入れるかのように薄開きになっている。


「(……待って。この気配の残し方……わざとだよ。きっと……奥へ誘われてる。)」


 シロが立ち止まり、警戒露わに漆黒の瞳を走らせた。


『こういう時は罠だと相場が決まっておる。敵の術中に自ら跳び込むようなものじゃが…。』


 俺の左腕で、ラシュガルが冷ややかな声を響かせる。


『……でも、ここで引いたら手がかりが消えちゃうよね。罠だと分かってても、行くしかない。』


 ノアが意を決したように拳を握りしめた。


「……うん。みんなの言う通りだ。気をつけて進もう。」


 俺たちは息を殺し、開け放たれた裏口から城内へと潜入した。


 だが、城内を進むにつれ、異様な違和感が膨らんでいく。王宮の裏廊下という警戒厳重であるはずの場所だというのに、兵士の巡回どころか人の気配すらしないのだ。不自然なまでの静寂が廊下を支配していた。


 曲がり角を抜け、月明かりが青白く差し込む広々とした踊り場へと出ると…。


「……っ!? あれは……!」


 エリオが息を飲んだ。


 踊り場の中央。月光の渦の中に、先ほど俺たちを急襲した刺客がうつ伏せのまま力なく倒れていたのだ。刺客の体の下から鮮血が滲みだし、大理石の床を赤く染めている。


「な……なんだ……? 一体何が起きたんだ……!?」


あまりの光景に、俺は足が竦(すく)んだ。刺客はピクリとも動かない。


「まさか……死んでるのか……?」


 俺は震える手で膝をつき、呼吸を整えると、意を決して刺客のフードをめくった。血の匂いが鼻をつく。


 そこに現れたのは――見覚えのある顔だった。


 昼間、冒険者ギルドの受付カウンターで、疲れた顔をしながら俺たちに依頼の手続きをしてくれた、あの受付嬢の女性だった。


「なっ……!? ギルドの……受付嬢……!?」


 俺とエリオはあまりのショックに息を失った。


「な、なぜ彼女が……刺客……!? いや、それ以前に、なぜこんなところで血を流して……っ!?」


 混乱する俺たちに対し、ラシュガルが静かに首を伸ばし死体を見つめた。


『……命の鼓動がない。絶命しておる。直前に何者かによって息の根を止められたようじゃな。』


「そんな……! どうして彼女が殺されなきゃいけないんだ……!?」


 俺たちが困惑と恐怖に包まれる中、シロだけは冷静に、死体の腕の袖をそっと捲り上げていた。


「……ようこそ、我がヴェルガルド王国へ。」


 突如、踊り場の上階へと続く階段の踊り場から、冷ややかで高圧的な男の声が響き渡った。


 ハッと顔を上げると、そこには豪華な装飾が施された貴族服を纏い、金髪をなでつけた一人の若い男が立っていた。


 その口元には、俺たちを見下すような蔑みの笑みが浮かべられている。


「エリオ殿……。 そちらの無礼な田舎者どもは、アムリタ王国の野良犬かね?」


「っ……! あなたは……ヴェルガルド王国第一王子……レオパルド殿下……ッ!!」


 エリオが激しい憎悪と激昂を込めてその名を叫んだ。


 彼は血の海に横たわる受付嬢の死体を一瞥すると、心底汚らわしいものを見るかのように鼻を鳴らした。


「フン、使えぬ道具だ。アムリタの不快な鼠どもを処理させようと思ったが、返り討ちに遭いかけた挙げ句、ここまで足跡を引いて逃げ帰ってくるとはな。口封じに殺して正解だったわ。」


「口封じ……!? 自分の手下を……最初から見捨てるつもりで……!?」


 俺が怒りに震えながら叫ぶと、レオパルドは可笑しそうにクスリと笑った。


「手下? ハハハ、勘違いするなよ冒険者風情が。そいつはただの『操り人形』だ。我が王宮の術式によって意識を書き換えられ、生贄の収集と怪異の管理をさせられていた哀れな道具に過ぎん。」


 レオパルドはゆっくりと階段を下りてくると、俺たちの目の前で腕を組んだ。


「ようこそ、野良犬ども。我がヴェルガルド王国の真実へ。……まあ、生きてここから出られるとは思わぬことだがな。」


 月明かりの下、冷酷なレオパルド王子の笑みと横たわる受付嬢の死体。俺たちの前に、ヴェルガルド王国の深々とした闇が全貌を現そうとしていた。


第20話を読んでいただきありがとうございます!


罠とわかりつつ進んだ先には、なんと受付嬢の死体。レオパルド王子はシロが苦戦した相手を簡単に処理してしまいました。次回はレオパルド王子と直接対決です。そしてエレノア王女は果たして無事なのでしょうか。


「知っている人がこと切れててショック」「レオパルド王子を許せない!」と思ってくださった方は、ぜひブックマーク登録と下部の**評価(★★★★★)**をよろしくお願いいたします!


明日も21:00に更新します!

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