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第39話 完璧な作戦?

馬車に乗ってからしばらくして、目的地である森林に着いた。

森林に入る冒険者達が使っているであろう、キャンプ場の様な場所に止まり、俺たちはヴィリアを起こして馬車から降りた。

「代金は1人銅貨8枚だ」

みんながそれぞれお金を御者の人に差し出す。もちろん俺はメイダに払ってもらう。

「獣人のことはまだ信用できないが、お前のことは信用してやるよ。さっきはあんなこと言って悪かったな」

「? ありがとう」

なんでいきなり信用されたのかは分からないが、感謝はしておく。

みんなで御者にお礼を言ってから、俺たちは森へと足を踏み入れた。

森は、雑草や見たことないキノコなどで茂り、木漏れ日が刺した綺麗な場所で、魔物とか魔獣が出るとは思えない様な場所だった。

「常に周りを警戒しろ。油断が命取りになる」

「索敵なら俺やるよ。俺耳良いから」

「必要ない。魔力探知で充分だ」

「魔力探知って?」

「そのままの意味だ」

とりあえず俺のアイデンティティが、魔力探知とかいうよく分からんものに潰されたらしい。

いやまあ俺にはこの身体能力があるし? 何ですか? 別に気にしてませんけど。

出鼻を挫かれて少し気が沈んだが、森の心地良い雰囲気ですぐにテンションは戻った。王都に来てから自然を感じてなかったから、一層自然が気持ちよく感じる。

その後も俺たちが、若干舗装されている道を道なりに歩いていたら、遠くの方から複数の生物の気配がした。

人間ではない感じがするしゴブリンかな?

