↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
怪異管理局録 〜人と怪異のあわいにて〜  作者: えちだん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
6/11

常世侵食(エピローグ)

 常世侵食が治った後、マンション内は多少荒れていたものの、間取りや家具などは元の位置に戻っており、ほとんどの人達は常世侵食前の場所に戻っていた。

 一部の人間はマンションの外や屋上に何故か放り出されていたが死傷者や行方不明者は一人もいない。

 ずんべら坊にされた人物も元の姿に戻っており、気絶した状態の所を救急隊達に保護された。


 深山仁は後遺症は残らないものの、怪我の具合は悪く、病院で一週間ほど入院する事が決まった。

 本来であれば入院をしない選択肢があり、深山仁は最初自宅で療養しようとしたのだが、賀茂係長が無理を言って深山仁を入院させたのだ。


 入院後、一緒に白百合ハイツに突入した怪異管理局の同僚達、土谷、宮本、葉隠の三名がお見舞いに来た。

 三人は深山仁の功績を褒め称えていたが、途中から宮本と葉隠の両名は深山仁の脚を引っ張ったとして土谷を詰り始める。

 深山仁はそんな土谷を庇うように間に入り、気を揉んだ。

 彼ら三人は深山仁より年齢が一回り歳下で、深山仁とは比べようもなく気力に満ちているように感じる。

 そんな若者と関わり、深山仁は疲労感を覚える。


 話を聞いていると、白百合ハイツ突入後、逸れた宮本と葉隠の両名は中で救助活動をしていたらしい。

 二人が土谷を叱責するのは、二人が最後までずんべら坊に乗っ取られず生存した事も理由の一つにあるのだろう。

 しかし、それは些細な事で、大部分は土谷のことを心配しての事だというのが言葉の端々から伝わってくる。

 当の土谷は反論しながら、二人に心配をかけたことは理解しているらしく、どこか居心地が悪そうにしていた。

 そんな若い三人の友情を生暖かく見守っている自分に気づき、歳を感じずにはいられなかった。


 別の日には朝倉結衣がお見舞いに来てくれた。

 朝倉結衣は自分に取り憑いている髪鬼と協力して人助けをしようとしたが上手くいかずずんべら坊に捕まってしまったらしい。

 朝倉結衣に詳しく話を聞くと、ローブ姿のずんべら坊は霊的な素養があるものを優先的に集めて儀式の生贄としていることを自慢げに語っていた事を深山仁は聞かされる。

 朝倉結衣はずんべら坊に捕まる前に中々の大立ち回りをしており、その結果によって何人もの人が救われていた事を深山仁は知る。

 そんな行いを自慢げに語る朝倉結衣と、あのような行動は推奨されるべきでは無いと、朝倉結衣の事を終始心配する髪鬼と話を交えて、あの日の出来事を語り合った。

 あの日、髪鬼は傷つき暫く目覚めなかったが、数日療養する事ですっかり元気を取り戻したようだった。

 二人は姉妹のように戯れ合い、そこに深山仁を巻き込んでから存分に騒ぐと満足したのかその日は帰って行ったのだった。


 次の日には賀茂小夜が態々お見舞いにやってきた。

 常世侵食の後始末で忙しい中来てくれたのだろうと深山仁は理解し、改まった態度で彼女にお礼を言う。

 しかし、深山仁の気遣いは賀茂小夜には届かず、寧ろ怪我の容態が深刻なのではと心配させる結果になってしまった。

 深山仁は誤解を解くために今度は戯けてみると、賀茂小夜の怒りを買い、退院後の仕事の割り振られる量が増やされてしまうことになってしまった。

 そんな二人の日常的なやり取りを一通り終えると二人で顔を見合わせてお互いに笑い合った。

 常世侵食が終わってもなお張り詰めていた賀茂小夜の心は、この時になってようやく日常へと戻ってきたのだ。。

 その後は今回の常世侵食による影響や、これからの業務について話をして彼女は病室を後にする。

 立ち去る時、賀茂小夜は病室の出入り口で手を振り別れを告げる。

 普段の彼女ならそのようなジェスチャーはしないのだが、無意識の行動だったのだろう。

 深山仁は苦笑しながら手を振りかえす。

 そんな深山仁を見た賀茂小夜が自分が思ったよりも浮かれている事に気づき、少しだけ赤面して病室を後にした。


 病室の外を見ると夕焼けがビルの隙間に隠れようとしており、病室を赤く染める。

 夕日はゆっくりと街並みの向こうへ沈んでいく。

 普段は仕事をサボることしか考えていないはずなのに、何故か怪異管理局のオフィスが無性に恋しかった。

 夕日はユラユラと揺らめいており、隠れ切るまでの間、深山仁はいつまでも窓の外を眺めていたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。