第16話 私が悪い
――静田くんが、社内で倒れていた。
そして、そのまま目を覚まさない。
過労が原因だと診断されたけど、なぜ目を覚まさないのか、医者もわからないらしい。
……私が、入院したせいだ。
私の仕事まで、一手に引き受けていたのだろう。
真面目な静田くんのことだ。
きっと他の人に頼らず、黙々と頑張っていたに違いない。
私は、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
電話を切り、うなだれる私に、妻が声をかけた。
「話の内容、聞こえちゃったけど……、お父さん、自分が悪いって思っているでしょう?」
私は、顔を上げることができずにいた。
私が倒れなければ、静田くんが過労になることはなかったんだ。
考えたくないが、静田くんがこのまま目を覚まさなかったら……。
そんな最悪の事態になったら、どうすればいいんだ?
「お父さんが倒れたのは、お酒を飲みすぎていたのもあるけど、仕事も大変だったんでしょう?」
「お父さんだって、好きで入院したわけじゃない。病気は、誰にでもあり得ることなのよ。そんなに、自分を責めないで」
確かに、妻の言うとおりだった。
私だって、好きで病気になったわけじゃない。
でも、どうしても静田くんの疲労は、私のせいだと思ってしまう。
「それは、そうかもしれないけど……」
歯切れの悪い言葉しかでない。
そんな私の背中を、妻がバシン!と思いっきり叩いた。
「痛っ!私は病人だったんだぞ!?」
抗議の声は、サラリと無視された。
「なに、ショボショボしてるのよ!」
「さっさと退院して、会社にいけばいいのよ!」
ずいぶん乱暴な言い方だ。
だけど、妻が私を元気づけようとしていることはわかった。
――そうだな、いつまでも落ち込んではいられないな。
静田くんが入院した今、業務の指示を出せる人間がいない。
私の頭は、スッと仕事モードに切り替わった。
「そうだな、ここは木村部長が早急に出勤しないとな!」




