第33話 図書室
「早く起きなさい! 私出れないんだけど!」
「うわお! なんだぁ?!」
耳のすぐ近くでメイダに怒鳴られて、俺はすぐに目を覚ました。目の前には俺に抱きつかれて苦しそうにしてるメイダがいた。
「あぁごめんごめん。でもそんな叫ぶことないじゃん」
「何回も声をかけたり、揺さぶったりしたわよ。 でも起きなかったんだからしょうがないでしょ」
俺そんなに深く眠ってたんだ。 メイダがずっとすぐ近くにいて安心したからかな?
メイダに怒られはしたが、今日はメイダの動きを封じてたので、寝巻きが剥ぎ取られるなんて事は無かった。これからも抱きついて寝よ。
今日も同じように学校に行き、歴史以外は順調に受けれた。
「よくよく考えてみるとレイ君って変だよね」
「なんだぁ? 悪口か?」
昼休みの昼食中に、ネスがいきなり喧嘩を売ってきた。
「待って待って、悪口じゃないから。いやさ、ほとんどの獣人って勉強したり物事を覚えるのが嫌いって言われてるんだけど、レイ君は文句一つ言わないで勉強してるじゃん」
「たしかに……私も思ってた」
獣人ってそうなの? そうかも。村のみんなは言語を勉強するぐらいなら遊びたいって感じだったしな。
俺が勉強を我慢できるのは、元人間だからだと思う。どうやって返そうかな。
「俺も勉強が好きってわけじゃないけどね。魔法の組み合わせとか面白いって思ってるだけ」
「レイは魔法使えないのにか?」
「アル、それは獣人差別だ」
「はぁ?! なんでだよ!」
「今俺の心が傷ついたので獣人差別ですぅ」
「繊細すぎだろ!」
はぁ、俺も魔法とか使いてーよ。火の玉撃ちたいよ。せっかく異世界来たのに、1番の醍醐味の魔法が使えないなんて。
「身体強化魔法使えるからいいじゃない。私はレイの戦い方好きよ。力こそ正義って感じかして」
「私も……レイの動き好きだよ」
「僕もレイ君の戦闘はスタイリッシュでかっこいいと思うよ」
「ありがとなぁみんな。アル、これが民意だよ」
「いや俺別にレイのこと貶してるわけじゃないからな!」
ふん、俺が魔法使えないって小馬鹿にしてきたくせによく言うぜ。
昼食も終わり、またいつものように寝ようと思ったが、やりたいことがあるのを思い出した。
「ちょっと図書室行ってくる」
「俺とバスケしてくんないのか?」
「次はやるから」
「言ったな! 男に二言は無いからな」
アルのお誘いも断り、俺とメイダは図書室に向かった。何故かミライとネスも着いてきたが、俺が何するのか興味があるかららしい。調べ物するだけなんだけど。
図書室は前世のものとは比べ物にならないほど広く、宙に浮かんでいる本もあり、まさしくファンタジーで気分が高揚した。でもあの浮いてるのどうやって取るんだろうか。
「しっぽぶんぶん振ってどうしたのよ。図書室なんてなんの面白味もないわよ」
「いーや面白いね」
俺は早速、時事的な歴史な本か新聞がないか探した。
「あれー? ここら辺にあると思ったんだけどな。 ミライは覚えてる?」
「覚えてない……」
ネスとミライも案内人をするには知識が足りないようだ。受付らへんにも誰もいなかったしどうしよう。
俺らが迷っていると、向こうの本棚から知ってる匂いがした。
俺はすぐに走ってそこに向かい、本棚を整理している人に話しかけた。
「テカーリアじゃん! 何してんのここで」
「あっ、レイ……さん? 君? あなたこそ図書室で何してるんですか。1番無縁そうな感じなのに。あと図書室で大声出さないでください」
「普通に呼び捨てでいいよ。 何か時事的な情報を知れるものとか探してるんだよね。テカーリアは知らない?」
「私はここの司書ですよ。知らないわけないでしょう。案内するので着いてきてください」
司書って生徒でもなれんだ。
「ほらここにありますよ」
おいここさっき通り過ぎたとこじゃん。ネスとミライの方を向いたら、どちらも顔をそらして、俺と目を合わせようとしなかった。
こいつら………。
「じゃあ私はこれで」
「まあ待ち給へ。ここで会えたのも何かの縁だし、この内容教えてよ。親睦を深めるって意味でもさ」
「えぇ、なんで私がそんなこと……。あぁもうそんな悲しそうにしないでくれますか? 分かりましたよ少し教えてあげます」
俺の可哀想な子犬の演技が効いたみたいだな。ちなみにどんな風にしてるかというと、耳をぺたりと自信なさげに倒し、しっぽをだらんとさせるものだ。
みんなも真似してみような。
テカーリアに着いていくと、向かい合うように座れる席が置いてあるとこに来た。
「ここなら私語も許されてます。じゃあ説明するので座ってください」
「テカリン先生よろしくお願いしまーす」
「次その呼び方したら帰りますね」
「すいません」
テカリン先生の授業が始まった。
「これの内容は最近の世界情勢について書かれてます。ではまず私たちのオリテール国からいきましょう。この国は現在これといった動きは無いです。国内のことだと、メイダさんの前だと言いにくいですが、王族や貴族の振る舞いに非難の声がちょくちょく上がってたりしますね」
メイダがそれを聞いて嘲笑気味に笑った。ざまぁみろとでも思ってそうな笑いだ。
「テカーリア先生! 例えばどんな振る舞いが非難されてるんですか?」
「え〜〜っと、あなたの名前は?」
「ネスです」
「ネス君ですね。私もよくは知らないのですが、人を人のように扱わないなんて噂を聞いたことがあります」
人を人のように扱わないなら、獣人だったらどうなっちまうんだ。生ゴミ扱いとか? メイダの家族にはそんなに会いたくないな。
「じゃあ次は隣国についてですね。オリテール国と接している3ヶ国は、10年前の領土争いから平和協定を結んだので、現在の関係は良好です。私たちとはあまり関係ないですが、北側の諸国では魔石鉱山を巡っての冷戦状態が続いてるらしいですね」
じゃあオリテール国は戦争の心配はないわけだ。
よかったよかった。なんでかこういうの気になっちゃうんだよ。
「要約するとこのくらいです。もう少しで昼休みも終わるのでここまでにしときましょう」
「ありがとうございましたー!」
テカーリアが要約してくれなかったら、本を借りないと読みきれなかったと思うし助かった。
「なんかお礼したい。どうする? 俺のことモフっちゃう? 毛並みには自信あります」
胸を張る俺。そして横には私が生産者です顔をしたメイダ。
「自信ありげなとこ申し訳ないですが結構です。あぁでもそうですね。生徒会の仕事の報告は早めにしてください。今朝生徒会に昨日の依頼人がお礼に来て、貴方のことをたくさん褒めてましたよ」
その件で俺のこと少しは認めてくれたから、今日のテカーリアは俺に対して優しかったのかな?
「ではまたレイとメイダさんも生徒会で」
「バイバーイ」
まだ残るらしいテカーリアを置いて、俺たちは図書室から出た。
「あの人生徒会のテカーリアさんだよね? 厳格な人かと思ったけど、結構優しかったね」
「あれはツンデレやね」
「つんでれって何よ」
ツンデレって言葉この世界にはないらしい。
「いつもはそっけない感じだけど、たまに優しくなってくれる人を指す名称かな」
「あぁ、トゲマルのことね」
ト、トゲマル? なんだそのポケ●ンみたいな名前は。でも可愛いしそれでもいいや。




