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第5話 ここに金に目くらむバカ1匹

「……クソっ、なんだよこの気味悪い場所は……」


湿った紫色のかび臭い通路を、晴真は腰をかがめながらビクビクと進んでいた。


1層とは明らかに雰囲気が違う。空気も重く、どこからか不気味な足音が響いている。

そんな晴真の前に、暗闇からヌッと姿を現したのは――体長1メートルを超える、狼のようで、白い毛皮を身にまとった『フリール』だった。


「ひぃっ!? 出たぁぁぁ!」


『おい落ち着け!』

『そいつは1層のやつより素早いぞ!』

『正面から行くな! 横に回れ!』


「う、うおああああっ!」


コメ欄のアドバイスを必死に聞きながら、晴真はなりふり構わず剣を振り回す。

間一髪で攻撃をかわした。


『確か弱点があったような....』

『そいつは状態異常に体制もあるぞ!』

『そうだ!頭部だ!頭部が弱点だ!』


コメ欄に教えられた弱点の頭部へ必死に剣を叩き込んだ。


毛皮が絡みつくような、嫌な手ごたえとともに、なんとかフリールを撃破する。


「はぁ……はぁ……死ぬかと思った……! なんだよこれ、3層ってこんなにレベル高いのかよ!?」



冷や汗ダラダラで膝をつく晴真。1層のモンスターとは段違いの強さに、恐怖で体が震えていた。


しかし、曲がり角を曲がった直後――その恐怖は一瞬で吹き飛ぶことになる。


「……ん? なんだアイツ?」


通路の奥にいたのは、全身が銀色に怪しく輝く、一回り大きなフリールだった。


『うわっ! 出た!!』

『マジかよ! フリールのレア変異種「ゴールドセンチピード」だ!!』

『おい金髪! 絶対に刺激するな! 3層の初心者殺しだぞ! 逃げろ!!』


危険を察知したコメ欄が全力で引き止めにかかる。

しかし、次のコメントが晴真の運命を変えた。


『ちなみにアイツの銀色の毛皮、素材屋に持っていけば【50万ゴールド】で売れる』


「ごっ……50万……!?」


晴真の目つきがガラリと変わった。

さっきまで恐怖で震えていた足が、ガタガタと歓喜で震え始める。


『おい顔www』

『目が札束になってて草』

『やめとけって! 50万に目がくらんで死ぬぞ!!』

『命を優先しろアホ!!』


コメ欄の必死の制止など、今の晴真の耳には1ミリも届かない。

欲望という名の最強のバフがかかった晴真は、不敵な笑みを浮かべながら剣を構えた。


「命<金だろぉぉぉがああ!! 50万よこせぇぇええっ!!」


『正気かよwww』

『金への執着で強くなってて草』


超覚醒した晴真は、鬼のような形相で銀色のフリールに突撃。

相手の猛攻を間一髪で避けまくり、執念の連続攻撃を叩き込んで奇跡的に撃破!

見事に輝く『銀の毛皮』を手に入れたのだった。


「ハァ……ハァ……やった……! 50万GETだぜぇぇええっ!」


血眼で毛皮を大事そうに抱え込む晴真に、コメ欄は呆れ果てていた。


『マジで倒しやがった……』

『金がかかった時のコイツ強すぎて引くわ』

『もっと強い装備がありゃなぁ〜』


すると、リスナーの一人がふと思い出したように書き込んだ。


『そういえば、その奥の部屋……アプデ後も位置が変わってなければ、装備宝箱があるはずだぞ』


「え!? マジで!? これで強くなれる!?」


晴真が急いで奥の小部屋へ駆け込むと――そこには、1層の罠箱とは比べものにならない、重厚な装飾が施された本物の宝箱が鎮座していた。


「あった……! 今度こそ本物の宝箱だ!!」


銀の毛皮を担ぎ、宝箱を前に目を輝かせる晴真。

この中に何が入っているのか、期待に胸を膨らませるのだった。

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