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ルーナの胸の内

 フロッグマンの魔石をたんまり採取したルーナたちは、その足でハンターギルドに戻る。


 出迎えたのは、ギルドの観葉植物に水をやっていた受付嬢のアイリスだ。


「お帰りなさいませ。そのご様子ですと、依頼は順調に終わったみたいですね。皆様の顔が花畑のように明るいです」

「うん! みんなのおかげで、こんなにたくさん採れたんだ!」


 ベルが誇らしげに差し出した大量の魔石を、アイリスは驚きつつ受け取る。


「これは……かなりの数ですね! 少々お待ちくださいませ」


 アイリスが奥に引っ込むと、場は自然と雑談になった。


「今日も大成功だね!」

「はい! これもアルスのおかげです!」

「キュイ~!」


 ニッケに擦り寄るアルスは、ふと無邪気に首をかしげる。


『あれ、ニッケはやわらかくないよ?』

「こ、こらっ、アルス! そんなこと言っちゃダメでしょ!?」


 ルーナが慌ててたしなめると、ニッケは首をかしげるばかり。

 一方アルスは、ルーナの「笑顔で怒っている」顔にぎょっとして口をつぐんだ。


「……次に余計なこと言ったら、お魚抜きだからね?」

『えぇ~っ!?』


 コミカルな空気のまま、アイリスが戻ってきた。


「お待たせしました。確かにすべてフロッグマンの魔石です。こちらが報酬になります。お疲れさまでした」


 アイリスから布袋を受け取ったルーナは深く頭を下げた。


「ありがとうございます!」

「これからも、皆様に成功の花が咲きますように~」




 ギルドを出て宿屋【サンフラワー】に戻ったものの、ルーナの顔にはどこか陰りがあった。


 それに気づいたナミがそっと声をかける。


「……どうかなさいましたか、お嬢様?」

「え? ……なんでもないわ」


 慌てて笑顔を作るルーナだが、ナミの目はごまかせない。


 部屋に入るなり、ルーナはベッドに倒れ込み、枕に顔を押しつけてばた足をする。


「む~っ!」


 そんな姿を見ながら、ナミは静かに言った。


「……もしや、先ほどのことを気にしていらっしゃるのでは?」

「……やっぱりナミには隠せないのね」


 観念したように顔を上げたルーナは、真剣な目で問いかける。


「胸って……どうやったら大きくなるの?」


 ナミはふっと微笑むと、自分の豊満な胸元に軽く手を添えた。


「心配には及びませんよ。お嬢様はまだ成長期です。わたくしも同じ年頃のころは、今よりずっと控えめでした」

「それ、本当!?」

「ええ。ですから、お嬢様も焦ることはございません」


 その言葉にルーナの瞳がぱっと明るくなる。


「……ありがとう、ナミ! 安心したわ!」

「お力になれたなら、わたくしも嬉しいです」


 すっかり元気を取り戻したルーナに、ナミは柔らかくほほえんだ。


 その時、窓枠をカタカタ鳴らしてアルスが顔を出す。


『ルーナ~! お魚ちょうだ~い!』

「はいはい。――ナミ、お願い」

「ええ。――コネクト」


 取り出した生魚をルーナが投げ入れると、アルスは大口でパクリ。


『ごっくん! ごちそうさま!』


 その屈託のない笑顔に、ルーナの小さな悩みも自然と溶けていった。



 翌朝、宿屋の食堂で食事を囲んでいた時、ルーナは唐突に切り出した。


「ねえベル、わたしに魔法を教えてほしいの」


 突然の申し出に、ベルは目を丸くしてすっとんきょうな声を上げる。


「ふ、ふえええ!? わ、私なんかでいいの~!?」

「だって教えてもらえそうなのがベルしかいないもの! ……ダメ、かしら?」


 おずおずと尋ねるルーナに、ベルは慌てて首を振る。


「だ、ダメなんてことないよ! むしろ私でいいのかなってびっくりしただけで!」

「じゃあ……お願い!」


 ルーナに両手を握られ、ベルの顔がたちまち真っ赤になる。


「よーっし! せっかく頼ってもらえたんだもん、全力で頑張るね!」

「ウチも協力します! ……大した魔法は使えませんけど!」

「わたくしも助力いたします。お嬢様の魔力制御なら、多少はお手伝いできますから」


 ニッケとナミまで加わると、ベルは胸を押さえて感極まったように言う。


「みんな……! うん、よろしくね!」



 食後、ギルドの訓練場へ向かうことにしたルーナたちを、受付嬢のアイリスが花に水をやりながら出迎えた。


「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件で?」

「ルーナちゃんに魔法を教えたいの! 訓練場を使わせてもらえませんか?」


 アイリスはひまわりのような笑顔を浮かべてうなずく。


「健やかな成長のために力を磨くのですね。それならこちらへどうぞ」


 案内された先は、広々とした運動場のような場所。防護結界に守られていて、魔力の行使も安心だという。


「じゃあ始めよっか。まずは魔力を感じる練習だよ。胸に手を当てて、心を落ち着けて……」


 ベルは自分の胸元に手を添えてみせる。

 その豊かな膨らみに、ルーナの視線がつい吸い寄せられてしまった。


「……やっぱりデカい」

「ん? どうしたのルーナちゃん?」

「う、ううん! なんでもないわ!」


 ベルは気づかない様子でにこにこしている。

 そんな天然さが、ルーナには少し羨ましく、でも微笑ましく思えた。


「ほら、こうして集中すると……」


 ベルの体がうっすらとピンク色に光り出す。


「すごい……! 何が起きてるの!?」

「これが私の魔力だよ。ルーナちゃんもできるはず!」


「なるほど……。んーと……」


 ルーナは自分の慎ましい胸にそっと手を置き、深く息を吸って心を静める。

 すると体の奥で温かいものが脈打ち、青白い光がほのかに胸元に灯った。


「これが……わたしの魔力……!」

「すごい! ルーナちゃん、もう感じ取れたんだね!」

「ルーナさんの体が青く光ってます! ウチにはできませんけど!」


 平らな胸を張って言い切るニッケに、ルーナは思わず笑ってしまう。


 ナミは一歩下がり、落ち着いた声で告げた。


「さすがはお嬢様。魔力は扱うほど慣れていきます。これからの成長が楽しみですね」


 その言葉に、ルーナは力強くうなずいた。


「うん……わたし、もっともっと上手くなってみせる!」

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