三年ぶりの共闘
早速ギルドで魔物の討伐依頼を受けたルーナたちは、王都近郊の森へ足を運んでいた。
「今回の依頼はオークの群れだったわね」
「はい! 三年ぶりの共同依頼、ワクワクしてきました!」
腕をぐるぐると回してやる気満々なニッケに、ルーナはくすりと吹き出す。
「変わってないのね、ニッケも」
「そうですか?」
「ええ、ちょっと安心したわ」
そう言うルーナに、アルスがぬっと顔を寄せた。
『ぼくもニッケたちとまたお仕事できてうれしいな!』
「そうね、アルス。――それにしても静かね」
ルーナが気付いた通り森の中は異様に静かで、鳥のさえずり一つ聞こえない。
「もしかしたらオークのせいかも……?」
「それはあり得ますね、ベル様。――お嬢様もお気をつけてください」
「分かってるわ、ナミ」
警戒をしながら暗い森を歩くこと少し、ベルが足元で何かを見つける。
「見て、これ足跡だよ!」
しゃがむベルが差し示すのは、ルーナたちの足よりもずっと大きな足跡だ。
「これは大きいですね。オークのものである可能性が高いです」
「それも一つじゃないですね、あっちに続いています!」
「行ってみましょう!」
『オーケー、ルーナ!』
ルーナの掛け声で、一行は連続する大きな足跡を辿ることに。
息を潜めながら足跡を辿ることしばらく、アルスが何かを察知したのか動きを止める。
『気をつけて、向こうになにかいるよ』
「そうなのね。教えてくれてありがとう、アルス」
『うん!』
同時に足を止めたルーナを見て、ニッケたちも警戒を始めた。
「――来ます」
ナミの声と同時に、茂みの奥で枝が何本も折れる。
ドシン、ドシン――。
重い足音が近づいてくる。
次の瞬間。
「ブヒィイイイッ!!」
茂みを突き破ってオークたちが飛び出した。
「オークです!」
「なんか様子が変だよ!? 普通のオークの殺気じゃない……!」
ベルの言う通り、オークは眼光を赤く滾らせ、生臭い息を荒げていた。
「お気を付けください、お嬢様。オークは女性を見れば見境なく襲う習性があります」
「分かってはいたけど、やっぱり気味の悪い習性ね……!」
ナミから聞かされたオークの下劣な習性に、ルーナはげんなりとした顔になる。
「それはともかくっ、もしかしたら魔物騒動と何か関係があるかも! ひとまずやっつけるわよ!」
「はい!」
「うん!」
『任せて!』
即座に気持ちを切り替えたルーナの号令で、皆が身構える。
「ブヒィイイ!!」
粗末な木のこん棒を振りかざして、複数のオークが一斉に飛びかかってきた。
「任せてください! ライトニング・パンチ!」
ニッケが雷光をまとわせた拳で、オークの顔面を殴り付けて吹っ飛ばす。
「ビギイッ!?」
感電しながら地面を転げるオークの一頭。
「さすがニッケね!」
「はい! ウチも強くなったんです!」
ガッツポーズをするニッケが振るう拳は、三年前よりもさらにキレが増していた。
――しかし他の数頭がニッケをすり抜けて後衛のルーナたちに突っ込んできた。
「しまった!」
「心配しないで、ニッケちゃん! ――アース・エッジ!」
ベルが杖を振り上げると、地面が刃のように突き上がってオークたちを的確に貫いていく。
「ピギギ!」
「ピギーンッ!?」
「さすがね、ベル! ――わたしたちも負けてられないわ!!」
『いっくよー!』
ルーナが短く笛を吹くと、アルスが尾びれを振り下ろして突進。
オーク数頭をまとめて吹っ飛ばした。
「さすがのパワーですね! ウチも頑張らなくっちゃです!」
大振りなオークの攻撃を身軽にかわしながら、ニッケも一頭ずつ殴り飛ばしていく。
そして半分くらい倒したところで、どこからか響いてきた野太い雄叫びでオークの群れが止まった。
「ど、どうしたんでしょうか!?」
「気をつけて、みんな! 何か来るよ!」
何かを感知したベルの呼び掛けで皆が身構えると、オークたちが一斉に左右へ退く。
ドシン……ドシン……。
そこをふた回りも大きな背丈の豚面がオークの群れを割って歩み出てきた。
口元から伸びる、大きく反り返った四本の牙。
頭には硬質な鬣が生えており、まるでモヒカンの髪型になっている。
そしてその威圧感は並のオークとは桁違いだった。
「ブルルル……!」
「あ、あれは……オークジャイアント!」
「ナミ、知ってるの!?」
「ええ。オークの上位種ですが、基本的に単独でいる魔物です。まさか普通のオークと同時に現れるとは……!」
冷静に身構えるナミとは対照的に、ニッケとベルはお互い抱き合って震え上がっていた。
「オークジャイアントって言ったら、三ツ星級のとても強力な魔物ですよ!?」
「そんなのが現れるなんて……!」
オークジャイアントの発する殺気で怯える二人に、激を飛ばしたのはルーナである。
「恐れてはダメ! わたしたちはその三ツ星級のハンターでしょ!? みんなで力を合わせればきっと大丈夫!!」
「ルーナさん……!」
「キュイッ!(ぼくたちは無敵なんだからね!)」
顔を割り込ませたアルスに、ニッケとベルもわずかに顔をほころばせた。
「……なんかアルスに励まされてるみたいですね」
「そうだよ! だってルーナちゃんとアルスくんがいるんだよ、そんな私たちならきっと!」
「ブルオオオオオオオッ!!」
森中を震わせる咆哮。
鳥たちが一斉に飛び立ち、地面が震える。
ルーナは手を構え、皆に号令をかけた。
「みんな、行くわよ!!」




