第二話 王との謁見と他の勇者達
なにやら、話す声に目が覚める。
「おお、勇者様方、ようこそいらっしゃいました!」
目の前に、中世ヨーロッパの兵士のような人物が数人と魔術師のような格好をした人がひとりいた。
「え?」
俺以外にも何人かの人が驚いたように思わず声を上げる。
声のしたほうを振り返ると、俺以外にも二人の男と女がいる。
どうやら、俺と同じく、混乱しているようだ。
俺は、なんでこんな所にいるんだ? 俺は、自分の部屋にいたはず……
というか、なんで俺はこんな茶のローブを着て、古びた本をもっているのだろう?
見覚えのないところだ。赤い絨毯が敷かれている。壁は石造りのようで、まるで西洋の城のようだ。というかここ、本当にどこかの城じゃね?というか絶対、そうだろ。
そんなことを考えていると、また声がした。
「勇者様方、いま、この世界は魔王の復活により、危機に陥っています。どうかお助けください!」
「ええっ!」
口を揃えるようにして、同時に驚く俺たち。
「それは、どういう……?」
見た感じ、高二ぐらいの整った顔立ちの槍を持った少年が尋ねる。
「はい、二年前、五百年ほどまえに先代の勇者によって倒されたはずの魔王が突如として蘇りました。当初は、この王国の冒険者たちや軍を投入いたしまして、出没する魔物どもを倒したり、魔王城の攻撃を試みたりしたのですが……ことごとく魔王城にてみな倒れ、魔物の攻撃も激しくなりました。それゆえ、世界の危機に瀕した時に使うべしと古来から伝わる勇者を召喚する儀式を行った次第であります……」
「勇者様方、どうか、どうか、お力をお貸しください!」
男たちが頭をさげる。
「詳しい話は国王がいたします。もちろん、報酬も満足いただける量をご用意いたします」
「どうか、お話だけでも……どうぞこちらへ……」
兵士と魔術師のような男たちが奥の重そうな木の扉を開ける。
すると中には、国王らしき爺さんが玉座に座っていた。まわりには大臣らしき男たちもいる。
「わしがこの国、オルラン王国の王、ブルゴー・フェリペ15世である。勇者殿ら、ご苦労であった……さきほど、話は聞いておるのだろうが…単刀直入に聞く。我が王国、この世界を救ってはくれまいか?」
しかし、急な話だ。突然、異世界に召還されて世界を救ってくれなんて……どこかで読んだような話だなー
「うーん。まあ、こうなった以上仕方がありません。僕にできることなら力を貸しましょう」
さっきの槍を持った少年が答える。
「報酬も払ってくれるってことだし、俺もいっちょやるか!」
「私も手伝います!」
剣を持った男と弓を持った女も答える。
みんな、嬉しそうだ。まあ、こんなこと、小説でしかありえないと思っていたことだし、興奮しているに違いない。
最後は俺か。まあ、引きこもりから世界を救う英雄になれるわけだし、ここで人生をやり直そう。
「じゃあ、俺もやります」
俺も答えた。
「おお、ありがたい。それでは、まず自己紹介をしてくれぬか?」
王が言う。
「僕は、山口翔。17歳の高校生です」
少年が答える。髪は、黒の短髪。顔だちは見事なほど整っている。かっこいいというよりかは、美しいと表現したほうがいいだろう。だが、俺は何か不吉なものを感じた。俺をいじめていた奴らと同じような雰囲気があるような気がする。
「俺は、清水勇。21歳の大学生だ。よろしく!」
剣を持った男も答える。勇という名前そのもののようなイメージがする。頼りになるあんちゃんといった感じだ。髪は、翔と同じく黒の短髪。顔もそう悪くはない。
「私は、橋本恵理。18歳、高校生です」
弓を持った女が答える。特に強い印象は残らないようなおとなしい女の子のようだが、意志は強そうに感じる。髪は、少し茶がかかったような黒のポニーテール。
「俺は、北川涼一。22歳です。えーと職業は……特にないです」
俺も最後に答える。引きこもりだということは隠したほうがよかったかなと思ったが何も考えつかなかったので、正直に答えてしまった。まずかったかな?
