第32話 説教
もうすぐで屋敷に着くという頃には、すっかり日は落ちて夜になっていた。
「帰るの遅くなっちゃったけど、ガロ怒ってるかな?」
「そんな気にしなくて大丈夫よ。 ガロが私に怒ることなんて滅多にないんだから」
「それならいっか」
俺はそれを聞いて安心したが、何やら屋敷の方向から騒がしい声が聞こえてくる。
よく耳を澄まして聞いてみると、拉致、捜索、などの言葉が聞こえてくる。
もしかしてメイダが攫われたと勘違いしてるのか?
「きゃっ! 何いきなり走り出してんのよ。 危ないでしょ」
俺におぶられているメイダに文句を言われたけど、これはしょうがない。今にも捜索隊が組まれるかもしれないからな。
全速力で門をくぐると、中庭に数人の騎士と、騎士を指揮しているガロがいた。
やっぱりメイダが拉致されてると思ってる!
「只今帰りました!」
「っ?! レイ! お嬢様! こんな夜遅くまでどこにいたんですか?! お怪我はございませんか?!」
「レイも私も別に怪我なんかしてないわよ。 何そんなに焦ってるのよ」
「焦りますよ! こんな時間まで帰ってこなかったことなんて今まで無かったじゃないですか!」
ガロは大袈裟だなぁ。 ちょっと遅くなっただけなのに。
「はぁ、とりあえずお風呂に入ってください。 話はその後談話室で聞きます」
門限なんてないのに、門限を破って親に怒られる前の気分だ……
風呂に入り、着替えてから俺とメイダはガロのいる談話室に向かった。
「さてお嬢様。 何をしてたのか聞かせてもらってもよろしいですか?」
「生徒会の仕事をしていただけよ。 レイがヴァイス地区で悪党どもをボコボコにしたのは、ガロに見せたかったわ。 あれは痛快だったわねー」
ヴァイス地区に入ったこと言って大丈夫か?
「ヴァイス地区?! あのヴァイス地区に入ったんですか?! 前からあそこは危険だから近づかないように言ってましたよね?」
「この通り私とレイは無事に帰って来たんだし良いじゃない」
「もう少しお嬢様は王女という自覚を待ってください。 お嬢様に何かあったら国の問題になります」
「あーもう分かったわよ」
その後もメイダへのお説教は続いた。
行動が一々制限されて王女様は大変ですなぁ。
「レイにも私は言っているぞ。他人事みたいな顔してるが、お嬢様の危険な行動を止めるのもレイの仕事だ。 護衛の自覚を持ってくれ」
いきなり矛先がこっちに向いてきた。俺も悪いことした気がしなくもないので、素直に謝る。
「すんません……」
「今回は何事も無かったのでこれぐらいにしときますが、これからは絶対に危険な場所には行かないようにしてください」
思ったより怒られてしまった。怒られたくはないので、これからはもう少し注意して動くとするか。
「それでは私は仕事があるので行きます。 夕食はもう少しでできるので待っていてください」
そう言うとガロはそそくさと談話室から出て行った。
「滅多に怒らないって話じゃ無かった?」
「私も小言をこんなに言われたのは初めてよ。 あんなに言うことないじゃない」
説教されて不貞腐れたメイダが、ガシッと俺の毛を掴んで乱暴にモフってきた。
「痛っ、触るならもうちょっと優しくして」
「飼い主の心を癒すのもペットの務めよ。私の気が済むまで我慢しなさい」
「うわひどい、そんなことペットにしたら嫌われちゃうよ?」
「じゃあレイは私のこと嫌いになる?」
「なるわけないが?」
「それならいいじゃない」
最初は痛いだけだったが、痛いのも気持ちいに変換されてきたので許します。これが痛気持ちいってやつ?
その後夕食を済まし、寝る時間となった。
だが俺にはやりたい事があるので、まだベッドには行かない。
「教科書なんて開いて何してるのよ。早く寝るわよ」
「歴史が全然覚えれないから復習しようかなって」
「そんなの覚えなくていいわよ。 どうせ戦争のことが大部分なんだから」
「まあそうなんだけどさ」
メイダの言ってることは間違ってない。この世界の戦争は、前世と比べたとしてもやたらと多かった。
最近まで続いていた戦争なんてザラにある。
今いるオリテール国は10年ほどしてないらしいが、逆に言えば10年前はやっていたということだ。
なので俺は歴史を覚えれないからなのもあるが、世界情勢を把握するために、歴史を復習しようと思っていた。
「オリテール国って今どんな感じ? 戦争とかしないよね?」
「私そういう政治的なこと興味ないから知らないわよ」
「そっすか」
やっぱり自分で調べるしかないか……
「今日はもういいや。詳しいことは明日学校で調べる」
「そうしなさい。私眠いから早く来て!」
「はーい」
呼ばれてベッドに入り、昨日のようにメイダを包み込む形で寝ようとしたら、
「ちょっと! それは一回だけって言ったでしょ。 今日は抱き枕になってもらうわよ」
「えー、それだとご主人様の匂い嗅ぎながら寝れないんですけどー」
「レイがこっち向いて寝ればいいじゃない」
「それもそうだな」
これぞまさしくwin-winってやつ?
メイダは俺を抱き枕にできるし、俺はメイダを嗅げる。完璧だ。
でも一つ欠点が見つかった。俺の手の置き所が難しい。どこに置こうか手を右往左往していたら、
「なにウネウネしてんのよ。 気になるからやめなさい」
「いや、手の置き場所どこにしようかなーって」
「レイも私を抱けばいいじゃない」
えっ、今俺誘われてる?
いやまあそんなわけないことは分かってます。
「いいの?」
「私としてはモフモフが増えるから良いわよ」
「それじゃあ遠慮なくー」
許可がおりたので、俺もメイダを抱いてみる。
腰細っ、女の子ってやっぱり小さいな。
メイダの顔もまじまじと見れる。まつ毛も長いし肌も白いし、ほんとに綺麗な顔してるよな。
いかんいかん、そんなことより嗅がないと。
クンクン、あぁ〜良い。
メイダを嗅ぐのに満足したら、俺は心地良い中で眠りについた。




