第8話 神様は忙しい
それから、何人かの人間を観察して、ギンコと私は、家に帰ってきた。
「今日は、まだ少ないほうだったなー」
ギンコが、うーん、と背伸びをすると、耳がピコピコして、尻尾がピンっとなった。
ちょっとした動作が、実に可愛い。
また、顔が緩んでしまうが、それは仕方ないだろう。
ただ、顔を緩ませるたびに、
「部長さん、今、イケナイことを考えたでしょ!」
と言われて、尻尾で顔をペシン!とされてしまう。
ただ、このペシン!も、そんなに……いや、ぜんぜん痛くない。
なんなら、モフモフして気持ちいいくらいだ。
こんなことを言うと、次から、『ペシン!』がなくなりそうだから、今は黙っていよう。
「特に、お正月から大変なんだよ」
「ギンコを求めて、全国から来た人が、行列を作るんだ」
いやー、人気者は困るね!なんて言いながら、ギンコがスキップした。
その様子は、困るどころか、楽しんでいるようにも見えた。
それにしても、行列を作るほど参拝者が来るのか?
ここは、なかなか有名な神社だったらしい。
「そんなに来たら、願い事、どうなるんだ?」
素朴な疑問を口にする。
全部叶えるとなると、かなり大変だ。
「そうだねー、」
「詳しくは教えられないけど、まあ、『運次第』ってことかな」
「『運次第』?」
「そう。神社に来た人の中から、ランダムに叶えてあげるんだ。」
「あと、絶対に、じゃないけど、お賽銭を弾んでくれた人には、ちょっと心が動いちゃうかもね」
ギンコが、イタズラそうな笑みを見せた。
神様も現金なんだな……。
ちょっと、聞いてはいけないことを聞いてしまった気持ちになった。
私は、そんなにお賽銭は弾めない。
願いを叶えるには、運が来るまで待つしかないな。
「あと、今日みたいに、お百度参りしている人は、優先的に叶えてあげるんだ」
ああ、さっき、回数をメモしていたっけ。
小さな体で、意外と仕事熱心らしい。
「さて、午後のお仕事まで休憩ね。」
「ギンコはお昼寝するから、部長さんは好きにしていていいよ」
ギンコは、あくびをすると、部屋に入っていった。
なんだか、すっかり同居人になってしまったようだ。
行く当てもないから、ありがたいことではあるな。
――さて、私は何をしようか?




