ハンターギルドでの情報共有
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その後ルーナたちは、討伐した魔物の素材と例の魔道具を提出するため、ハンターギルドへと足を運んでいた。
重厚な扉を押し開ける。
すると受付には、見覚えのある二人組の姿があった。
「あの二人……!」
「ニッケ様とベル様ですね」
ルーナとナミが気づいた、その直後だった。
「キュイ~!」
アルスが二人を追い抜き、一直線に受付へ突撃する。
「わわっ!? ――って、アルスじゃないですか!」
「えっ、ほんとだ! アルスくーん!」
ニッケとベルは嬉しそうにしゃがみ込み、アルスの大きな頭をわしゃわしゃと撫で回した。
『えへへ~』
気持ちよさそうに目を細めるアルス。
その様子に苦笑しながら、ルーナも二人へ手を振る。
「また会ったわね、二人とも」
「やっぱりルーナちゃんだったんだ~!」
「また会えて嬉しいです!」
ベルが豊かな胸を揺らしながら駆け寄ってくる。
「今日はどうしたの?」
「実はね……」
ルーナは、先ほど起きた魔物騒動について簡単に説明した。
「なるほど……。ウチらが討伐に出てる間に、そんなことが……!」
「ルーナちゃんがいなかったら、かなり危なかったんじゃない!?」
「そうね。でも、わたしとアルスだけじゃ倒せなかったわ」
ルーナは静かに首を振る。
「アウリス殿下が協力してくださったから、王都を守れたの」
――その瞬間だった。
ニッケとベルの表情が、にやぁ……っと意味深に歪む。
「ほほぉ~? あの第一王子が助けてくれた、ということですね」
「なるほどなるほど、そういうことなんだねぇ?」
「え? 何が?」
きょとんとするルーナ。
だが二人は構わず距離を詰めてくる。
「だって第一王子ですよ!?」
「しかも白馬に乗って颯爽登場とか、完全に白馬の王子様だよ!」
「――っ!?」
その言葉を聞いた瞬間、ルーナの顔がぼんっと赤くなる。
「そ、そんなんじゃないわよ!?」
ぶんぶんと両手を振るルーナ。
「わたしにそんなつもりないし! だいたい第一王子のアウリス殿下となんて、釣り合うわけないじゃない!」
「そんなことないよ~!」
「そうですよ! ルーナさんは名誉騎士なんですから! 夢は大きく持つべきですっ!」
「二人とも何言ってるのよぉ!?」
完全にペースを乱されるルーナ。
そんな彼女を見て、アルスまで楽しそうに尾びれを揺らしていた。
『ルーナ、顔真っ赤だよ!』
「アルスまで言わないでちょうだいっ!」
ギルドの一角に笑い声が広がる。
だが――
「こほん」
静かな咳払い。
空気を戻したのはナミだった。
「お嬢様。我々の目的は雑談ではございませんよ」
「……そ、それもそうだったわね!」
取り繕うように姿勢を正すルーナ。
「わたしたちも素材とアレを提出しなきゃいけなかったんだったわ」
そうしてルーナは、討伐素材と例の魔道具を受付へと差し出した。
すると――受付嬢の表情が、ぴたりと固まる。
「……っ!? こ、これは……!」
そんな受付嬢の反応を見て、ニッケも慌てたように身を乗り出した。
「それ、ウチらが提出したものと同じです!」
「えっ、本当なの!?」
ルーナが目を見開く。
ニッケは真剣な顔で頷いた。
「はい。ウチらが討伐した魔物にも、同じ指輪が装着されていました」
「――つまり」
ナミが静かに口を開く。
「同型の魔道具が、複数確認されているということですね」
「はい……」
受付嬢は重々しく頷いた。
先ほどまでの和やかな空気は、もうどこにもない。
「実は最近、他のハンターたちからも同じ指輪が多数持ち込まれているのです」
「そんなに……!?」
「現在ギルドでも鑑定を進めていますが……現時点では、三年前に黒牙商会が使用していた魔道具と極めて近い特徴が確認されています」
「……っ」
ルーナの喉が、小さく鳴った。
やはり。
胸の奥で渦巻いていた嫌な予感が、ゆっくりと形を持ち始める。
『ルーナ……もしかして、またあいつらの仕業なのかな……?』
不安そうに顔を寄せるアルス。
ルーナはそんな彼の頭をそっと撫でながら、小さく首を振った。
「そうでないことを願いたいけれど……」
だが。
黒牙商会は本当に壊滅したのか。
あるいは――
まだ残党が動いているのか。
考えれば考えるほど、胸のざわめきは強くなる。
「今後も慎重な調査が必要ですね」
ナミの声は冷静だった。
だが、その瞳には鋭い警戒が宿っている。
「ええ……そうね」
ルーナはゆっくり頷くと、改めてニッケとベルへ向き直った。
「それじゃあ、またね。二人とも」
「はい! また何かあったら呼んでください!」
「私たち、いつでも力になるからね!」
真っ直ぐな笑顔。
それを見たルーナも、自然と表情を和らげた。
「ありがとう。本当に……あなたたちと仲間になれてよかったわ」
互いに手を取り合う。
短い時間だったが、その絆は確かに深まっていた。
そして――ルーナたちはギルドを後にする。
だがその背後で、王都を覆う闇は、静かに広がり始めていた。




