第41話 お仕置き(?)
銭湯から出た後俺とメイダは、明日の予定をみんなで話し合ってから別れを告げた。
銭湯から出たばかりでポカポカとしてたので、普段より夜風が一段と気持ちいい。
いつものようにメイダを背負おうとしたが、「今日はいい」と断られた。今は自分で歩きたいとのこと。
夜空に浮かぶお月様(この世界では何と呼ばれてるか分からないが、多分月)に照らされながら、俺とメイダは肩を並べて屋敷に向かった。
仕事帰りっぽい人達や、飲み屋でギャーギャー騒いでて楽しそうな人もいる。いつもと違う雰囲気に俺は少しワクワクした。
帰り道特別する事もないが、メイダは何か喋らないと気が済まないらしいので、今日の出来事の話でもすることにした。
「サウナにいすぎて倒れるってどういうことよ」
「ごめんごめん。でも俺にも譲れないものがあったんだよね」
「何が譲れなかったのよ」
「それは言えない。これは男同士の戦いだから、メイダには入れない」
「はぁ? まあ言いたくないならいいわよ」
サウナの我慢比べで最後は気絶はしたものの、喧嘩売ってきた奴よりは長生きすることができた。
起きた時にはその男は既にいなかったし、俺の勝ちでいいよな。
「そういえばニィーテには許してもらえた?」
「いきなりだな。多分許してくれたと思う」
ニィーテを男だと勘違いしてた件は、もちろん意識が戻ったあと、真っ先に土下座したのだが、「今のお前を見ていたらどうでも良くなった」って言われて怒られはしなかったので、きっと許されているはず。
「だいぶ怒ってたから、これからはちゃんと気を付けなさいよ」
「うぃ」
今日のことはあらかた語り尽くし、他に何かないかと考えていると、ドッグカフェでの出来事を思い出した。
みんなに言うの忘れていたが、メイダにだけでも自慢してやろ。
「驚きの新発見があるから聞いてよ」
「?」
「俺実は………実は!」
「早く言いなさいよ」
「犬の言葉がわかる!」
「………………へぇ」
あれ? 反応薄っ。
「いやこれ結構すごくない? 俺結構驚いたんだけど」
「すごいことなの? 私獣人についてよく分かってないから、それがすごいのか分かんないわよ」
「そっすか……」
そう言われると全然驚くことじゃない気がしてきた。獣人にとっちゃ普通のことなのかも。無知って怖いな。
その後夕食はなんだとか、俺の焦げたしっぽをどうするかなどのくだらない話が続いた。
屋敷に着くと、当然のようにガロが扉の前で待っていた。毎度思うが、なんでガロって俺らの帰るタイミングぴったりに待ち構えることができるんだろうか。
「銭湯に行ったと聞いたので、夕食の準備を先にいたしました。お嬢様は食堂の方へ先に向かってください。レイは話があるから私についてきてくれ」
あの護衛の人から何らかの連絡はされているらしく、俺たちが銭湯に行ったことは知られていた。
ところで話って何だ?
メイダも俺とガロに着いて来ようとしたが、多少強引に侍女達に連れてかれていた。
向かう先はもちろん談話室だ。長話にはうってつけの場所である。
俺とガロは対面する形でソファに座る。
「話って?」
「残念だが今からするのは説教とお仕置きだ」
「俺悪いことしてない」
被せ気味に抗議の声を出した。思い当たる節は全くないし、あるとすればニィーテの件だが、ガロが怒ることではないはずだ。
「分かってないというなら教えてやろう。1つ目は護衛中に寝たこと。2つ目は銭湯で騒いだこと」
な、なんで銭湯の中の情報まで知ってるんだ?
「寝たのは良くなかったと思うけど、銭湯の件は納得できないね。あの若造があんなこと言われなきゃ俺も騒がなかった。俺悪くない」
「言い訳しても駄目だ。護衛なら常時冷静沈着に、周りを俯瞰しながら行動しなければならない。残念だがお仕置きを受けてもらう」
うーん、正論。貴重な意見ありがとうございます。
でもお仕置きまでする必要ないと思うんだけど。
「説教だけでいいじゃん。お仕置きの必要性はないと考えます」
「黙って従え。受けないというならメシ抜きにする」
「動物虐待です。メイダが黙ってないよ」
「お前は人間だから大丈夫だ。お嬢様は俺がなんとか説得させる。だから大人しく俺の前に座って両手を上げろ」
もういい。めんどいから早く終わらせる。
ガロの大きな足の間に、ガロに背を向ける形で座った。そして両手を万歳させる。
はたから見たら今の状況めっちゃシュールだな。ガロは俺に何するつもりだ?
「はい上げた。これでいi 」
俺が言い切る前に、ガロのその大きな指先が俺の脇腹をまさぐってきた。
「なっ?! くっ、くすぐってぇ!」
衝撃のあまり、バッっと前に飛び出してしまった。
「くすぐりがお仕置きって何? ふざけてる? ふざけてるなら俺帰るよ」
「お前の家はここだろう? メシ抜きにされたいなら逃げてもいいぞ」
それだけ言って、ガロは俺のことをじーっと見つめて圧をかけてきた。
「それずりー」
不満はまだまだ出てくるが、食欲には逆らえないので、また元の位置に戻った。
俺が座った途端、またガロの指が俺の脇腹の上をせわしなく動く。
これやばい。くすぐったさのあまり、体が無意識に逃げようとする。でもガッチリと足を挟まれてるせいで抜け出せない。
「死ぬ! ガチ死ぬ!」
「安心しろ。お前は強い」
俺の悲痛な叫びも気にすることなく、ガロの指は俺の弱いところを的確にくすぐり続けた。
「ふぅ、こんな所で許してやろう」
やっとガロの手が止まり、おれはすぐさまソファに崩れ落ちた。あんなみっともない姿晒すなんて……。もうお嫁に行けない。
「体に力が入らねぇ……」
俺が力なく横たわってるのをいいことに、ガロは遠慮なく俺の毛をモフってきた。
「流石にお仕置きだけだと可哀想だからな。これが飴と鞭だ。よく覚えておけ」
「ガロお前………、俺のことモフりたかっただけだろ……」
「ん? そんなわけないだろ」
否定しているが、口がニヤニヤしてるので多分嘘。
触りたいなら素直に言ってくれれば良いのに。回りくどいことしてまで触りたいの? とでも言ってやりたかったが、口を開くのも億劫なので、ガロが満足するまで静かにしていた。
ガロの自己満お仕置きが終わった後、来るのが遅かったことをメイダに怒られながら食事をとった。
ガロの蛮行を密告はしなかった。メイダのことだから、ガロを羨ましがって同じようにくすぐってくるだろう。
俺とメイダも今日は色々あったし、明日も朝からギルドなので、ブラッシングも手短に終えて早く寝ることにした。
「ごめんなさいね。今日中にそのしっぽはなんとかしてあげたかったんだけど、もう私眠くて」
「自分でこれぐらいなんとかする」
「それは絶対だめ。あなた不器用なんだから、どうせ何かトラブル起きるわよ」
「信用してくれないの? 俺泣いちゃうかも」
「そういうのいいから早く寝るわよ。明日も早いんだから」
メイダに不器用だと思われるような事してないと思うんだけどなぁ。
ここで反抗する意味もないので、俺は言われるがままベッドに入る。
疲れていたのもあり、俺とメイダもすぐに眠りについた。




