H─10
「字史隊長…ですか…」
十刃は自分の前に立つ男性の名前を呟く。
蒼色の瞳は桜色の猫目となり、目の周囲に血管が浮かび上がっている。桜色のストレートセミロング艶やかな緑色へと変色していおり、左脇腹に埋め込まれているUFの周囲も血管が浮かび上がっている。そして力が体の内から溢れんばかりに出てきて、人智を超える動きが容易いレベルであった。
──この力、『覚醒』であった。
「俺の部下の魂、返してもらうぞ、蚩尤。」
字史が三叉槍を構え、力を込めた瞬間、十刃は字史からヒシヒシと強さが伝わってきた。
「汝、我カラ魂ガ解放サレテイタノカ。」
憤怒に満ちる顔で、蚩尤が字史に話しかけてきた。
「ああ。貴様の中は良い空間ではなかった。だから、部下達も解放させてもらうぞ!」
次の瞬間、字史は地面を蹴った。その速さは尋常ではなく、本当に人間なのかと疑いたくなるほどであった。字史はった二歩で蚩尤の目の前まで距離を縮めた。そして蚩尤側が防御に転じる前に、雷を纏わせた三叉槍で全身を攻撃した。
「グッ…!オノレェェェェェェ!」
全身の傷から血を噴き出しながら、蚩尤は怒りに任せて戈と戟を振るってきた。字史は一切動揺することなく、攻撃を最小限の動きで回避して一閃の一撃を蚩尤の右足に喰らわして切断した。それにより蚩尤は片膝をついた状態になった。
「苦しみながら消え失せろ!」
字史が止めを刺すべく、三叉槍を目にも留まらぬ速さで投擲する。
だが次の瞬間、蚩尤の身体中の傷から突如どす黒いオーラが禍々しく出始めた。三叉槍はどす黒いオーラで防がれ、字史の元に戻ってきた。
蚩尤はどす黒いオーラで全身の傷を塞いでいくと、切断している足、腕をオーラで形成すると、ゆっくりと立ち上がる。すると持っている全ての武器をその場に捨てた。
「ヴモォォォォォォォォォオォオオオ!」
耳を押さえたくなるほどの咆哮をすると、兜と鎧が砕け散り、代わりに筋肉が膨張し、身長が五メートル以上となった。そして己から放つどす黒いオーラで、六つ全ての武器を作り出すと、自身の周囲に浮かばせた。
「ほう…真の力というわけか。」
字史は動揺することなく、三叉槍を構える。
「ヴオォォォォオォォォォォォォーー!」
また咆哮をする蚩尤に、殆ど自我は残っていないようだ。そしてもう一度咆哮をした瞬間、周囲に浮かぶ武器の中、弩以外の五つの武器が字史に向かって飛んできた。字史は剣や矛などの攻撃を回避し続け、反撃の隙を伺うが、なかなか隙がなく防戦状態となってしまった。
(一か八か…)
このままではジリ貧だと判断した字史は、一か八か舞う武器の中を搔い潜って蚩尤に向かって走り始めた。しかし、真横から迫ってきた巨大な盾を避けきれず、衝突されて吹き飛んでしまう。
「くっ…!」
字史は空中で一回転してから着地し、プッと血を吐く。
「殺ス…汝ヲ…殺ス…!」
僅かに残った自我──殺意に従う蚩尤が、真っ赤な四つの目を字史に向ける。
「……面白い。」
字史は久々の強敵に、僅かばかり口角を上げた。
青い空を飛ぶ一台のヘリコプターは、後ろから鴆に追いかけられながらも、ナンバーズがいる島へと向かっていた。
「ほらほら!もっと速くしないと追い付かれるよ!」
ヘリコプターの後部座席に座る、緑色のポニーテールにオレンジの瞳、白衣を身に纏い、茶色のフレームの眼鏡をかけた二十代後半の女性──『科楽理香』が、何処か楽しそうにヘリコプターの操縦士を煽る。
「分かっている大人しく座ってろ!」
三十代後半のベテラン操縦士は必死にヘリコプターを操作しながら、後ろから煽ってくる理香に命令する。理香は口を尖らせてブーブー言いながら、素直に後部座席に座った。
「待っててね皆、最高の手土産用意したから。」
理香はグヒヒと笑いながら、島に到着するのを待つことにした。
「ヴオォォォォオォォォォォォォーー!」
蚩尤は六つの武器と己の筋肉を惜しみなく使い、字史を殺そうとする。字史は紙一重で回避しつつ、ほんの僅かな隙で反撃を繰り出す。そんな高レベルな攻防を繰り広げている途中、戈の鳶口状の刃が字史の右足に深めの傷を入れた。
(……!)
