表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/21

第19話「夏井由実」

 夏川由実は、近鉄電車からの車窓を眺めていた。

 大和西大寺駅を出発した奈良行きの特急電車は、複雑なポイント切り替えを通過したあと、車窓は急に街並みの光景から無駄に広い草原のような光景になった。由実は目を細めた。世界遺産平城宮跡…。

 1300年前、日本の都はここにあった。

 そんな世界遺産の遺跡の中を、電車が通り抜けているのもこれまたおかしな話であるが、これには理由があるという。かつて明治時代以降に遺跡調査が始められた時、平城宮跡は今よりもっと小さいと考えられていた。時期を同じくして奈良にも近代化の波が訪れ、鉄道が敷かれることになるが、当初鉄道は遺跡を避けて敷かれたはずであったという。しかし、調査が進むうちに平城宮跡が当初より大きいということが判明し、結果的に鉄道が遺跡の中央をぶち抜くような形になってしまったのだ。古代と現代が隣り合わせの奈良ならではの光景とも言えるかもしれない。

 由実は、数えるほどしか奈良に来たことはなかったが、いつも車窓からこの光景が目に入ると心が洗われる気がした。

 緑は優しく人を包み込む。たたなづく青垣。

 やはり、自分の直感は間違っていなかった。

 ”奈良は死に場所にふさわしい”



 由実は、声優だった。

 というと、誰しも羨望の目で見て、きっと華やかな世界に住んでいるのだろうと羨ましがれもした。しかし、現実は真逆と言ってもいいほど華やかさとは無縁の世界だった。

 由実が声優の職業に憧れたのは、昔からアニメやゲームが好きだったという当たり前の理由もあったが、どこか安直な気持ちがあったというのも否定できない。女優とか、ミュージシャンとか、そんな人たちにはとても敵わない気がしたが、声優なら自分にも出来そう、そんな気がした。なにより、あまり人前に出るのが得意ではなかったから、裏方のイメージがある声優なら自分にも向いているだろうとも思ったのだった。

 高校卒業後、由実は声優学科のある専門学校に進学した。

 卒業時にオーディションを受けると、それなりの大手プロダクション所属の声優となることができた。運がよかったのだと思う。他の卒業生は、その後もプロダクションが直接運営する養成所に入り、さらに技術を学びながらオーディションを受け続けることになるのが大半だったからだ。

 ただ、それで安泰ということはなかった。むしろ、そこからが、おのれの実力とやる気次第の弱肉強食の世界がはじまりだったからである。

 プロダクション所属とはいっても、普通の会社員が会社に所属するのとは根本的に違い。失業保険、福利厚生などすべて自分で考えなければいけなかったし(要はただの個人事業主である)、プロダクション経由で仕事をもらえることも稀にあるが、それだけのギャラで食っていけるわけがなく、ほとんどのプロダクション所属の声優は、アルバイトをしながら生計を立て、役をもらえるオーディションを受け続けていた。

 “声優”なんて、なにか免許や資格があるものではない。ある意味では究極の自称。それこそまったく声優の仕事にありつけず、年中バイトだけをしていても、それは声優といえば声優だった。

 由実も自分がそのような状況に置かれて、初めて実態を知った。

 当然、夢破れてやめていく人も山のように見た。聞いたところでは、プロダクションに所属する声優は1万人いるというが、その志望者は30万人いるといわれる世界。さらに、その中で成功して人気声優になるなんていうのは、ほんの一握りである。

 職人の世界はこんなものだと言われたら、それまでの話だが、そんな話聞いていなかったよというのが由実の本音だった。結果は同じでも、覚悟を持ってその世界に飛び込むのとでは、世界は大きく違って感じられる。

 特に近年は、アイドル声優とか言って、本来裏方のはずの声優が表にも出てくる時代で、声だけでよかったはずなのに、今や声優に求められるものは、ビジュアル、歌唱力、もはやそのへんの俳優やミュージシャンより求められるものが大きくなっていた。

 幸か不幸か由実は、それなりのルックスがあったので、当然プロダクションはビジュアルを押した方向性で仕事を与えようとした。しかし、由実はその仕事を断った。自分のルックスは自覚はしていたものの、見世物のようになるのは嫌だった。なにより、元はと言えば、人前に出るのが苦手だったからこの道を目指したようなものだったのに…。

 とはいえ、一度はこの業界に夢見て目指したのは事実であるし、この世界で生きていくことは楽ではないということは身に染みて理解していたので、一時期、度胸をつけ人見知りを克服するため、また演技の幅を増やせればと、バンド活動をしたりした時期もあった。

 バンド活動は、たしかに新鮮な一面もあり、目指すべき場所は違うとはいえ、同じように夢を追い切磋琢磨する人たちの姿は、勇気づけられもした。少なくとも人見知りは克服できたかもしれなかった。

