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魔法の可能性

「次は魔力を具現化する練習だよ! ……でもルーナちゃんは、もうできるんだったっけ?」


 ベルが首をかしげて問いかけると、ルーナは頬をかいて少し照れながら答える。


「ええ……でも、ちょっと復習しておきたい気分なの」


 その一言に、ベルの顔がぱぁっと輝いた。


「それなら任せて! ――集中させた魔力を、手のひらに集めるイメージだよ!」

「分かったわ。……はぁああっ」


 ルーナが深呼吸して手を合わせると、透明な水の粒子が集まり、小さな水球がぷくりと生まれた。


「やっぱりすごいよ、ルーナちゃん!」

「えへへっ、それほどでもないわ」


 二人が笑い合う横で、アルスは空中にぷかぷか浮かびながら頬を膨らませていた。


「キュイ……(つまんなーい)」


 その拗ねた声に気づいたルーナが歩み寄り、頭を撫でながら声をかける。


「ごめんね、アルス。退屈だったでしょう?」


 指先が触れた瞬間――アルスの全身が、青い光を帯びてきらめいた。


「ふええっ!? アルスくんまで光ってるー!」

「まさか……アルスにも魔力が!?」


 ベルとニッケが声を揃えて驚く中、ルーナの胸にひらめきが走る。


「……この感覚、あのときと同じだわ!」


 それはアルスを海の外へ連れ出した時に起きた、不思議な共鳴。


「アルス、ちょっと試してみましょう?」

『ん?』


 キョトンと首をかしげるアルスに向かい、ルーナは自然に浮かんだ言葉を口にした。


「――アクア・ヴェール!」


 その瞬間、アルスの全身が水のヴェールに包まれる。

 艶々とした肌が光を弾き、幻想的な姿に変わった。


「な、なにこれ……すごい!」

「アルス様が魔法を!?」


 仲間たちの驚きを背に、ルーナはさらに声を張る。


「次は――ショック・ウェーブ!」

『それぇ!』


 アルスが尾びれを振り抜くと、水の衝撃波が虚空を叩き、結界がビリビリと震える。


「「うわぁ……!」」


 降り注ぐ水しぶきの中で、ルーナは胸を弾ませた。


「アルス、あなた本当にすごいわ!」

『ルーナが教えてくれるからできるんだよ! ルーナのおかげ!』

「ふふっ……ありがと、最高の相棒ね」

『えへへ~!』


 ルーナがワシャワシャと撫でると、アルスは嬉しそうに目を細める。

 こうして二人は、新しい力――連動魔法の可能性を見つけたのである。


 アルスの訓練が落ち着いたところで、ルーナは再び自分の練習に取りかかった。


「次は、具現化した魔力を変形させる練習だよ。……こうして、ぎゅ~っと固めると――」


 ベルが手本を示すと、掌の土塊がぎしりと圧縮され、硬い岩へと変化した。


「おお~!」


 ルーナは思わず拍手し、ベルはにっこりと胸を張る。


「ルーナちゃんもできるはずだよ、やってみて!」

「分かったわ……はぁああっ」


 集中して作った水球を両手で押し固めるイメージを重ねると、ひんやりとした氷の塊が生まれた。


「氷になった……!」

「すごい! やっぱりルーナちゃん、魔法の筋がいいよ!」


 ベルの賛辞に、ルーナは少し頬を赤らめた。


「そ、そうかしら……」


「その氷を、あの的に当ててみよっか!」


 ベルが示した先には、看板のような木の的。


「それじゃあ――アイス・バレット!」


 即興で叫んだ呪文とともに氷塊を放つと、的は瞬く間に凍りついた。


「「おお~!」」


 ニッケとベルも声を上げ、ルーナは胸を張る。


「こうなるんだ……!」


「さすがです、お嬢様」

『ルーナ、すっごーい!』


 ナミとアルスに褒められるたびに照れくさそうに頭をかくルーナ。

 そして次の魔力拡散も、一発で成功してしまった。


 淡い霧が辺りに広がり、仲間たちは息をのむ。


「これが……魔力拡散?」

「信じられない……! 普通はもっと時間がかかるのに」

「ウチには絶対できません!」


 ベルとニッケは口をあんぐり開け、ナミは静かに微笑む。


「お嬢様は本当に吸収が早いですね」


『ルーナ、ほんとにすごいよ!』


 無邪気にすり寄るアルスに、ルーナは胸に熱い自信を覚えた。


「これが、わたしの魔法……! ねえベル、もっともっと教えて!」


 食い気味に迫られたベルは、困ったように手を合わせて首を振った。


「ご、ごめん! 私が教えられるのはここまでなの。水魔法は使えないから、これ以上は無理なんだ……」

「え……」


 落ち込むルーナを慌ててフォローする。


「でもね、魔法書で勉強する方法があるんだ! それなら水魔法のこともきっと分かるよ!」

「魔法書……!」


 補足を入れたのはナミだった。


「王都には大きな図書館もございます。お嬢様が望むなら、きっと道が開けるでしょう」

「そう……! じゃあ、なおさら王都が楽しみになってきたわ!」


 希望を取り戻したルーナは紫の瞳を輝かせ、まだ見ぬ未来に胸を躍らせた。


 数日後。

 すっかり馴染んだ宿屋【サンフラワー】を発つ日がやってきた。


「また遊びに来てね!」

「元気でね!」


 看板娘のメイをはじめ、町の人々が笑顔で見送ってくれる。


「鬼ネズミにフロッグマン……立派になられましたね。次は王都で花を咲かせてくださいね」


 ギルドのアイリスも、花束を渡すように両手で依頼書を差し出したあの日と同じ笑顔で手を振った。


「皆さん、本当にお世話になりました!」


 ルーナが深々と頭を下げると、アルスも大きな胸びれをぶんぶん振って応える。


『バイバーイ! ぼく、ぜったいまた来るからね!』


 こうして、フローラの町での思い出を胸に抱きながら、一行は王都への道を歩み出した。

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