第11話 どうやらラシュガルは普通の蛇ではないようです
ノアは肩を小刻みに揺らしたまま、溢れ出る涙を不器用に拭った。怨念を抱えているとはいえ、まだまだ子供。シロに慰められても自分の感情を抑えこむことができない。ノアは世界に置き去りにされたように泣いた。
「……(ノア、ごめんね。と慰める。頭を撫で、自分の頬をノアの頭にくっつけるシロ)。」
「お姉ちゃん…どうして…?僕たちを殺した、人間が憎くないの!?」
ノアは嗚咽混じりに必死に声を絞り出す。出てくる言葉は途切れ途切れに、涙を拭いながらやっとのことで想いを出し尽くせた。
「ノア…」
名前を読んでみたものの、その後が続かない。
レグナードで怨霊に襲われた記憶が蘇る。怨念を取り除こうと歩み寄るなんておこがましいことなのだ。
ノアは蛇の調査で迷いの森に来たことなどすっかり忘れてしまっているだろう。ラシュガルを確認したばかりか、酒を気に入って一緒についてくると言うのだから調査どころの話ではない。左腕にその成果の重みを感じるが、今は場違いに思えて仕方ない。
「お姉ちゃんは…いつも一緒にいてくれたのに…本当は…僕のことなんてどうでも良いんだ!裏切り者!!」
言葉が含む悲しさに感情がこみ上げて涙の勢いが増す。泣きじゃくりながら上り調子で語気が強くなった。言葉を放ったノアはシロを振り払って駆け出すと、振り向きもせずに勢いのまま森の奥に走り去ってしまった。
「ノア!待つんだ!一人で行ったら危ない!」
「……(ノアの言葉にショックを受けて追いかけることができないシロ)。」
裏切り者…か。ノアは小学校5、6年生くらいかな。小学生らしい言葉選びとも言える。だけどそんな言葉をどこで覚えてきたのか。
「シロ、急に言われるとショックだよな。俺も昔、言われたことがあるんだ。」
「……(口をつぐんで涙をこらえるシロ)。」
「きっとノアは『大切な人と意見が食い違う』状況が初めてだったんだ。実際に直面した時の感情を表現する語彙力が乏しいんだと思う。だから自分が知っている中で直感的に強い言葉を使ってしまったんじゃないかな。本当はそんなこと思っていないさ。だから、一緒に探しに行こう。」
「……(『うん。』と小さくうなずくシロ)。」
まだ陽はあるが、一目散に走っていったノアは既に見えない。
「我に任せろ。」
「うお、起きてたのか?」
酒が回って胴体がほんのり赤くなったラシュガルが口を開いた。
「我が手伝ってやろう。言っておくがな、我はただの蛇ではないぞ。」
ラシュガルは俺の腕に巻き付いたまま、蛇らしくピロピロと舌を素早く出し入れする。どうやらノアの匂いを探っているようだ。
「なぁ、それってただの蛇がやることじゃないの?」
「……(『ふざけてないで早くしてよ。』と少し怒った顔でこちらを見るシロ)。」
「……アッチ。」
サーチ中のラシュガルはさしずめ“コンピューター”と言ったところか。完了すると無機質に報告し、眼を丸めて胴体ごと『あっち』の方角を示した。
「よし。行こう、シロ。」
「……(うん!と力強くうなずくシロ)。」
「もうじき日が暮れる…急いだ方が良い。迷いの森が襲い掛かるぞ。」
「…どういうことだ?」
「……(シロの表情に焦りが見え始める)。」
第11話を読んでいただきありがとうございます!
感情的に去ってしまったノアの安否が気になります。
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