第百九話 物の怪は神
戦いは続いていた。プラントドラゴンとずっと対峙していた。
プラントドラゴンの体が光りながら、宙に舞い上がっていく。
「愚弄者め、神の鉄槌を受けるのだよ」
その言葉にしかめ面でヒョウが怒っていった。
「貴様、神になったつもりか? この植物ドラゴン野郎め!」
「神なら血みどろのことをするか。弱き人を助ける」
敵とヒョウの言葉に触発されて、ファイも続けていった。
確かに神は弱気をくじくではない。
プラントドラゴンは不敵な笑みを浮かべ、笑いながらいった。
「くははは、植物は根があれば再生することが出来る。我は意思を持った高等植物なのだよ。植物竜へと進化した。神なのだよ」
植物が神だと、プラントドラゴンはハッタリをかました。
ファイが、一歩前に出た。
「へ、笑わせんな。人間が理性しか持ってない植物に負けるか」
「面白い、我への挑戦か赤毛。この世界を我が植物ではびこらせるのだ、くははは」
そういい、プラントドラゴンは天高く飛翔した。
「そうれ、鉄槌を下す。もっとエネルギーをもらう植生化吸収だ、ドームよ、光れ!」
エネルギーを集めだしたその時だった。
ウィードだ。ウィードが瞬時に動いた。
「僕がいる限り、そうはさせないぞ。はあああぁッ」
「(ま、まさか、あいつ)」
ヒョウが何かに気が付いた。
ウィードは宙に飛んだ。
宙に飛び、ウィードは何かを確認した。
「(ドームは三つ、いや、五つ? 思ったより広範囲だ、風魔弾ウィンドブリッドを視点に広げるか)」
ウィードは手を構えた。この構えはファイやヒョウのとは少し違うが、もしや。
そして、ウィードは左手を天にかざし握った。その瞬間だった。
「風魔弾ウィンドブリッド、発生! 風竜波ウィンドドラゴン!」
なんと、飛ばしていたウィンドブリッドから風の竜波が巻き起こって、植物に向かっていく。ほとんど、同時に複数個所で何発もの風の竜波を生み出した。
どうやら、ウィードの技は念動操作で風の竜波を創り上げることが可能のようだ。
「やはり、竜撃だ!」
一瞬に複数の竜撃を生んだことにヒョウは重い口を開いた。
ウィードはそれでもというおももちで手を振りかざしながら言った。
「奴の再生力を考えるとほんの一瞬です。ファイさん、再生するまでに奴の本体のコアを粉砕してください」
「コア?」
「奴はさっき自分で弱点をいいました。根があれば再生することが出来る、必ず制御しているコアがあるはずです」
「そうか、人間でいう脳があるってことだな。わかった、任しとけ」
ウィードの直感は当たっていた。どこかにあるはずだと踏んでいたのだ。
ファイはうなずくと一撃で見つけると葬れるように、手を構えていた。
その矢先だった。
「ウィンドドラゴン、展開!」
「な、なに、複数の風の竜だと?」
なんと、ウィンドドラゴンが植物ドームにまとわりついた瞬間、一瞬で爆発した。
同時に複数の風の竜波が爆発した。
この衝撃でドームの植物が斬れていく。
「か、からだが、斬れる、ぐあぁあぁぁぁっ」
「全ての植物ドームを風の竜が斬っていく」
「風の竜だからだ、空気さえあれば、どこでも発生させれるんだ」
ファイもこれには驚いた。竜撃といえど、念動で複数動かせれたことに。
プラントドラゴンは風で切り刻まれていた。
植物が大破していく。
「我の、か、からだが切り刻まれるッ、くそぉ、再生!」
プラントドラゴンが再生をかけた時だった。
一瞬だけ切り刻まれた植物の中から薄く光るものがあった。
これをウィードは見逃さなかった。
「ファイさん、あれです、あれが奴のコアです!」
「みつけたぞ、へん、どこに移動しようが」
ファイは、後ろの宙に大きく飛んで間合いを稼いだ。
「これで、終わりだ!」
ファイは手を合わせ、技を発動させようとした。
この陣容はもしや。
ファイにラスタが集束していく。次の瞬間それは発動した。
「てやぁぁぁあぁッ、フレアドラゴン!」
やはり、竜撃だ。フレアドラゴンがコアを隠そうとした植物ごとのみこんでいく。
「ま、まて、それは!」
これが、プラントドラゴンの理性、コアの最後の断末魔となっていた。
ファイのフレアドラゴンは見事にプラントドラゴンのコアを燃やし尽くし消化した。
その瞬間、プラントドラゴンの本体の様子が急変した。
頭を押さえ、体をくねらせ、もだえ苦しみだした。
「グああっぁあぁっ、意思が、意思が。せ、制御が出来ん、か、からだが、再生できぬ」
「脳をやったか」
ヒョウがぼそりと重厚な声でいった。
そして、再びウィードが動いた。
「根っこは断ったものの、念のためだ、みじん切りにしておく」
植物ドームはウィンドドラゴンで大破していたものの、形が残っているものもあった。
ウィードはそれを見計らって、魔剣からウィンドブリッドを複数放った。
「風魔弾__ウィンドブリッド!」
着弾して、一瞬だった。ウィードは手を思いっきり握って、念動をかけた。
「風魔弾__ウィンドブリッド、展開、風魔爆」
DWOOOOOONNN!
