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The Game 24

窓ガラスもない外では建築物同士の戦いが続いている。

今のところは一進一退のいい勝負だ。

道路を土俵に左右に行き来している。


「……」


半端に建築された建物内を登り続ける。

可能な限り速く、だが、周囲を警戒しながら。

廃墟ともまた違う様相だ。すべてが新品であるのに壊れてもいる、矛盾した風景だ。


「遠いな」


階段確かめながらも上がり続ける。

目指すは九階だ。

それは根拠があるものではなく、ほとんど直感のようなものだった。


「あの夢操者が提示したヒントの画像には、IDが割り振られていた」


画像それぞれに区別するための数があった。


「片方は943679、もう片方は942568だった」


こうした建物の部屋番号は、通常三桁だ。


「943か679、あるいは942か568のどれかであると考える」


その中で、真っ先に九階を疑っている理由は簡単だ。


「Z さんは「ふわふわ浮かぶような場所」にいる」


半端な階層ではなく、最上階にいる可能性が高い。


「より正確には、先に投稿された画像にあった、942だと推測する」


もちろん、違う可能性もある。

だが他に手がかりはない以上、この薄い線を頼るしかない。


「問題は、妨害だ」


このホテルでは、奇妙な怪物が現れていた。

架空のレヴューの記述であり本当ではないのかもしれないが、安穏と行くわけには行かない。


「行こう……」


ホテルの外装工事は既に終わっていたが内装工事はまだであり、多くの部分が剥き出しだ。


本来であればひどく殺風景な風景ばかりが広がるはずだが、登るほどホテル内の様相は整えられた。

一段飛ばしに駆け上がる速度に合わせるかのように、ホテルが出来上がる。


「……」


進むほどに、壁紙が張られ、しっかりとした手すりが取り付けられ、開いていだだけの穴には精緻な飾り窓が彩り、ついには踊り場を照らす淡い明かりが灯った。

こうした電気系の工事は本来、最後に行うものだ。


完成が近づいていた。

駆け上る速度が、時間を早送りにしているようにすら思えた。


優しい風が頬に当たり、避けた頬の傷を撫でた。

どうやら、エアコンの類も動いている。


目的の階ともなれば、ふかふかの絨毯まで敷き詰められた。

裸足で歩けばきっと心地良い感触だ。


しばらく進み、立ち止まる。

豪奢で落ち着いた雰囲気のホテルの、そこにいた。


細く、息を吐き出す。

耳に手を当て、確かめる。

一瞬だけ目を閉じ、すぐに開き、訊いた。


「どうした、その姿は」

「は――」


夢操者だった。


地面に座った体勢で、ひどく疲れた様子だった。

その隣には、ボロボロになったSさんが、より正確に言えばSさんの姿を取った偽警官が酷い様子で転がっていた。

顔に傷はついていないが、それ以外は被害が甚大だ。


「決まってんだろ、テメエの邪魔をしに来た」


凄絶な顔で笑った。

これ以上なく顔色は青ざめている。


「なるほど」


おおよそ、見当がついた。


「ずいぶん無茶なことを」

「うるせえ……」


震える足で夢操者は立ち上がった。

あるいは、今はとなってはXと言った方がいいのかもしれない。


ストーカーそのものの表情で、Xは言った。


「本物のSは、どこだ」

「言うわけがない」

「ふざけろ……」

「そこまでの執着心には感心する。だが、だからといって市民を見捨てることはしない」

「どこだ、クソ、おまえの家にも役所にもいねえ、後はテメエから聞き出すしかねえんだよ」


意識を別へと向ける。

この状態であっても心を読まれかねない。


「ひとつ聞きたい」

「答えるかよ」

「いったい今、どういう気分だ」

「あ?」

「先程、市職員のことを木偶だと表現した」

「……」

「約定から逃れるため、自らがその木偶となった気分はどうだ」


このXとの約定は、「俺が俺である限り守る」というものだった。


夢操者が夢操者でなくなれば――

陽爻ようこう神社の捕獲者に「改変」されたのなら、その連続性は断たれる。


捕獲者を操れるものを操り、夢操者は自らを「別のもの」に変えた。


「決まってんだろ」


目の奥に執着を燃やしながらそれは言った。


「最悪の気分だ」


苛立ちを受け取ったと思われる偽警官の姿が、その度合いを証明していた。


挿絵(By みてみん)

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