第2話-2
第2話-2
借り物の力で成した功績の見返りを信じると言うのは、僕からすればとても難しい事だった。抑々の話『道を歩いていたら拳大の隕石が頭上に落ちてきた』ような確率で無作為に、理不尽に人を徴用するような自称女神の弄する言を信じろと言う方がどだい無理な話なわけで。『約束通りに与えられるかが不確かな反対給付であるならば、強奪するのも已む無しだろう』と、割と早い段階からそれを意識して旅をしていた気がする。
『何か良い手は、せめてその手掛かりは無いか』と向こうで見聞き経験した事の全てを総動員して夜毎に悩み抜いた。結果として全く皮肉な事ではあるけれど、僕にそのヒントを与えてくれたのも自称女神の発した言葉であった。
『魔王は私が作った世界のものとは異なる理で生み出されていて、私に与えられた権能の力が及ばず…』
だから異なる世界から召喚した勇者に更に異なる理の力を持たせて此れを討つ。あの阿婆擦れが宣った世界安定の策とやらがそのようなものだったと記憶している。
あの女の理不尽が及ばない力―――お誂え向きじゃあないか
―――
「…と、まぁそんな訳でこいつらの王様の力をそっくり頂いてきたんだけどさ」
「"今後はそれを取り返しにちょくちょくこう言う手合いが来るかも"、か…先に言っといてくれよ、そう言う事は」
廃ビルに置き去りにされていた古びた長椅子に並んで腰掛けながら彼と言葉を交わす。視線の先には僕の能力で簀巻きにされた魔王軍の部隊長らしき男が転がっている。
「誰の能力だと…!貴さm「はい黙るー」」
指先を軽く振って拘束を口元まで延長する。
「いやぁ、基本的に血の気が多くて言葉より先に拳が出るタイプの雑な連中だからさ。『乗り込んでくるにしても何かしら分かりやすい予兆が有るだろう』と踏んでたんだ」
「そうなのか?この人に限ってはわりあい話せる印象だったけど」
「抑々そう言う人選をしてくるのが超意外、重ねて言えば正面からじゃなくて幻惑魔法の搦手で人質を取ろうとするなんて完全に予想外だったよ。君にかけておいたカウンター型の魔法も、直接的な攻撃じゃなかったから反応しなかったみたいだね」
「知らん間に人に物騒なもん仕込むくらいだったら尚更先に説明しとけや…」
―――
「さて…じゃあサクッと始末をつけてデート再開しよっか」
事も無げに言い放った彼は古びたベンチを軋ませながら立ち上がった。
「厳密にはまだ始まってもねぇけど…って言うか、始末ってどうすんのさ」
口にしながら(あぁ、余計な問いだったかも知れない)と後悔した。露骨な表現を極力避けての言い回しだろう事は明白だったと言うのに。
「まぁ…穏便には"向こうに送り返す"って方法も有るけど、『搦手なら隙が有るかも』なんて情報を持って帰られるのもなぁ…」
「良いんじゃないか?実際には指一本触れられてすらいないし。ついでに言うなら、俺は今日は機嫌が良くってな」
…正直に白状すると、今の言葉の頭には『もうそんな事はしなくても』、末尾には『だからもう、君が手を汚す悲しみで私の機嫌を損ねないで』と胸の内で付け加えていた。そしてそれは、きっと彼ならば寸分の相違なく汲み取るだろうと言う信頼と打算をも多分に含んでいたのだった。




