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俺の煽り能力

 期末考査も終わった学校は、既に短縮授業に入っているため、昼に差し掛かる頃には既に放課後である。

 七海は杉崎と海に来てゆく為の水着を買いに行くと駅前のでデパートへと旅立っていった。去年買ったやつが有るから別にいいだろうに、身体のほうだって大して成長もしてないだろうしな。

 まあ、七海は七海で色いろあるんだろうから深くは詮索しないでおいた。地雷踏み抜いちゃったら面倒だしね。

 そんなわけで今日は慎平と二人きりの下校となっている。そんな俺の脳内に、男子二人の下校を描写することに何の需要はあるのだろうか?等と訳の分からないモノローグが入った気がしたが、そんなの関係ない。需要があるとかないとかで俺の日常を削られてたまるか。

 しかしもうすぐ夏休みとは言えせっかくの短縮授業、そのまま直帰するのも勿体ないお化けが出そうな気がした。別にさっきのモノローグ云々を気にしたわけではない。

「慎平、今日暇ならどこか寄ってかねえか?」

 横を歩く慎平に声を掛ける。

「何処かってどこにだよ?」

 問いかけに問いかけで返すんじゃありません。しかしまあ、俺も深く考えて言った言葉ではないので慎平の問いかけには考えてしまう。

「うーん、お前どこか行きたいところとか無い?」

「いや、お前が言い出したんだからお前が決めろよ」

 道理である。

「映画」

 丁度みたい映画があったのだ。

「男二人でか?」

 素気ない返事だな。ならばこれはどうだ?

「カラオケ」

 二人で歌い倒そうではないか。

「いや、だから……。男二人でカラオケって」

 そうか、つまり君は男二人でカラオケに行くのは恥ずかしいと、初な奴め。

「満喫」

 ならば別々の個室に篭って思い思いの時間を過ごそうでは無いか。

「一人で行け」

 どうしろっちゅうねん。

「我儘なやつだ」

 こっちが、一生懸命考えてるのにその釣れない返事はなんだ?悲しくなってくるだろ。

「お前のチョイスが微妙すぎるんだよ。お前、デートで牛丼屋とか平気で入りそうだよな」

 失礼な奴め。

「生憎そんな事を想定して物事を考えたことはない」

「いや考えろよ!お前まだ17だろうが」

「妄想の世界に逃げ込むつもりはない」

 今を取り巻く俺の環境が俺の全てである。そこから目をそらし、都合のいい妄想に直走るのを俺はよしとしない。

「それに、俺だってデートぐらいしたことあるぞ」

「な、なんだってー?」

 俺の発言がよほど意外だったのか。慎平は目を丸くしてこちらを見ている。ふふん、悔しいか。自分と足並みを揃えていたと思っていた幼馴染が自分より一つ先を行っている事がそんなに悔しいか。

「念の為に聞くが、それは3次元に存在する女の子だろ?」

 愚問だ。

「へ?そんなわけないじゃん。ギャルゲーの登場人物に決まってんだろ」

 この世界自体がギャルゲー世界なわけだが、この場合はこの世界で調達したギャルゲーの登場人物である。ギャルゲーの中でもギャルゲーとは我ながら業が深いと思う。

「お前、さっき自分で言った事覚えてる。妄想の世界に逃げ込むなよ」

「ふん、これだから童貞は……」

 吐き捨てるように言ってやった。ついでに道端に唾でも吐き捨てたかったが思いとどまった。誰かに怒られたら怖いもん。

「いや、お前に言われたくないんだけど、殴っていいかな?」

 うん、想定してた通りの反応だね。そんな君が大好きです。

「誰が、妄想に逃げ込むものか。彼女たちは確かに画面の向こうに実在するバーチャルな女の子だ」

「人それをフィクションと言う。うん鉄心、一回俺と一緒に病院に行こうか」

 ……俺は正常だ。

 結局、行き先は慎平の考案で最近オープンしたゲームセンターに行こうと言う事になった。

 はじめからお前に任せれば、俺の汚い業など開示しなくてすんだんだよ。これで俺のファンが減ったらお前のせいだからな。しかしこいつ、七海がいなくなると急にツッコミの切れ味が増すんだよな。その切れ味たるや正に抜身の刀である。お陰で、こちらも調子に乗ってボケ倒してしまう辺り。お互い様といえばお互い様なのだが。そうなると七海は慎平の抑え役になるのかな?さすが、ヒロインと主人公、補い合ってるね。覚えておくがいい、七海は慎平の鞘だということを。でも、七海に対してもう少しツッコんであげてもいいのよ。

 件のゲーセンは先に七海達が向かったであろう駅に近いところにある。むしろ殆ど駅前である。

 様々な飲食店や小売店の建ち並ぶ繁華街を行き来する。者達の中には学生服を来た人間も意外に多い。

 この辺りの高校は殆ど短縮授業だろうから当然なんだろうけどね。

 しかし、俺も人のことは言えないが夏休みが近いからか浮かれてる連中の多いこと。

 本当、この様子を見てると夏休みに羽目を外しすぎる様な輩もでてくるよな。

 まあ、既に羽目を外し始めてる連中も居るけどな。

「あれって」

 俺の視線の先で起こっている事態に慎平も気がついたらしい。

 ナンパが行われていた。何人かの男が、二人の女子生徒を取り囲んで居る。ナンパにしても悪質だ。しかし、あんなの本当に居るんだな。都市伝説かと思ってた。殆ど犯罪と言っていいくらいの強引さで、一人の女子生徒の腕を掴んでグイグイ引っ張っていこうとしている。それを見ている方の女生徒はオロオロとして周囲を見回していた。

