第7話 ギンコは神様?
高い、高いぞ……!
ギンコに連れられてきたのは、クヌギの木の上だった。
ギンコが、私を抱えると、地上からここまでひとっ飛びしたのだ。
私は、いわゆる中年の、小太りな体型だ。
決して軽くないのに、ギンコは小さい体に似合わず、凄い力だった。
屋根くらいの高さだろうか?
なかなか高くて、私は足がガクガクしてきた。
「部長さん、高いの苦手?大丈夫、落ちても助けてあげるよ!」
ぜんぜん、フォローになっていない。
落ちること自体が、怖いじゃないか!
それに、なんでこんな所にいないといけないんだ?
「ギンコ、いったい何を……」
「しっ!静かにして!!」
ギンコの視線の先に、村人の姿。
階段を、ゆっくりと歩いている。
登り終えると、ひと息つき、ここから見える神社の鳥居をくぐった。
「ふむ。今日で、89回だな」
となりで、ギンコが呟いた。
「ギンコ、なんで回数を数えているんだ?」
不思議に思って聞くと、
「100回になったら、願いを叶えてあげないといけないだろ?だから、ちゃんと、数えないといけないんだ」
メモに、名前と数字を書きながら、当たり前のような顔をした。
「神様でもあるまいし、ギンコがなんでそんなことをしているんだ?」
すると、ギンコが、スッと立ち上がった。
「まだ、わかってなかったの?」
「我こそは、この神社の神、ギンコであるぞ!!」
この紋所が、目にはいらぬか!
といわんばかりの決めゼリフを、ギンコが放った。
「な、なに……?」
ギンコが動いたせいで、木が大きく揺れた。
バランスを崩した私は、そのまま、真っ逆さまに落ちてしまった。
あ、危ない!!
ボスッ!
大きな音とともに、草むらの中に着地する。
あれっ?
痛くないな……?
相当な衝撃を覚悟したけど、それは杞憂に終わった。
上を見ると、ギンコが、木の上で、ニヤニヤしている。
これは、術を使ったな?
おかげで痛くなかったし、傷一つないようだ。
一応、助けてくれた……のか?
「大丈夫ですか!?」
上を見上げていると、神社にお参りしていた人間が駆け寄ってきた。
「ありがとうございます。大丈夫ですよ」
視線を、村人に向けて答える。
「あんなに高いところから落ちて、無事だったのですね」
「あそこで、何をしていたんですか?」
村人が、ギンコがいる枝を指さした。
「あ、いや……」
まずいぞ、あそこにギンコがいる。
子どもと、おじさんで何をしていたのか、不審に思われてしまうぞ。
でも……。
村人は、ギンコのことを、何も言わない。
ギンコの存在に、気づいてないのか?
「いやね、朝なら、クワガタがいるかと思って。子どもに頼まれたんですよ」
会社員生活で培われた、極上の言い訳である。
私の必殺技に、村人は、すぐに納得した。
「親は大変ですよね。家も、子どもが小さい時は大変でした。ケガをしないように、気をつけてくださいね」
どこの世界も、親の苦労は変わらないらしい。
それじゃあ、と言って、村人は帰っていった。
村人は、最後までギンコには気づかなかったようだ。
ギンコは、木の上で、村人に向かって大きく手を振っている。
あれが見えないなんて、
まさか……
ギンコは、やっぱり『神様』なのか!?