大爆発が生じた。一瞬にして風の爆発が起こり、残っていた植物体は跡形もないくらい細かく斬れた。
残っているのは#砂埃__すなぼこり__#のような植物片だけだった。
この瞬間、プラントドラゴンは、再生することもできず、完全に息を絶った。
もう植物片が再生することはなかった。
「ふぅ、やったあ」
ウィードが嬉しそうにいうと、額の汗をぬぐった。
「再生しないな。あの広範囲に広がっていた植物竜を一瞬で平らげるとは、大したものだな、ウィード様」
「いいえ、皆さんの力あってのことです」
ヒョウの言葉に#謙遜__けんそん__#しながら、ウィードは言う。
その時だった、ウィードが近くに倒れている子供に気づいた。
さっきの親子だった。
ウィードは近寄り、かがみこんで、抱き起し、脈を診た。
「それより、きみ、大丈夫か?」
「ん、んぅ」
子供は弱っていたが、息はあるようだった。
「レギンさんと同じだ。まだ息がある」
「おい、こっちにいる人たちもかすかに息があるぞ」
「どうやら、奴の技は、閉じ込めてエネルギーを吸収するだけで、瀕死の状態にするだけだったみたいですね」
ウィードは考察したように言った。
そのときだった。
「ファイ、大丈夫か?」
「あ、キュラ様、それにテアフレナ様、エリュー」
「手当が皆済みました」
エリューがいうと、キュラが倒れている人の数を見て目を疑った。
「これは、どうしたんだ? 何が起きていたのだ?」
「敵はやっつけたぜ。本体を制御していた頭があったみてーだ」
ファイはへへッ、と笑い、愛想を返した。
「そうか、それをお前が」
「それより、キュラ様、街の倒れてる人、エネルギーを吸い取られてるみてーなんだ。回復魔法で助けることはできねーか」
ファイが言ったときだった。
後ろから誰かきた。その人の後ろには殺されたはずの皆の姿もあった。
どうやら全員助かったみたいだ。
「キュラ、助けなさい。瀕死の状態よ。見殺しにはできないわ」
「は、イーミ姫様」
姫様の言葉に、キュラは軽く敬礼をしながらいった。
そして、キュラは再び、倒れている人の数を見遣った。
大変な数だった。魔法力をアイテムで回復しながらでないといくら魔法達者でもできる数ではなかった。キュラにもそれはわかっていた。
「よし、魔法力が続く限り街の人を助けよう。テアフレナ、エリュー、ニミュエ、頼む」
「はいわかりました」
エリューが可愛く返事をした。
キュラは答えを聞くと、言葉を紡いだ。
「街の人の回復が終わり次第、ここを出発する」
キュラの言葉に、皆が頷いた。
だが、この先に待ち受けているのはデッドラインがあった。死の境界線が。
魔王が張り巡らした大地への呪縛。必ずと言っていいほど、死ぬ確率が近いといわれるテリトリーだった。
キュラの目の先にはそれが映っていた。
デッドラインを越せば、エトワル帝国領だ。
☆☆
その一連の戦いの模様を、フォライーは遠目で見遣っていた。
みていて、助けることもしない。魔族というのは冷徹そのものだった。
あざわらった。
「プラントドラゴンめ、しくじったか。やはり、竜といえど、植物。魔族には敵わないものよ」
いうと、フォライーは高らかと杖を振り上げた。
フォライーの身体が魔法の作用で光った。
「だが、もう一つ神玉を探し出せば、復活の日は近い。イヒヒ、覚えておれ、ウィードよ」
意味深な言葉を叩き、プラントドラゴンの生死を見届けるとその場をフォライーは後にした。
☆☆
UP予定。感想おまちしてます。内容でもキャラのことでもなんでも書いてくれると嬉しいです。
休みの日、忙しいのに読んでくださっている方ありがとうございます。
貴重な時間を割いていただいて本当にありがとうございます。
物語は更新していくので、読み物としてブックマークや感想していただけるとうれしいです。
これからもごひいきお願いします。




