第3話 小生意気な狐っ子
「ここは、どこだ?だと」
狐っ子は、丸い目を、さらに丸くした。
「それよりも、先に、お前は誰なんだ?」
なんだか、偉そうな態度だな。
気にはなったけど、まあ、小さい子の言う事だ。
もし機会があれば、注意もしてあげたいが、まずは状況を把握したい。
「私は、㈱豊商事の部長で、木村というものだ。」
ついつい、いつものクセで、会社名と、役職まで名乗ってしまった。
狐っ子は、私が名乗ったことに、あまり興味がなさそうだった。
「ふーん。部長さんね。変な名前だけど、ま、いっか。」
「私は、ギンコ。ここは、ホウイ村ね」
ホウイ村?
思いっきり、日本の名前だった!!
じゃあ、なんでこの子は目が青いんだ?
あ、ハーフの子なのか?
色々、疑問に思ったけど、まあ、ここは異世界だろうな。
目の前の、ギンコの存在が、それを物語っている。
倒れたことは、覚えている。
私は、生きているのだろうか?
村、ということは、天国でもなさそうだし……。
グルグルと考えていると、ギンコが私に聞いてきた。
「で、部長さんは、いつまでここにいるつもり?」
ああ、そうか。
ここは、ギンコの家なんだっけ。
行く当てはないけれど、ここは出ていくしかないだろう。
「悪かったな。勝手に来て。おじさんは、もう出ていくよ」
ドアに手をかけると、服を後ろから引っ張られた。
ん?なんだ??
「べつにさ、今すぐ出ていけって言っているわけじゃないんだぞ」
「家は、ギンコしか住んでなくて、久しぶりのお客さんが、うれしいとか、思ってないし。」
下を向いたままのギンコ。
尻尾が、左右に、ユサユサと揺れている。
こ、これは、噂にきくツンデレなのかっ!?
強がってはいるけれど、本当は寂しかったのかもしれないな。
こんな時、世間の男たちは、どう対応しているんだろう?
経験のない私は、必死に言葉を絞り出した。
「じゃあ、もう少しいてもいいか?」
ああ、もっと気の利いた言葉はでてこないのか!?
「やり直し。」
と言われてもおかしくない。
けれど。
「仕方ないな、許してやるよ」
ギンコが、服から手を離した。
尻尾の揺れが止まり、ピン!と立っている。
やった!どうやら正解だったみたいだ。
女心はわからないな。
というか、そもそも女の子なのか?
◇
ギンコに、お茶を出してもらって、すっかりくつろぎモードになっていた。
これは、ほうじ茶っぽいな。
おやつに、鬼まんじゅうまでついてきた。
「これ、ギンコが作ったんだぞ」
ギンコが、得意げに胸を反らせた。
素朴な味がして、なかなか美味しい。
「おいしいな」
「あたりまえだ。ギンコが作ったんだからな」
自信満々なギンコ。
たしかに、美味しいけど、その自信はどこから来るんだろう。
お腹が満たされて、眠気に襲われていると、ギンコが、よいしょっと立ちあがった。
「そろそろ、仕事にいかないと」
「仕事?子供が仕事するのか?」
こちらの世界は、こんな子供に仕事をさせるのか?
驚いていると、
「誰が子供だって?私は、こう見えて200年生きているぞ。」
は?2、200年!?
冗談を言っているんだろうか?
マジマジとギンコを見るけど、やっぱり子供にしか見えない。
長生きで浮かんだのは、魔法使いだ。
もっと、シワとかあるんじゃないのか?
あ、でも、毛は銀色か……。
200歳にしては、フワフワのモフモフだったよな?
すると、
ぺしん!
本日二度目の、尻尾パンチ?がお見舞いされた。
「また、イケナイことを考えていたでしょ!!」
プンスカと尻尾をブンブンさせるギンコ。
か、かわいい……、じゃなかった、
イケナイことなんて、断じて考えてないぞ!!
誤解がとけないまま、
「ほら、部長さんも来るの!」
ギンコに手を引っ張られて、外にでることになった。
え、一緒に行くのか?
せっかく、いい感じに眠たくなってきたのに……。
しぶしぶと、私は立ち上がった。