このまま戦闘を続行すると死に直結すると判断した字史は、バックステップをして距離を空ける。するといきなり右足に力が入らなくなり、ガクッと片膝をついてしまった。
(ちっ…!思いの外ダメージがあったか…!)
字史が傷を気にしていると、真横から迫ってきた巨大な剣への反応が遅れてしまった。ギリギリのところで防御することは出来たが、倒れている十刃のところまで吹き飛ばされてしまった。字史は空中で姿勢を立て直して十刃の隣に着地するが、その衝撃で右太股の傷から血が流れ、また片膝をつく状態となってしまった。
「殺ス…!二人共…殺ス!」
蚩尤が二人に迫ろうとした時だった。顔面にロケットランチャーが直撃し、数メートルほど吹き飛ばされた。
「おー!流石最新型のロケットランチャー!威力が段違いだねー!」
新しいロケットランチャーの爆発力に大満足しながら現れたのは、科学理香であった。
「……理香?」
予想外の者の登場に、流石の字史も少し困惑している。
──時は少し遡り、字史が戦闘中の上空。
「あっ!見つけた!……て、なんだ字ちん元気じゃん。まぁいいや。私はこのまま降下するから君はあの鳥達を引き付けてね!」
双眼鏡で十刃達を発見した理香が、操縦士に指示をしつつ、ヘリコプターの後部座席で降下準備を始める。
「ミイラ取りがミイラになるなよ!」
操縦士が降下準備中の理香に釘を刺す。
「大丈夫大丈夫♪字ちんが元気っぽいし♪まぁもし死んじゃった時はちゃんと壮大にお葬式してね♪」
パチッ♪とウインクをしてから、理香はヘリコプターのドアを開け、躊躇なく空へダイブした。一人残された操縦士はハァと溜め息をついてから呟いた。
「何が死んじゃった時だ。俺はお前が入隊する前からいているんだぞ。──科学理香、狩人として幻想怪物を討伐していた時代、数多の爆発系の武器を駆使して討伐する姿から、『爆破姫』として名を知られていた女が、そんな奴が早々死ぬかよ。」
呟き終えた操縦士は、追い付いてきた鴆の群れから逃げるのであった。
──時は戻る。
理香は蚩尤の前に立つと、片手で三つの手榴弾を器用に回しながら話しかける。
「さてさて牛さん、ちょっとの間待ってくれないかな?」
「殺ス…我ヲ傷付ケル者…全テ殺ス!」
蚩尤は一切聞く耳を持たず、二本の腕で理香を鷲掴みにしようとした。しかし、掴んだのは三つの手榴弾だけであった。
「ありゃりゃ?もう自我が残っていない感じか。なら、力づくで時間を作らせてもらうよ。」
軽業で蚩尤の頭の上に乗った理香は、持っている三本の細い糸を引いた。すると糸が結ばれている手榴弾のピンが引き抜かれ、蚩尤の掌の中で爆発した。
「グオッ…!」
蚩尤が吹き飛んだ腕をどす黒いオーラで作り出している間に、理香は蚩尤の周囲に黒い粉を撒き散らして距離を空けた。そして火を付けたライターを投げつけると、蚩尤の周囲を舞う黒い粉──火薬に引火して爆発を発生させた。蚩尤は全身を焦がしつつ黒い爆煙の中から出てくると、音もなく出現していた無人戦車に主砲を向けられていた。
「じゃっ♪バイバイ♪」