 しかし、明確に得たものはそれほどはなかった。あったといえば、男だけだった。なんだかんだで、由実は同じバンドメンバーと付き合うことになってしまった。学生時代からずっと彼氏はいなかったので、久しぶりの彼氏だった。我ながら、今思い返しても、同じバンドメンバーと付き合うなんて、月並みであまりにも情けない結果だったと反省する。もちろん、それでも相手が素晴らしい人間であれば結果オーライであったであろうが、彼氏は典型的な駄目男だった。

 浮気こそしなかったものの(ただモテなかっただけかもしれない)、結局、ずるずると30になるまで惰性で付き合い、最後の方はなぜか由実が男を養うようになっていた。

 それでも最後にはチャンスが残されていると思っていた。そう、結婚である。

 自分が人生の帰路に立たされている頃、地元の友人や同級生からは結婚や出産の報告が度々届くようになった。由実も人並みには願望はあった。家庭には夢を見た。もしかしたら、はじめから自分が求めていたのはこれだったのかもしれない、とさえ思った。結婚して家庭に入れば、自分が抱えていた問題がほぼ解決するのではないのかと。

 その由実の、全身全霊をかけたプレッシャーを彼氏は浴びた。

 今思えば、その時に駄目彼氏となんてきっぱり別れて、もっと良い男を探せばよかったと思う。でも、なぜか由実はその駄目彼氏に固執した。おそらく、その駄目彼氏を否定するということは、つまり自分をも否定することになるのが怖かったのであろう。

 ある日突然、その彼氏は消えた。文字通り消えた。蒸発するように。

 もしかしたら、本当に蒸発したのかもしれない。

 なかなかの衝撃だった。由実は人生で初めての本物の挫折感を味わった。

 このままでは駄目だと思い、声優を引退することを決意し、プロダクションも辞め、就職もした。しかし、バイトから正社員になっても、大して手取りは変わらなかった。ヘタしたら減った。

 生活に困窮し、底をつかないように追われる日々。

 なんのために生きているのだろう。毎日目覚めれば同じ景色、同じことの繰り返し。自分はこの世界に必要な存在なのであろうか。自分がいなくても、実はまったく影響がないのではないか。そんなことを毎日考えるようになった。

 時間だけは無駄に浪費し、いつしか女の全盛期も完全に過ぎていた。

 気付けば、死にたい。それしか思えなくなっていた。

 でも、出来るなら、出来る限りに人に迷惑かけずに綺麗に死にたい。

 不摂生な生活もたたり、いつの間にか弛んだお腹。この醜い体が腐って、悪臭を放ち、部屋の染みになるのだけは嫌だった。

 …山の中で土に返りたい。

 少しでも地球に貢献したい。きっと肥料くらいにはなるだろう。

 その思いは日々強くなった。

 そんな時、ふと東京駅で観光キャンペーンのポスターを見て、由実は啓示を得た。

 そうだ。奈良で死のう。





 近鉄電車は、終点近鉄奈良駅へと着いた。

 由実にとっては比喩的な意味も含めて正真正銘の終着駅だった。

 車両からは、乗客全員が流れ出すように外に出た。キャリーバックを手に引いている人も多く見られた。みんなこれから奈良の観光を楽しむのだ。

 由実は地下の改札から上がると、噴水の上に立つ行基像に手を合わせ、奈良公園に向かって歩いた。

 すぐに森のような緑が見えてきた。公園の入口であり、興福寺の境内でもあった。

 はじめて奈良公園に来た時は、どこかに入場口があって、柵の中に鹿が飼われていると思っていた。しかし、実はシームレスで、鹿も普通に辺りを歩いているとわかった時は驚いたものだった。実に奈良らしい光景といえた。先ほどの平城宮跡といい、ある意味のどかで、なんでも受け入れてくれそうな雄大さがある。

 奈良のそんなところが好きだった。まさに神と仏に包まれているのだ。

 よく日本人は無宗教だと言われるが、それは違うと思う。むしろ、由実は日本人こそ世界でもっとも信仰心があるのではないかと思っていた。生活と信仰がそれこそシームレスにつながっており、意識できないだけなのだ。それを日本人は無宗教だと勘違いする。毎日神だのみをして、それこそカルト集団みたいなものだけを宗教だと思っている。でも、実はシームレスこそが究極の宗教なのではないのだろうか。縛られない。抱かれているのだ。

 由実は奈良の景色を全身で受け止めた。

 わたしも、こんなところに生まれて住んでいたら、きっと人生も違ったのかもしれない…。

 前方に鹿せんべい売り場が見えてきた。

 売り場に鹿が群れていた。由実は力なく微笑んだ。

 たしか、公園には鹿が1300頭くらい生息していたはず。

 神のお使い。国の天然記念物。

 なんて、尊くて愛らしいの!

