O─1
「あの大樹を切り倒すのはどう?」
「賛成。その方が手っ取り早い。」
十刃の提案に即座に乗ったのは、天星の鞭から解放された麗華であった。
「別に良いんじゃね。」
凛之介も十刃の提案に賛成する。
「あては何でもええけど、霧宗はんはどうでっか?」
天星が霧宗に尋ねる。
「私もどんな作戦であろうと上手く合わせます。」
天星と霧宗は他の者に決断を委ねた。
「よし、十刃君の提案を採用しよう。」
代理指揮官の綾が十刃の提案を採用すると、
「切り倒すやったら、斬撃武器が使える十刃はん、綾はん、麗華はんがメインで動く方がええな。」
天星が意見を述べる。
「私が先行して動く。二人は私に合わせて。」
麗華が二丁のガンソードを剣に変換させる。
「……意外と麗華って戦闘バカなのか?」
十刃が綾に耳打ちする。
「ま、まぁやる気があることは良いことだ…」
綾は苦笑いしつつ、麗華を優しくフォローした。
「行くぞ!」
麗華が先鋒で大樹に走り出した。麗華の次に十刃と綾が続き、天星、霧宗、凛之介の三人は後方でいつでもサポートに回れる陣形をとる。
麗華がどんどん大樹に近付いていくと、周囲からうねる蔓と根っこが襲いかかってきた。だが、麗華は足を止めることなく次々と切り裂いていく。そして大樹に辿り着いた麗華が、粒子の刃で大樹に一撃を与えた。だが、流石は大樹。たった一撃ではビクともしない。
(もう一撃…!)
麗華が粒子の刃を振り上げた時、ドライアドが麗華達の方に狂気の笑みをこちらに向けた。その瞬間、大樹全体を囲むように棘の壁が出現し、麗華は咄嗟にバックステップして十刃と綾の元まで後退した。
「棘の壁か……」
十刃が試しに刀で斬ってみるが、思いの外硬く、傷がつくだけで切断までは至らなかった。
「ちっ…無駄に硬いな…」
十刃が棘を切断出来ないことを枝の上から見ていたドライアドは、クスクスと笑って十刃達を馬鹿にしてから、グリフォン討伐班の方に攻撃を再開した。
「さて、どうしたものか…」
綾が突破法を考えていると、スッと弓を構えた霧宗が隣に立った。
「私に任せて下さい。」
「どうするの?」
綾が霧宗に尋ねる。
「恐らくこの棘の壁は斬撃に対する耐性が強いのでしょう。ならば、『爆破』して切断します。」
霧宗は弦を引き、火属性を纏った赤色の粒子の矢を番える。
「だけど単純に硬度もあると思うぞ。」
十刃が告げる。
「あなたが刀で斬った際に傷がつきましたよね?つまり『外傷は付けられる』ということです。それさえ分かっていれば充分です。」
霧宗は赤い粒子の矢を数本、棘の壁に突き刺した。すると矢は細やかな粒状となり、僅かに空いた穴から、棘の中へ入り込んでいった。
「棘の壁、破壊させてもらいます。」
霧宗がパチンと指を鳴らした瞬間、棘の中の粒子が一斉に爆発し、内側から棘を吹き飛ばした。その結果、棘の壁に巨大な穴が空いた。
「お〜思った以上にすげぇや。」
凛之介が想像以上の光景に少々驚く。
「ここからです。」
霧宗が連続で粒子の矢を放ち、全ての棘の断面に矢を突き刺した。すると粒子の矢はまた粒状となり、棘の内部を満たした。そしてまた指を鳴らした瞬間、全ての棘の壁が木っ端微塵となった。
「外も内も硬度を高めしまうと、ガチガチなって動きが鈍くなる可能性があります。だから内側はあまり高くないように進化することが多いです。今回の棘も例外ではなかったようですね。」
霧宗は白フレームの眼鏡をクイッと上げながら、驚きから目を丸くしつつ、こちらを見下ろしているドライアドを睨みつけた。
「後は頼みますよ。」
霧宗が後衛に戻ると、ガンソードの麗華、薙刀の綾、そして刀の十刃の三人が大樹を切り倒すために走り出した。
「キャアァァァァァァァァアアア!!」
流石に命の危険を感じたドライアドは、奇声を上げながら蔓に根っこ、そして棘と、ありとあらゆる植物を操り、三人に攻撃を仕掛けた。
麗華、綾、十刃の三人はドライアドの総攻撃を搔い潜りながら、どんどんと大樹に近付き、遂に刃が届く範囲まで到達した。
「私がいく!」
綾は風属性を纏った薙刀で渾身の一撃を喰らわし、大樹の三分の一を斬った。
「次は私が!」
麗華は風属性を纏った粒子の刃で、綾が斬った同じ箇所を追撃する形で斬った。それにより大樹の三分の二が斬られる形となった。
「これで…終わりだぁぁぁぁああ!」
最後に残った十刃が風属性の刀で、残り三分の一になった箇所に渾身の一撃を喰らわした。
「キャアァァァァァァァァアアア!!」
次の瞬間、ドライアドが悲痛の叫びを上げながら枝から落下し、俯せに倒れた。
そして大樹の倒れていくに比例して、ドライアドの麗しき体はみるみると枯れていく。
「カ…!カ…!」
しわしわの老婆ようになってしまったドライアドが、恨みが籠った瞳で十刃を見上げつつ、ボロボロと枯れていく手を伸ばしてくる。しかし大樹が完全に倒れきった瞬間、ドライアドの体は全て枯れ、その姿を消滅した。
「任務完了。」
麗華がUFを解除し、ガンソードをデータチップ化させてポーチに収納した。
「どうやら向こうも片付いたようですね。戦闘の音が聴こえてきません。」
霧宗が森の南側から音がしなくなったことを確認する。
「あ〜あ、最後何もしなかったから不完全燃焼感が半端ないぜ。」
蚊帳の外となっていた凛之介が、ファンタジーマタールの金属バットで素振りをする。
「まぁええやない。誰も死なずに任務が終えたんやし。あ〜早く帰って焼酎飲みたいわぁ〜」
天星は既に帰還した後に飲む予定の酒を想像してワクワクしている。
「さて、恐らく向こうの方が疲弊している筈だ。こちらから合流しよう。」
綾の提案に賛成に全員が承諾すると、森の南側のグリフォン討伐班と合流するべく移動を始めた。
【麗華・綾・凛之介・霧宗・天星:『好感度1UP』】
〔Pへ〕




