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第15話 不思議なこと


なんだか、体がとても重たい。


とても長い夢を見ていたような気がするが………??


ボーッとしていると、主治医が、回診にやってきた。


「木村さん、お目覚めになりましたか?」


「はい、とてもよく眠っていた気がします。」


私の感覚では、一週間ぶりに目覚めたような感じだった。


だけど、主治医の態度は、いつもと変わらない。


おかしいな?私は、普通に、昨日寝て起きたのか??


不思議に思っていると、主治医は、眼鏡を指で押し上げ、パソコンを見た。


「木村さん、検査結果が出ましたよ」


その言葉に、一気に緊張する。


「……で、どうでしたか??」


主治医は、パソコンの画面をまじまじと見ている。


ああ、なにか悪い結果が出たに違いない。


勝手に決めつけていると、主治医は、思いがけないことを言った。


「それがですね、不思議なんですよ。」


「不思議??」


「はい。木村さんが、倒れて運ばれてきた時の画像を見ると、腹部に影があったんです。」

「で、昨日改めてCTを撮ってみたのですが、どこを探しても、影が見当たらないのですよ」


「なんだって!?」


そんな不思議なことがあるのだろうか?


私は、確かに猛烈な腹痛に襲われて、病院に運ばれたのだ。


「ごく稀に、こういったこともあるのですが、やはり、とても不思議ですね。」

「あとは血液検査をして、異常がなかったら、もう退院していいですよ」


信じられない。


まるで、キツネにつままれたようだ。


ん?


キツネ?


なぜか、『キツネ』という言葉が頭に引っかかった。


思い出せそうで、思い出せない。


なんとも、もどかしい感じだった。


◇


その後の、血液検査も問題なく、私は早期退院することが決まった。


「お父さん、良かったね!」

「手術しなくていいなんて、奇跡だね」


妻と、娘が口々に言う。


「まあ、私の日ごろの行いがいいからだな」


ふん!と胸をそらして、得意げになった。

妻と娘が、苦笑いしている。


「でも、本当に心配していたんだよ。お母さんなんて、神社にお百度参りしよう、なんて言い出すし」


「結局、一回も行かなかったけどね」

妻が、フフッと笑った。


そんなに、心配してくれていたのか。

普段は、素っ気ない態度の娘も、お見舞いに来てくれて、なんだか心が暖かくなった。


でも…、


『お百度参り』と聞いて、また何か引っかかった。


いったい何だ?


気になるけど、思い出せなくてムズムズする。


「お父さん、会社に連絡した?」


おっと、そうだった。

妻はよく気がつくな。

早期退院することを、会社に連絡しないと。


さっそく会社に電話しようと、携帯を手に取った。


すると、着信音が鳴った。


表示を見ると、会社の永瀬くんだった。


これは、良いタイミングだ。


周りに人がいないことを確認すると、通話ボタンを押す。


「はい、木村です」


「部長、今いいですか?」


永瀬くんの焦った声がする。

その様子に、胸騒ぎがした。


「どうした、何かあったのか?」


永瀬くんが、震える声で言った。


「部長、大変です!静田課長が倒れました!」


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