表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
9/10

第8話 ここに物理でやられる配信者1人

「ヒッ……!? で、でけぇ……!」


地下4層の湿った岩場に響き渡る、巨大なハサミの砕く音。

目の前に立ちはだかるのは、体長2メートルを超える紫色の怪獣――『ポイズンスコーピオン』だ。


尻尾の先にある毒針が怪しく蠢き、今にも襲いかかってこようとしている。


「やばいやばいやばい! おいコメ欄! こいつどうやって倒すんだよ!?」


テンパりすぎて声が裏返る晴真。

画面のコメント欄は、ここぞとばかりに怒涛の勢いで流れていく。


『弱点は頭の甲羅の隙間!』

『いやハサミの関節狙え!』

『旋回性能低いから背後に回り込め!』

『てか尻尾の攻撃モーション見てから避けろ!』

『右にステップ! いや左だ!』


「あぁぁぁもう! 一度に大量に言われても分かんねぇよ!!」


上だの下だの右だの左だの、リスナーからの指示が多すぎて脳の処理が完全に追いつかない。

晴真が頭を抱えて混乱した一瞬の隙を、毒サソリは見逃さなかった。


ガチィンッ!


「ぶへっ!?」


鋭く振るわれた巨腕のハサミが晴真の横腹を強打する。

吹き飛ばされ、岩場をゴロゴロと転がる晴真。


【フリールガードコート】のおかげで毒の追加効果こそ無効化したものの、単純な物理攻撃のダメージがガッツリ身体を撃ち抜いた。


「いっ……てぇぇえええ! 肋骨いったかと思った……!」


『おいw 混乱してる隙に殴られたぞw』

『指示多すぎてキャパオーバーしてて草』

『とりあえず1回引け!』

『このままじゃ物理で叩き潰されるぞ!』


「退避! 一旦退避ぃぃぃ!!」


晴真は立ち上がると、サソリの追撃を間一髪でドタバタと回避し、なりふり構わず通路の奥へと逃げ出した。


ゼーハーと荒い息を吐きながら、なんとか巻くことに成功した晴真だったが、全身打撲と疲労でもう限界寸前だった。壁に背中を預けてズリズリと座り込む。


「はぁ……はぁ……死ぬかと思った……。なんだよあいつ、攻撃痛すぎるだろ……」


『まあ初心者防具じゃ物理攻撃は痛いよな』

『体力もミリ残りでボロボロじゃん』

『このままだと次のエンカウントで詰むぞ』


「うぅ……回復アイテムなんて買ってねぇよ……俺のダンジョン配信、ここで終わりか……?」


死にそうな顔で弱音を吐く晴真に、コメント欄から助け舟が出される。


『あー、そういえば4層の奥から降りられる「5層」の入口付近にセーフエリアあったはず』

『あそこ回復の泉があるぞ!』

『水飲むだけでHP回復する神スポットな』


「い...泉?泉があるのか...?行くしかねぇのか、」


生き残る希望が見えた晴真は、ボロボロの体を奮い立たせて立ち上がった。

襲いかかってくる他のモンスターを必死に撒きながら、命からがら5層へと続く階段を駆け下りる。


辿りついた地下5層――そこはこれまでの殺伐とした岩場とは違い、幻想的な青い光を放つ大きな『泉』が広がる静かな空間だった。


「あった……! 回復の泉だぁぁぁ!」


晴真は倒れ込むように泉へ駆け寄り、手ですくった聖なる水をガブガブと飲み干した。


温かい光が全身を包み込み、ボロボロだった体力がみるみるうちに回復していく。痛みも一瞬で吹き飛んだ。


「ふはぁぁ……! 助かったぁぁ……! 生き返るぅぅ……!」


泉のぼやっとした冷気に包まれ、生き返った心地になり、泉のほとりで大の字になって天を仰ぐ晴真。


と、その時。


「――騒がしいと思ったら、あなた誰?」


頭上から、鈴を転がすような透き通った女性の声が降ってきた。


びっくりして飛び起きた晴真の視線の先には、美しく煌めく装備を身にまとった、一人の見知らぬ少女が立っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