 私も生まれ変われるなら奈良の鹿に生まれ変わりたい。

 由実は二束鹿せんべいを買って、鹿に与えた。

 あっという間になくなった。

 手を振って、せんべいがもうないことを見せると、鹿は散らばって行った。ごめんね。次会う時は、仲間に入れてね。

 さらに奈良公園を奥に進むと、右手に奈良国立博物館があって、左手には氷室神社。交差点を左に折れると東大寺の参道だった。

 広大な芝生と、先に頂くの若草山。織りなす深緑に心が洗われた。

 鎌倉時代の巨大な南大門をくぐり、中門の先に大仏殿の屋根が見えてきた。なんて、人は偉大なものを作り上げたのだろう。昔は、今のように道具も機械もなかったはずなのに。現代の人間は、なぜか上から目線で「昔の人にしては凄いわね」とよく言うが、それは違う。昔の人の方が凄いのだ。

 中門の前まで来ると、先に見える大仏殿に由実は手を合わし、左手の拝観口から回廊の中に入った。

 いつ見ても驚く。大仏殿は見る度に大きく感じた。

 迫るような大きさなのに、不思議と恐怖は感じない。

 大きな階段を踏みしめるように登り、巨大な扉をくぐると、そこに大仏さまが座っておられた。手を合わせると自然と涙がぽろぽろと流れた。感動の涙なのか悲しみの涙なのか由実にはわからなかった。ただただ流れた。

 大仏さまの周りとぐるりと回り、途中、あの有名な柱の穴くぐりがあった。子供が並んでいたが、由実は大人気もなく一緒に並び、人目もはばからず穴をくぐった。


「お姉ちゃんすごい~」


 子供が拍手した。


「おばちゃん凄い」


 と、言った子供もいて、由実は一瞬固まった。

 子供は残酷である。でも、自分もあれくらいの子供がいてもおかしくない歳である。由実は「すみません。すみません」と謝りながら、その場をあとにした。

 出口のあたりに御朱印をいただけるところがあり、由実は朱印をもらった。前に来た時にももらってはいたが、今日はこれを持っていたら寂しくないような気がした。

 大仏殿をあとにした由実は、春日大社の方へ向かった。

 芝生の奈良公園を横切り、うっそうとした森に入る。

 春日大社は、768年藤原氏の氏神を祀るためにつくられた。

 茨城の鹿島神宮から武甕槌命、千葉の香取神宮から経津主命、大阪の枚岡神社から天児屋根命と比売神の神様が、この地にやってきたという。特に本殿の第一殿に祀られる武甕槌命こそが、鹿に乗ってこの地にやってきたと伝えられ、奈良の鹿は神の使いとされた。

 春日大社は、御蓋山をも御神体とし、この一帯は神域として平安時代以降森には人の手が入っていないという。春日山原始林といい、世界遺産にも登録されている。

 こんな市街地からすぐの場所に原始林が広がっているとは!

 参道にズラリと並ぶ石燈籠の向こうは、たしかに人を寄せ付けぬ雰囲気があった。

 南門をくぐり境内に入ると、巫女さんの醸し出す上品かつ初々しい姿に、由実は自分がいかに穢わらしい存在なのかを痛感しながら、拝殿で手を合わせた。

 本殿はこの奥にある。目にすることはできない。

 由実は境内をあとにすると、自分でも意識がなく、気付けば森に入り、歩いていた。

 土と、草と、木の枝を踏む音だけがして、いつしか自分の鼻をすする音も重なった。

 由実は、「うえーん。うえーん」と、まるで子供のように声をあげて泣いた。

 しばらく泣いて、疲れて、肩だけを揺らしていた。

 するとふいに、後方でバキッと大きな音がして由実は振り返った。

 …そこには鹿がいた。

 立派な角を生やした雄鹿だった。

 つぶらな瞳で由実のことを見ている。

 どうしたの?お腹が空いたの?

 わたしを狙ってついてきたの?

