第10話 嫌な予感
午後からは、昨日と同じくキツネたちに食料を渡す仕事だった。
「はい、どうぞ」
茶色のモフモフに囲まれながら、手際よく、どんどん渡していく。
たまに、毛が舞って、鼻がムズムズする。
だけど、そんなことは気にならないくらい、モフモフのキツネたちは可愛かった。
「あ、おじさん、今日もいる!」
屈託のない声は、子ぎつねのゴンだ。
「ああ、ゴンか。おじさん、頑張っているだろう?」
ゴンに渡す食料を、袋に入れながら答える。
ゴンは、太めの茶色の尻尾を、フリフリさせた。
「うん!おじさん頑張ってるね!」
「あたしも頑張るよー。今から、兵十に、食料を持っていくんだ!」
「そっか、エライな。」
まとめた食料を渡そうとして、ハッとした。
今、「兵十」って言ったか?
さっき読んだ、『ごんぎつね』も、兵十が出てきた。
まさか、まさかな?
「おじさん、どうかした?」
ゴンが、心配そうに見つめてくる。
もし、あの本の通りになってしまったら、
――こんないい子が、あんなめに遭ってしまうのか!?
想像すると、胸が締め付けられる。
平静を装いながらも、恐る恐るゴンに聞いてみた。
「ゴンは、なんで兵十に配達するんだい?」
すると、ゴンは、バツが悪そうに、
「あたしね、イタズラが好きで、兵十のとったウナギを逃がしちゃったの」
「そしたら、そのウナギは、病気のおっかさんに食べさせる物だったみたいで……」
「だから、お詫びに、食料を届けているの。もう、イタズラしないよ!」
なんてことだ。
『ごんぎつね』そのままじゃないか。
「ゴンは、何回くらい、食料を届けたんだい?」
本の内容を思いだしながら、何気なく聞いてみる。
「えっと、今日で四回目かな?」
「3日坊主にならなかったの。エライでしょ」
ゴンが、得意気に尻尾をパタパタさせた。
――今日で、4回目?
あの本で、4回目は……。
私は、サ――っと血の気が引くのを感じた。