ニィーテは気づいてると思うが念の為報告しておく。

「結構前の方になんかいる。ゴブリンかも」

「何だと? 本当か?」

「魔力探知で分かるでしょ?」

「探知には何もかかってない」

「へぇ、まあとりあえず俺が先に行って、何がいるか見てこようか?」

「頼んだ」

その遠くにいる生物に魔力がないから探知できないのかな? そんな疑問を携えながら、俺は気配へと走って向かった。

慣れた所を駆けるのはやっぱり気持ちが良い。ずっとこのままでも良い。

いやこんなんじゃ駄目だ。森には何があるか分かんないし、もう少し気を引き締めよう。

何かの気配が近くなってきたので、少しペースを落として静かに接近する。

「うーん。ゴブリンの……集落?」

向かった先は、ひらけた場所に何匹ものゴブリンが生活しているような所だった。

10……30……50匹か。多いな。

流石に数が多すぎるので、一旦みんなのとこに戻ってからどうするか決めることにしよう。

「はいただいま戻りました」

「早かったな。何がいた?」

「ゴブリンだね。でも集落みたいなところで、数がめっちゃ多い。50はいたし、見張りの高台もある」

それだけ伝えると、ニィーテは腕を組んでブツブツと独り言を言い始めた。

「真っ向からは流石に不利か? 前衛が2人だけなのは心許ない」

どうやって攻めるかを考えてるらしい。少しそっとしておこう。

待ってる間におつまみ食べちゃお。

俺はさっき戻ってきてる最中に捕まえたうさぎちゃんを、自慢の爪で捌き始めた。

「な、何してるんですかぁ!?」

「ん? どうした?」

ヴィリアのこんなに大きい声初めて聞いた。

「ど、どうしたじゃないですよ! そ、それうさぎですよね?」

「あぁ、ちょっとお腹すいちゃって。ヴィリアも食べる?」

「い、いらないですぅ……。す、少しびっくりしちゃっただけです……」

「獣人だとこんなの普通だから。気にすんなって」

俺がうさぎを捌き始めたことに驚いたらしい。

森の中で動物を狩って食べるってのは、人間でもよくある事だと思うんだけどな。

「火なら私が出すわよ」

「いや大丈夫。久しぶりに生で食べてみたい」

「お腹壊すんじゃないわよ」

メイダに王都に連れてこられるまでは、ずっと生肉を食べてたし大丈夫だ。

「心配しないで……レイがお腹壊しても……私が治す」

魔法ってお腹の痛みまで治せるんだ。

うさぎが捌き終わったので、俺はすぐさま肉にかぶりついた。

あぁ〜、この感じ懐かしい。たまには生肉を食べるってのも良いかも。昔の感覚も取り戻せるし。

ちなみに、メイダがうさぎ肉を持って俺に食べさせようとしたのは丁重に断った。あんまり衛生的には良くないし、メイダに持たせたくはなかった。

「うぃー、ちょい満足」

うさぎ肉はあっという間になくなった。まだまだ物足りないが、これから戦うことになるのでこれくらいで丁度良い。

「水ない? 手と口洗いたい」

「私水魔法は苦手だから、ヴィリアが出してやりなさい」

「ひ、ひぃ。わ、私ですか? うぅ、やりますぅ」

何だかヴィリアがさっきよりも怯えている。生肉は刺激が強すぎたのかもしれない。

手と口を洗い終わり、俺の食事がひと段落した所で、ニィーテが口を開いた。

「魔法で一掃しようと思う。やはり正面から対峙するには懸念点が多すぎる」

「えぇー? 俺魔法使えないんだけど。もしかして出番なし?」

「お前にはゴブリン共をなるべく1箇所に集めてもらう。集まった所に魔法を全力投入する」

「へぇ、長く考えた割にはシンプルだね」

「文句か?」

「違う」


俺たちはゴブリンの集落へと、気付かれないように近づいていった。

「全員魔法の準備をしろ。今の自分の最高火力を叩きつけろ」

俺以外の4人が魔法の準備を始めた。

「じゃあ行ってくるわ。魔法を放って欲しい時は合図出す」

魔法の詠唱をしだしたみんなが頷いたのを確認し、俺はゴブリンの集落に顔を出した。

「ヘイヘーイ! 盛り上がってなくなぁーい?」

俺の大声を聞いて、ゴブリン共が全員俺を向いてきた。次の瞬間、ゴブリン共がギェェ!と鳴きながら、俺に襲いかかってきた。

全てのゴブリンが俺を追っているのを確認してから、俺は高台にいる弓矢を持ったゴブリンに走りだした。

弓矢を持ってる奴は、俺を追いかけて来たりはしないと思うので、個別に殺っておく。

後ろから追いかけて来るゴブリン共が、ついて来れる程度の速さで走りながら、途中途中で高台に飛び乗り、弓矢を持ったゴブリンを殺していくのを繰り返した。ゴブリンの放つ矢なんて、ワンパターンで速くもないので余裕を持って避けられる。

高台のゴブリンを全て処理した所で、俺は四方八方をゴブリンに囲まれた。ゴブリン共はニヤニヤしながら俺に飛び込んでくる。

ゴブリンと接触するすんでの所で、俺は自分に身体強化魔法を施してから、思いっ切り真上に飛んだ。

「今!」

俺がさっきまでいた所に4人の魔法が撃ち込まれる。作戦は完全にうまくいった……と思った。

しかしここで誤算が生じた。

メイダの火球デカすぎじゃね?

信じられないほどの大きさを持った火球が、ゴブリン共に放たれたが、デカすぎるあまり俺にもぶつかりそうな勢いだ。

「えっ、やばい」

いや、ほんとにやばい。避けられない。じゃあ耐えるしかない。これ耐えれんのか? 獣人のタフネス信じてみるか?

とりあえず腕で顔を覆って目を瞑り、体を丸めて最大限の防御をとる。

しかしその時、俺の左半身が強い衝撃を受けて横に吹っ飛んだ。

「っ?! 痛ぇ!」

吹っ飛んだ先の木に叩きつけられたが、辛うじて着地はうまくすることができた。

みんなが俺に駆け寄って来ている。ゴブリンは無事一掃できたらしい。

「レイ! 大丈夫?!」

「うん、一応大丈夫……かも? でも頭ふわふわする。脳震盪えぐい。やっぱ駄目だこれ」

木に叩きつけられた時に頭をもろにぶつけたせいか、俺はパタリと倒れて意識を失った。




うぅ……なんか良い匂いする。なんだろ。

俺が目を開けると、メイダの顔面が視界を覆う様に広がっていた。

「えっ、近っ」

「あっ! やっと起きたわね! 心配させるんじゃないわよ! レイが起きたわよ!」

俺は今メイダに膝枕してもらっているらしい。

何でこうなってんだ? あっ、俺気絶してたんだ。

身体を起こそうとするが、メイダに首を抑えられてすぐに横にされた。

「うぐっ」

「まだ起きるんじゃないわよ。もう少し安静にしときなさい」

「えー」

まあもう少しだけこの状態でもいいか。膝枕気持ちいし。

「ご、ごめんなさいぃ! 私が風でレイさんを吹き飛ばしちゃったからこうなっちゃったんです……」

あの横からの強い衝撃ってヴィリアの風魔法だったんだ。

「ヴィリアはレイを助けてくれただけでしょ? 私が自分の魔力量を理解して使わなかったせいよ」

「いや、メイダの魔力量を考えずに作戦を立てた私の責任だ」

「誰の責任とかどうでも良いよ。俺は結局助かったんだし良いじゃん」

誰が悪いとか考える必要はない。結果良ければ全て良し。

「レイの言う通り……今はレイの無事に感謝……しよ?」

「それもそうね。というかレイすごいわね。あんな激しく叩きつけられたのに、外傷はほとんどなかったわよ」

そう言われて俺は初めて、自分の体に怪我が無いことに気付いた。獣人すご。

「でも……しっぽがちょっと焦げちゃってた」

「えっ? うわほんとだ」

俺はしっぽを前にして確認する。毛が黒いせいで分かりにくいが、確かに先端がちょこっと焦げてる。

「そこはもう切るしか無いわね。帰ったら切りましょう」

「俺のしっぽ……」

もうこれから戦う時は、しっぽにカバーとかつけようかな。

「まだ早いが、今日は帰ろう。レイの状態も心配だし、戦うにはもう少しお互いを知るべきだ」

ニィーテに意見に誰も反論することはなく、大人しく今日は帰ることになった。


そうして俺たちは、依頼達成を証明するためのゴブリンの牙や耳をあらかた回収してから、帰路についた。

行きに送ってもらった御者のおじさんはまだいたので、また乗せてもらった。

少し疲れた俺は、目が半開きの状態でウトウトしている。

「そんな眠いなら寝て良いわよ」

「いや、こんなところで護衛が寝ちゃまずい」

俺が頑張って起きようとしているが、容赦なくメイダは俺をモフって気持ちよくさせてくる。

結局俺は、メイダの膝の上で眠りについた。

こんなんじゃ護衛失格だ。すまんガロ、まだ1人前の護衛には程遠いわ。


















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