 いいよ。食べてくれて。たぶん、美味しくないとは思うけど。

 と、由実は思ったが、よく考えてみたら鹿は草食動物だった。

 さすがに鹿せんべいならバクバク食べる食欲旺盛な鹿と言えども、人間は喰わないだろう。

 由実は、そのまま森の中を進んだ。

 出来ればこのまま行き倒れて、森に迷ったお姫様のごとくしおらしく死にたかったが、意外に体力があって、森を抜けてしまった。

 空が広がった。辺りを見渡す。どこからか、なにか音が聞こえてくる。

 はじめはよくわかなかったが、あれは楽器の音だ。なにかイベントでもやっているのだろうか。歌声も聞こえてきたと思ったら、それは般若心経だった。

 由実は、吸い寄せられるようにその音のする方向へ向かった。

 しばらく歩くと、人だかりが見えてきた。

 お葬式でもやっているのかなと思ったが、人の服装からしてそんな雰囲気ではなかった。

 近づくと、みんな階段の上の方を見ている。

 視線を動かすと、「金玉寺 寺ロックフェス ニンショーソニック」と書いたポスターが貼ってあった。

 そういえば、こんなポスターを近鉄奈良駅でも見かけたような気がする。

 由実は階段をあがり、その金玉寺という寺の境内にあがった。

 人がたくさんいて、本堂と思われし建物の前につくられたステージで演奏するものたちがいた。でも背が低い由実は、背伸びしてようやくステージが見えるというほどであった。

 たしかに演奏されていたのは般若心経ではあったが、明らかに普通じゃない。ロック?テクノ?少なくとも今までこんなものは聴いたことがない。

 なんて不謹慎な奴らであろうと思ったけど、周りを見ると皆真剣な顔をしており、中には同じように般若心経を唱えている人までいた。

 由実も、思わず口ずさんでしまった。

 最後は、ほぼ絶叫のようになった般若心経が終わった。

 しばらく誰も拍手もせず静寂が訪れたが、それを切ったものがいた。

 パチパチパチと大きな拍手の音。

 由実は、背伸びをしてその音の主を見た。

 アメリカ大統領!!!!????

 なんでこんなところにアメリカ大統領が!!??

 ここは一体どこなんだ!?

 もしかして、自分はもう死んでいて、あの世にでも来てしまっていたのだろうか?と、由実は頬をひっぱたいて見たが、痛い。どうやら、これはリアルに起こっていることらしい。

 次の曲が始まった。この曲は知っている。「WOW WAR TONIGHT 〜時には起こせよムーヴメント」だった。

 最後は大合唱になった。由実も歌った。

 それからわけのわからない曲が始まったが、ステージの前の方は盛り上がっているらしい。曲が終わると、アメリカ大統領がステージに近づいていき、ステージに立つ男と握手した。観客はどよめいた。由実は必死に背伸びして見た。

 あれ…。あの男って……。

 アメリカ大統領は、SPに囲まれ、皆の拍手喝采に見送られ、境内を後にしていった。

 由実は人を掻き分け、ステージが見える位置まで進んだ。

 三人の男がステージに立っていた。


「では皆さん、最後の曲を演奏したいと思います。…今日はなんて言うか、こんなはずではなかったんですが…。まさか忍性さんのことがアメリカにまで伝わるとは…」


 観客が笑う。祐一だ。由実はその名前を思い出した。


「人生なにが起こるかわかりませんね。かつて、僕たちはプロを目指して東京でライブ活動をしていたのですが、夢あきらめて…。間違いなく言えるのは、今日は人生で一番のライブとなりました」


 みんな拍手をする。由実もぱちぱちと小さく拍手した。


「最後の曲は、僕たちのバンド時代のオリジナル曲なんですが、思い入れのある曲で、スーパーピュア、最強の純真というつもりで付けた曲なんですが、まぁその、純真さを失ってしまったという曲なんですが、いつまでも純真さは失いたくないものですね…」


 客席が静まり返った。


「では、聴いてください。スーパーピュア」


 曲が始まった。

 祐一が歌った。懐かしい声だった。

 由実は遠い記憶を思い出していた。

 ”私のことを振った男”。

 あれ以来だったけど、まさか寺の僧侶になっていたとは。

 夢あきらめたって言ってたから、実家に帰ってきたっていうことなんだろう。

 奈良出身だとは聞いていたけど、まさか実家が寺だとは知らなかった…。曲が終わると、祐一が「秘仏を公開します」と言った。

 たしか、そんなこともポスターに書いてあったと由実は思い出した。

 せっかくここまで来たのだから、仏像だけは見て帰ろうと思った。

 どうやら、ステージの奥の幕の向こうに仏像が立っているらしい。

 鎌倉時代の慶派の文殊菩薩立像と祐一が説明した。

 鎌倉時代の写実的かつ少しユーモラスな仏像は由実も好きだった。

 人生の最後に仏像を拝めるなら本望である。

 由実は固唾を呑んで仏像が現れるのを待った。周りもそのような様子だった。

 場違いなドラムロールのあと、いよいよその幕が取られた。

 夕陽に輝く、金色の、おだかやな文殊菩薩立像の顔が見えた。

 …と思ったら傾いた。

 ダメ!倒れる!!


「ひっ!」


 由実はひきつけのように息を吸った。

 そのあとに目にしたものは、由実は果たしてそれが現実だったのかどうなのか、わからなかった。

 目の錯覚だったのかもしれない。

 でも、たしかに由実は見た。

 仏像が動いて、由実に向かって手を振ったのを。


「まだだよ」


 って言ったのだ。そう。


「あなたはまだこちらに来る人ではないよ」と。


 奇跡が起きた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