第11話 兵十の家
あっという間に、村のはずれにある、兵十の家にたどり着いた。
私は、ギンコから教わった段取りを頭で反芻する。
いける、大丈夫だ……。
自分にいい聞かせる。
握りしめた手は、汗でびっしょりだった。
そこへ、ゴンがトコトコと歩いてきた。
ギンコと、私は、その後ろから気づかれないようについていった。
ゴンが、慣れた様子で裏口から家へ入ろうとする。
――今だ!
私は、勢いよく、ゴンをドンッ!と押した。
小さなゴンの体が、コロコロ転がる。
「え?」
ゴンの声が聞こえた。
「誰だ、お前は!?」
兵十と思われる人の声が響く。
と、同時に火縄銃が火を吹いた。
――ドンッ!!
強い衝撃が、腹部を襲った。
「くっ!」
鋭い痛みが走り、
力が抜けて、その場に膝をついた。
兵十は、呆然としているようだった。
無理もない。
見たことのない人を撃ってしまったのだから。
「おじさん!?」
ゴンが、私にかけよってきた。
ゴンが持ってきた栗が、土間に散らばる。
「ゴン、お前だったのか……」
兵十が、驚いたようにゴンを見た。
ああ、ゴンは助かったんだ……。
「おじさん、どうして……」
ゴンの目から、ポロポロ涙がこぼれた。
キツネが涙を流すなんて、初めて知った。
ゴン、そんなに悲しまなくていいんだぞ……。
可愛いゴンの、フサフサの尻尾が、細かく揺れるのが見えた。
そして、ギンコが私の顔をペロペロと舐める感触がした。
まるで、私を労ってくれているようだった。
私は、やり遂げたぞ……。
ここで、私の意識は途絶えた――。
※本作の一部に、新美南吉さんの『ごんぎつね』をモチーフ・参考として使用しています。
※ここまで、読んでいただきありがとうございます。
諸事情により、しばらくお休みをいただきます。
すみませんが、よろしくお願いいたします。




