第30話 危険な仕事
ひと段落したところで、俺たちは親睦会を終えて食堂を後にした。
「帰ったらまた書類作業じゃーん。 もうちょっとここにいよーよぉ」
「駄目に決まってるじゃないですか。体育祭がもう少しで開催されること知ってますよね。 会場の確保や他校への告知、その他諸々まだ残ってるんですよ」
「まじだるーい」
前から考えてたけど、この世界の体育祭ってどんな感じだろ。 俺の前世みたいにワイワイ系なのだろうか。 選抜競技が魔獣討伐な時点で違う気がするけど。
「体育祭ってどんなことするの?」
「別に面白いものじゃないわよ」
「内容教えてもらわないと分かんないって」
「はぁ、面倒くさいわね。 それぐらい自分で調べなさい」
「えー」
面倒くさがりすぎるぞこの飼い主。 ちょっと説明してくれるだけでいいのに……。 ふんっ、明日アル達に聞くから別にいいし!
「体育祭の話か? レイは知らないと思うがうちの体育祭はすげーんだぜ」
メイダに聞くのを諦めていたら、体育祭という単語に引き寄せられたジャズが話しかけてきた。
「すごいってなにが?」
「すげーとこならたくさんあるが、1番は選抜競技だな。 毎年結構な人数がこれを見るために集まって、他校からも大人気なんだぜ。 生徒会に入ったなら選抜競技には絶対参加だから、レイも覚悟しとけよ」
まじ? メイダも出場しなきゃってこと? じゃああの人前に出るのが嫌なメイダは、競技に出る事を分かった上で俺と生徒会に入ってくれたのか。
そう思っていたが、メイダはその事を聞いて驚愕の表情で固まっている。 知らなかったんかい。
「私出たくないんだけど」
「俺がすぐに終わらしてご主人様の手は煩わせないから大丈夫だよ」
生徒会やっぱり抜けるとか言われないように、とりあえずフォローしておく。
そんな風に体育祭の話をしていたら、俺たちに1人の男子生徒がなにやら神妙な顔つきで話しかけて来た。
「さっきの食堂での話聞いてました。 僕の依頼受けてくれませんか?」
「急用だったりする? 違ったら生徒会室でゆっくり聞きたい」
「あ、はい。 急用じゃないので大丈夫です」
俺達は生徒会室に戻り、休憩兼客用のソファで話を聞くことになった。 他の生徒会のメンバーは俺とメイダに生徒を任せて、書類作業にすぐに戻っていた。
「早速なにをしてもらいたいのか教えて」
「そのぉ、僕の友達について調べて欲しいんです。 最近友達の様子がおかしくて、 前まで一緒に帰っていたのに、最近は何も言わずに暗い顔のまま1人で帰ってしまっていて……。 今日気になって隠れて後を追いかけていたら、あのヴァイス地区に入って行ったんです。 怖くなって今日は逃げてきました」
「ヴァイス地区って何? やばいとこ?」
「治安が悪くて良くない噂が絶えない場所ね。 オリテール国の犯罪組織がそこを根城にしてるっていう話もあるわ」
わーお、結構やばいじゃーん。 その友達絶対何かに巻き込まれてる。
「それってこの国の騎士とか冒険者に相談することじゃない? 学校の生徒でなんとかできる範囲じゃない気がするんだけど」
「騎士団には相談したんですけど、何故か断られたんです。 少額でこの依頼は受けられないって冒険者にも断られました……」
それで俺たちに依頼しにきたってことね。 面白そうだから受けてみたい。
「ケビン会長、この依頼受けても良い?」
「許可する」
会長からもすんなり許可がおりた。 危なそうな依頼だから止められると思ったんだけどな。 それだけ期待されてんのかな?
「そういうことだから友達探してきてあげる」
「本当ですか?! ありがとうございます。 危険だと思ったら逃げてくれても良いんですからね」
「安心しな。 そこらの人間に負けるつもりはないから。 ってことで友達の私物とヴァイス地区とやらへの案内よろしく」
「はい!」
今日はもう生徒会には帰ってこないと思うから、生徒会のみんなには別れを告げた。
そしてメイダにも言わなきゃいけないことがある。
「ご主人様は先に帰っといて。 王女がそんな治安が悪いところに行くのはまずいと思うし」
「嫌よ、絶対に着いて行くわ。 私は顔知られてないし大丈夫よ。 それにレイが守ってくれるでしょう?」
「うーん、ご主人様のことなら当然守るけども……。 トラブルに巻き込まれたらどうすの?」
「人に見つからないで行けばトラブルなんか起きないわよ。 隠密行動すればいいじゃない」
「そうかな? そうかも」
そんなてきとうな作戦を立てて、俺とメイダはヴァイス地区に向かった。
結構歩いたと思う。 何も言われてないが俺はヴァイス地区に近づいていると感じた。嫌な匂いがあたりに充満してきて、明らかに人通りが少なくなっているからだ。
「もう少しでヴァイス地区です。 言われた通り友達の私物持ってきました。 貸してくれている本ですがこれで大丈夫ですか?」
「全然大丈夫。 じゃあここら辺で君は待ってな。 友達が悪いことしてたらビンタして連れて来てあげるから」
「いや、その場合は騎士団に渡してくれていいんですけど………。 とりあえずお願いします! ほんとに危ないと思ったら帰ってきてもらって大丈夫ですから!」
「そんな心配しなくても大丈夫よ。 どうせここにはアホしかいないわよ」
「ふふ、俺の華麗なる隠密に気付ける奴なんてそうそういないぜ」
――数分後――
「そこの陰に隠れてるのは分かってるぞ! 今なら見逃してやるから出てきやがれ!」
わあ、面白いぐらい早く見つかった。
何故バレたし。




