第2話 ここにブーメラン刺さってるバカ1匹
ロックリザードを倒したものの、晴真はハッと重要な問題に気がついた。
「待てよ……俺、パンと水しか持ってきてないんだけど、ここから25層までどうやって腹減りをしのげばいいんだ……?」
手元にあるのはペラペラのパンと、心もとない水筒がひとつだけ。絶望する晴真の視界に、コメント欄の文字が流れる。
『さっき倒したそれ、食えるぞ』
『ロックリザードの肉は尾の身が美味い』
『革を剥いで焼けば普通に肉』
「は!? コイツ食えるの!? マジで!?」
目を見開く晴真。半信半疑になりつつも、他に食料もないため、指示通りに剣でロックリザードの尻尾を切り落とし、持っていた小型の魔導コンロで焼き始めてみた。
じゅうじゅうと香ばしい匂いが立ち込め、一口かぶりつく。
「う、うんまーーーっ!? なにこれ!? ジューシーだし肉汁やば!!」
『うまいだろw』
『コメ欄を信じろ』
『もうコメ欄なしじゃ生きていけない身体だな』
「やべぇ……お前らマジで頼りになるわ! これから『師匠』って呼ぶわ!」
すっかり味をしめた晴真は、調子良くコメ欄を全幅の信頼で頼り始めるようになった。
そのまま2層、3層とダンジョンを下っていく晴真。
しばらく進むと、目の前に青く怪しく光る大きなキノコが群生しているエリアにたどり着いた。
「おおっ、キノコ発見! これも食えるやつか!?」
ここで、コメ欄の悪ふざけスイッチが入る。
『それ「ミッドナイトマッシュ」だな。生で食うと魔力が回復する高級食材だぞ』
『そのままガブッといけ!』
『生で食べるのが一番美味い』
「マジで!? いただきます――」
危険なキノコを生で口に放り込もうとしたその瞬間、晴真の目にとあるものが留まった。
群生するキノコの根元に、カラカラに乾いたネズミっぽいモンスターの死骸が転がっている。しかも、口から紫色の泡を吹いた状態で。
晴真はピタリと手を止めた。
「……なぁ。このネズミ、絶対にこのキノコ食って死んでるよな?」
『チッ、気づいたか』
『惜しいwww』
『騙せなかったかーw』
「お前ら毒キノコ食わせようとしただろ!! 殺す気かアホ!!」
晴真は叫びながらキノコを投げ捨てた。
そして、自分が間一髪で危険を回避したことに味をしめ、腰に手を当ててカメラに向かってドヤ顔をキメる。
「はっ! 残念だったなリスナー共! 俺様の鋭い観察眼と頭脳を舐めるなよ! 騙そうとしたってそうはいかねえんだよ!」
フンッと鼻で笑い、自信満々に胸を張る晴真。
「ったく、お前らほんとにバカだな!!」
『どの口がwwww』
『10分前に石投げて泣きかけてた奴がなんか言ってる』
『超絶巨大ブーメラン刺さってて草』
コメ欄は一気に爆笑の渦に包まれたが、晴真の本気のドヤ顔は崩れない。
こうして晴真は、コメ欄の悪意と優しさに弄ばれながら、さらなる深層へと進んでいくのだった。