「おい、あれやばいんじゃないか?」

 慎平は今にも駈け出して行きそうな顔をしていた。そうだろうね君はそういう子だよね。まあ、本当にやばい感じだったら俺も手伝うのはやぶさかではない。しかし、引っ張られて行こうとしてる女子生徒を見てみなさい。

「やばいって。どっちがだ?」

「どっちがってお前、あれ?あれって」

 危機感の無い俺の問いかけに始めこそ苛立った慎平だったが、引っ張られている女生徒の姿を確認した瞬間、俺の言った言葉の意味を理解したのだろう。

「口で優しく言っている内に聞いていればいいものを……」

 自分の腕を掴む男の手を鬱陶しそうに眺める女生徒は最近知り合った。戦闘大好き少女だった。

「あれって、西岡さん?」

 慎平の問いかけに大仰に頷く。

「どうする?行っとく?」

 そんな俺の問いかけに、慎平は難しい問題を考える様な表情を浮かべる。うん、考えちゃうよね。

 そんな雑談をしている間も時間は流れている。俺達が傍観者に徹してる間に西岡はさっさと掴まれていた腕を引剥がしていた。ご丁寧に関節まで極めながら。

「いででで」

 痛がる男をそのまま仲間の元へと押しやった。

「これが最後。ナンパなら他をあたってちょうだい」

 おお、あいつ意外に我慢強いな。てっきりそのままボコボコにするのかと思ってた。

「このアマ優しくしてればつけ上がりやがって」

 いやいや、君達の言ったことはまんま西岡の台詞だよ。悪いことは言わない。手遅れになる前にお家に帰りなさい。 などという俺の思いは通じなかったようだ。いきり立つナンパ男達。もう俺知らない。

「所で、さっきからそこで見ているのは鋼君と御剣かしら」

 事の次第を見守っていた俺達二人の存在に、何時から気づいていたのか。西岡に話しかけられてしまった。

「一応私達、絡まれてるんだけど、指を咥えて見ててもいいのかしら?」

 え、なに?この子僕達を巻き揉むつもりですか?それならこっちも抵抗させていただきますが、よろしいか?

「ほら、お前の取り分減らしたら悪いと思ってさ。だからどうぞ、俺達に気を使う必要は無いから。どんどんやっちゃってください」

「私だってこんな雑魚興味ないわよ。相手が面倒なのよ。少し分けてあげる」

「テメッ!人に面倒事押し付けんじゃねえよ!!いらんわ!こんな頭ん中がニートみたいな連中!お前が懐かれたんだ。全てお前のもんだ。お前が責任もって処理しろよ。粗大ごみにでも出しときなさい」

「あら、でもその雑魚どもはあなたの事も気に入ったらしいわよ」

 何ですか君達、なんでそんな目でボクを見るの?ボク何か失礼なこといいましたか?

「鉄心、毎回思うけどお前って馬鹿だよな」

 そしてお前も失礼だな慎平。何故そんな憐れむような目で俺を見るんだ。

「おいお前」

 そんな俺に凄むような声を掛けたのはナンパ男達のリーダーっぽい感じの男だった。本当にリーダーかは不明だ。

「さっきっから好き勝手な事言ってっけど……なに、俺達に喧嘩売ってんの」

 見境ないなこいつら。本当に刹那を生きる生物だ。

「売ってないと思う。てか、売ってたとしても面倒だから買わないで。あと忠告なんだけど、本当にやめといたほうがいいと思うよ」

「私も再三忠告したんだけど、聞いてくれないのよ。まあ、あなたもターゲットになったみたいだから諦めて半分受け持ちなさい」

「報酬とかある?」

 何だその目は、君が巻き込んだんだよ。それぐらい請求する権利はあると思っている。

「……ハンバーガーのセット奢りでどうかしら」

「いいよ!」

 その間0.03秒

「……早いわね。本当にそんなので……まあ良いわ。じゃあよろしく」

 そう言って、男たちに向き直る西岡。まあ、報酬としては妥当だろう。一応知り合いだしね。あんまり高価過ぎるのもどうかと思う。

 それに丁度お腹も減ってた。なによりただのハンバーガーじゃなくてセットというのが気に入った。

 そこに、何か奮発しましたみたいな心意気を感じちゃうね。

 まあ、商談?も成立したことだし報酬分は働きましょうかね。

 しかし、この人達商談がまとまるまで、動かず待ってくれてたのね。実は結構いい人?

「話は、すんだのかよブサイク」

 あ、やっぱり今の無し。こいつ、言っちゃいけない事を言っちゃったね。

「俺はブサイクじゃない!」

 その言葉をゴングに俺たちは、殆どワンサイドゲームな乱戦へと突入した。

 え、戦闘の描写?んなもんねえよ。

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