「うむ、ショウ殿にイサム殿、エリ殿に、リョウイチ殿か」
王や大臣たちの俺に対する目線が少し冷めた気がするのは気のせいだろうか?
「ところで、王様。俺たちは元の世界には戻れるのか?」
勇が尋ねる。
「うむ、勇者殿らが魔王を倒した暁には、元いた世界には戻れると伝承では聞いておる」
王が返答する。
「よし」「やったぜ」「安心しました」
それぞれが安堵の表情を浮かべる。みんな、気がかりなことがあるのだろうか。俺は……そんなものはないのだが。羨ましいもんだよ、まったく。
「それでは、わしがさらに詳しい説明をしよう」
王が話し出す。要約すると……先ほど兵士に聞かされたとおり、魔王が蘇り、このオルラン王国や世界は危機に瀕している。そのため古来から伝わる儀式で剣、槍、弓、魔術の四人の勇者を召喚したとのことである。また、勇者はそれぞれ別行動をしなければならないらしい。これは、五百年前、魔王を倒した勇者が言い残したことらしく絶対的なものだそうだ。なぜかはわからないが。この世界の言葉や文字はなぜかわかるようである。言い伝えによれば、先代勇者もそうであったとか。それと、この世界では自分のステータスは、頭の中で見たいと念じればいつでも見られるらしい。
今気づいたのだが、これって「四勇者救世伝」にそっくりじゃないか?剣、槍、弓の勇者はもういるっぽいし、ということは、俺は魔術の勇者か。まあ、結構よさそうじゃね?
「それでは、スタータスを是非確認してもらいたい」
王が続けて言う。
ふーん、じゃあやってみるかと頭の中で自分のステータスを見たいと念じると、突然目の前に、シュッという音と同時にに透明なアクリル板のようなものが出てきた。
「へえ」「おお」「なるほどー」
他の三人もステータスを確認し始めたようだ。俺も早く確認しよう。
名前:北川涼一
職種:学術の勇者
えっ? 俺は仰天した。魔術の勇者じゃなくて学術? え、なんで学術?
「あの、王様。俺の職種が学術の勇者になってるんですが……」
たまらず、俺が王様に尋ねる。
突然、大臣たちがざわめきだす。やっぱりなんかやばかったのか?
「なに? リョウイチ殿、それは本当か?」
「ええ、はい。本当です」
王様が頭を抱える。んん、もしかしてとさらにステータスを見ると、
Lv:1
HP:10
MP:0
攻撃力:1
防御力:1
魔法攻撃力:0
魔法防御力:1
素早さ:1
スキル:探求心
魔法:なし
えっ、えええ。おい、いくらなんでこれはないだろ。俺は絶句してしまった。
「リョウイチ殿、申し訳ない!」
王様が突然頭を下げる。
「魔術の勇者としてリョウイチ殿を召還したはずが、何かの手違いで学術の勇者として召還されてしまったようだ」
「いまから職種を変更することはできないんですか!?」
たまらないと俺も食い下がる。
「いや、それをしたいのはやまやまなのだが、出来んのだ。できる限りのことはする。どうかこのまま頑張ってくれぬか?」
本当に申し訳なさそうな顔をしている王様。
「じゃあ、なんかこう、学術の勇者だけが出来ることとか他の職種より優れているところとかないんですか?」
あきらめきれず、俺はもう一度尋ねた。
「う……うむ、魔術師しか読めぬ魔術書を長い時間をかければ読めるということと、レベルアップが早い。こんなところであろうか?しかし、いかんせん、基礎能力が違うゆえ……」
俺は、言葉を失った。そんな馬鹿な。詰んだ、詰んだあああ。
「とりあえず、明日まで、リョウイチ殿の仲間はどうにか用意する。今日はとりあえず、部屋で休んでいてくだされ」
追い出されるようにして、俺は部屋を出た。振り返ると、翔が哀れみと蔑みの混じったような目で一瞬見たような気がした。
その日は、俺は用意された部屋に入るとベットに倒れこみ、現実から逃避するように眠りについた。




