↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
19/73

フロッグマン退治

 盛大な水しぶきを上げてフロー川に飛び込んだアルスは、すぐさま超音波によるエコーロケーションを行った。


『えーっと、フロッグマンは……あ、いた!』


 川の深場に反応を見つけたアルスは、尾びれを高々と水面に掲げると、そのまま潜水していく。


 巨体でも余裕を持って泳ぎ回れるほどの水中で、彼は積み重なった流木の影に蠢く影を見つけた。


『いたいた! まとめて出しちゃえ!』


 勢いよく体当たりすると、流木が豪快に弾け飛び、隠れていたフロッグマンの群れが一斉に姿を現す。


「ケゴ……!?」

『みぃーつけたっ!』


 数十匹はいるフロッグマンが慌てて水を蹴って逃げる。

 それをアルスが巨体で追い立て、波を立てながら川岸へと押しやった。


『ルーナ~! 追い込んだよ!』

「よくやったわ、アルス! このまま退路を塞いで!」

『オッケー!』


 アルスは水面から飛び上がるようにして岸に陣取り、巨体で川への逃げ道をふさぐ。


「ケゴ、ケゴケゴッ!」


 追い詰められたフロッグマンたちが錆びたナイフを抜き、ルーナに飛びかかろうとする。


『ルーナ、危ない!』

「――任せてください! ライトニング・パンチ!」


 雷光をまとったニッケの拳が横合いから叩き込まれ、フロッグマンの一匹がバチバチと痙攣しながら吹っ飛んだ。


「ケゴオオオ!!」


「次は私だよ! ロック・ブラスト!」


 ベルの杖から石礫の弾丸が雨のように放たれ、複数のフロッグマンを直撃。


「ケゴ!?」

「ケゴゴー!!」


 仲間が次々倒れ、怯えたフロッグマンたちが退路を求めてアルスのほうへ殺到した。


「アルス!」

『まかせといて! とりゃーっ!』


 突進してきた一匹をアルスが尾びれでフルスイング。


 フロッグマンは「ケゴオオオ!?」と悲鳴をあげながら空高く打ち上げられ、遠くの草むらに突き刺さった。


 残りの群れも足を止めて硬直する。


「ケゴ……!?」


 その隙をニッケとベルが逃さず、的確に撃破していく。


「まさか、こんなにスムーズに……!」

「アルスがいてくれるから心強いわ!」

『えへへ~! ぼく大活躍でしょ?』


 自慢げなアルスの顔を、ルーナはワシャワシャと撫でながら褒めてやった。


 さらにアルスは得意げに声を張る。


『あ、そうだ! まだ川底にも隠れてたよ! 次はぼく一人でやっつけちゃう!』

「本当? ならお願いするわ!」


 アルスは嬉々として再び水中へダイブし、残党を豪快に叩き上げ始めた。


 水面からフロッグマンがポンポン打ち上がり、まるで水上ショーのような光景にニッケとベルも呆気にとられる。


「こ、これじゃ討伐というより芸ですね……」

「でも助かるよ~!」


 そこらに転がるフロッグマンの死体を前に、ニッケがこんなことを。


「ルーナさんも解体をしてみてはいかがでしょうか?」

「えっ!?」


 突然のニッケの提案に、ルーナはぎょっとしてフロッグマンの死体を凝視してしまう。


「これを……わたしが?」

「はい! 慣れればどうってことないですよ!」


「――ハンターとして活動する以上、お嬢様も経験する必要があるでしょう」

「そ、そうね。……やってみるわ」


 ナミの落ち着いた声に背中を押され、ルーナは恐る恐るナイフを握った。

 目の前には、さっきまで動いていたフロッグマンの亡骸。


「これを……わたしが……!」


 ごくりと唾を飲み込み、震える手で腹部に刃を入れる。

 ぶよりとした皮膚を割り、内臓を裂く感触が指先に伝わった瞬間――鉄のような血の匂いが鼻腔を突いた。


「う……っ!」


 思わず顔をしかめるルーナ。


「お嬢様……大丈夫ですか?」

「ええ、わたしは平気よ……。これにも慣れなくちゃ」


 ナミに心配されながらも、ルーナは必死に自分を奮い立たせ、刃を奥へと進める。


 やがて――心臓の近くに、緑色の結晶が姿を現した。


「これが……魔石……!」


 震える指でつまみ上げ、日差しにかざす。

 濡れた結晶はきらりと光を反射し、思いがけず美しい輝きを放った。


「きれい……! 魔物の体内にあったとは思えないくらい……」

「魔石は武器や魔法アクセサリーの素材になるんだよ!」

「そうなのね、ベル!」


 ベルの解説に目を見開き、ルーナの心に芽生えるのは恐怖ではなく好奇心だった。


「それなら……やる気が出てきたわ!」


 さっきまで腰が引けていたのが嘘のように、ルーナは積極的に解体へと手を動かし始める。


 最初の一歩を踏み出した彼女の顔には、確かな成長の色が宿っていた。


 そうして気がつけば、ルーナたちは百匹近いフロッグマンを討伐して、魔石もたんまりと獲得していたのである。


『ねえねえルーナ! ぼく、がんばったよね!』

「ええ、とっても偉いわ。あなたは最高の相棒よ!」

『えへへっ! それじゃあお魚ちょうだい!』


 大きな口をパカッと開けるアルスに、ルーナは苦笑した。


「もう、アルスも相変わらずなんだから~。――ナミ、お願いっ」

「かしこまりました、お嬢様。――コネクト」


 ナミが接続魔法で取り出した川魚の束を、ルーナはアルスの口に放り込む。


『うん! 川魚もいいね!』

「まだまだあるから、たっぷり食べてちょうだい」

『わーい!』


 川魚をたっぷりもらえて、アルスもご満悦だ。


 するとベルが控えめに手を挙げる。


「ねえルーナちゃん、私もアルスくんにお魚あげてもいいかなあ?」

「もちろん! どうぞっ」


 ルーナから魚を受け取ったベルは、恐る恐るアルスに差し出した。


「か、噛まないよね?」

「アルスはそんなことしないわ。ねっ、アルス」

『うん、ぼく噛んだりしないよ!』


 勇気を出してえいやっと放り込むと――。


『ぱっくん!』


 魚を丸呑みするアルスに、ベルの瞳がきらりと輝く。


「はわ~っ、アルスくん可愛すぎるよぉ!」


 感極まってアルスの顔に抱きつくベル。

 その胸元が思いきりアルスの頬に押し付けられ――。


『……ん、なんかムニムニする?』


 キョトンとするアルスの言葉に、ルーナの視線は思わずベルの胸元へ。


 普段はローブで隠れていたが、よく見ればナミを凌ぐほどの豊かな膨らみがそこにあった。


「で、デカ……っ!」


 無意識に漏れたルーナの声。

 すぐさま彼女はベルを引き剥がした。


「それ以上はダメ~っ!!」

「え~っ、どうして~?」

「ダメなものはダメなの! アルスが変な子になっちゃったら困るでしょ!」


『え~? でもムニムニで気持ちよかったよ?』

「アルスまでそんなこと言わないのっ!!」


 あっけらかんと笑うアルスに、ルーナは両手で自分の胸を覆い、うなだれる。


「わたしだって……これから成長するんだから……!」


 まだ発育途上の胸をさすりながら、心の中で密かに闘志を燃やすルーナであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。