第7話 ここに名が馳せてきた配信者1人
「ん? なんだこれ……」
消滅したポイズンスライムの跡地に、紫色の怪しく光る小さな結晶が転がっていた。
晴真が拾い上げると、ずっしりとした重みとほのかな熱を感じる。
「おいコメ欄、なんか変な石落ちたんだけど。これ何?」
「おぉ! ポイズンスライムのレアドロップ「ポイズンコア」じゃん!』
『マジで!? 運良いな!』
『それレシピ本に載ってる毒属性付与の素材だぞ』
「毒属性……!? マジかよ! 属性武器とか急に主人公っぽくなってきたじゃん!」
興奮ぎみにカメラに向かってポイズンコアを掲げる晴真。まああまり毒属性の主人公は見たことないのだが...
と、その時。晴真は画面の端に表示されている数値を見て、思わず目を丸くした。
「あれ……? そういえば同接、結構増えてね……?」
画面右上の視聴者数(同接)を見ると、いつの間にか『120人』を突破していた。
さっきまで数十人だったのが、3桁の大台に乗っている。
『レアモンスター倒したあたりから人増えてきたな』
『命<金の狂気配信って聞いて飛んできましたw』
『100層まで脱出不能のダンジョンにソロで入ったバカはここですか?』
「へへっ……だろ!? 俺様の命がけのプレイに世界が追いついてきたってわけよ!」
同接100人越えにすっかり鼻高々の晴真。ニヤニヤが止まらない顔でレシピ本を開く。
「よしよし、このポイズンコアを使ってダガーを毒属性に強化すればいいんだな? どれどれ……」
だが、レシピの必要素材の欄を見た瞬間、晴真のドヤ顔がピタリと止まった。
【ポイズンダガー強化レシピ】
・ショートダガー+1 ×1
・ポイズンコア ×1
・ポイズンスコーピオンの毒針 ×1
「……ん? 毒針……? なんだよこれ、ポイズンコアだけじゃ作れないのかよ!?」
がっくりと肩を落とす晴真に、コメント欄がすかさず情報を投げる。
『あー、ポイズンスコーピオンか』
『そいつがいるの、ここ(3層)じゃなくて「4層」以降にいるモンスターだぞ』
『危険度上がるからやめとけって!』
「は!? 4層!? 嫌だぞ俺は! 3層でも死にかけたのに、わざわざ危険な階層に降りるなんて――」
嫌々と首を振る晴真だったが、増え続けるコメント欄を見てふと思いつく。
(待てよ……ここで『4層突入!』って打ってノリノリで素材集めしたら、さらに同接増えるんじゃね……?)
「……ふっ、冗談だよ! 配信者が安全な場所で日和ってどうすんだよな!」
手のひらをくるくる返し、晴真は腰のダガーをシャキーンと抜いた。
「見とけよリスナーども! 4層に行ってサソリの毒針サクッとGETしてきてやるぜ!」
『調子乗り始めたぞww』
『同接増えて浮かれてるの丸わかりで草』
『フラグ建てるなww』
コメント欄のツッコミを背に受けて、晴真はノリノリで階段を降り、地下4層へと足を踏み入れた。
4層は3層以上に暗く、湿った岩場が広がっている。
少し進んだ先――岩の影からガサガサと嫌な音を立てて姿を現したのは、体長2メートルを超える巨大な紫色のサソリ『ポイズンスコーピオン』だった。
巨大なハサミを威嚇するように打ち鳴らし、尻尾の猛毒針を怪しく光らせている。
「ヒッ……!? で、でけぇ……!」
同接に目がくらんで4層まで降りてきたものの、想像以上の威圧感に一瞬で恐怖がカムバックする晴真。
自分の浅はかさを猛烈に後悔する晴真の目の前で、毒サソリが凶悪なハサミを持ち上げたのだった。