戦車の上に立つ理香がウインクをした後、持っているボタンをポチッと押した。すると戦車が主砲を発射し、蚩尤に直撃させると、爆発によって何百メートル先に吹き飛ばした。
「よし、今の内に♪」
理香は蚩尤とかなり距離が空いたことを確認すると、戦車をチップ化させてから十刃と字史の元へ駆け寄った。
「やっほー字ちん♪」
「理香!何故お前がここにいるのだ!」
理香に対して字史が叫ぶと、傷が痛み顔を少し歪ませる。
「そんなに叫ぶと傷に響いちゃうよ。そんな字ちんに良い差し入れ♪」
理香はニッと笑いながら、ある液体が入った二本の注射器を具現化させた。そして二人の腕に注入した。すると二人の傷がみるみる癒えていき、全回復した十刃はパチッ!と目を覚ました。
「おっ!気が付いたね♪成功して良かったよ♪」
目の前でご機嫌に笑う理香と、自身のダメージが全回復した現状に、十刃は頭がついていけず、呆然とした顔で理香を見詰める。
「理香、一体何を注入したのだ?」
字史が足の調子を伺いながら問う。
「時間がないから簡単に説明するけど、二人に注入したのは字ちんが持ち帰ってきた『酒呑童子の酒』をベースにした回復薬さ。回復効果は今体験している通りね。私は他の連中の回復に向かうから、あの牛さんのことは頼んだよ。」
理香は二人に蚩尤を託すと、先に上空から他のナンバーズを見つけていたらしく、平山へ直行した。
「緋雀、動けるか?」
字史が隣に立つ十刃に問い掛ける。
「はい!いつでもいけます!」
十刃は刀を構えて戦えることをアピールする。
「よし…いくぞ緋雀!」
「はい!」
二人は同時に覚醒状態となり、こちらに向かってくる身体中どす黒いオーラで再生されている蚩尤に向かって地面を蹴った。
「ヴォォォォォォォォォォォォオ!」
遂に自我を失い、ただ目の前の生物を殺すだけの獣と化した蚩尤が咆哮をすると、周囲に浮かぶ六つの武器が十刃と字史の迎撃に向かった。
「全快になった俺達を舐めるな!」
十刃は振り下ろされた巨大な剣に対し刀を振り上げ、真っ正面から応戦した。すると剣の方に亀裂が走り、バラバラに砕け散った。その隣で字史は矛と突き攻撃でぶつかり合い、矛を砕いていた。そんな二人に対して、蚩尤は弩でどす黒いオーラで形成された矢を連続で放つ。しかし体力全快覚醒状態の二人に、ただの乱れ撃ちなんて当たることはなく、蚩尤の目の前まで到着した。
「ヴォォォォォォォォォォォォオ!」
蚩尤は残り四つの武器を使い二人を殺しにかかる。十刃と字史は見事なコンビネーションを駆使して応戦し、戈、戟、弩を破壊する。そして最後の盾を破壊した時、蚩尤が二人に殴りかかった。十刃と字史は蚩尤からの攻撃を防御すると、くるっと空中で回転してから同時に着地する。そして十刃は、刀を鞘に納めた。
「これで終わりだ蚩尤!」
「部下の魂!返してもらうぞ!」
字史が先行し、雷を纏った三叉槍を目にも留まらぬ速さで投擲すると、蚩尤の心臓を貫いた。そして十刃は全ての力を込め、蚩尤に居合いの一撃を喰らわした。
「ヴッ…!ヴォォォォォォォォォォォォオ!」
二人の攻撃が致命傷となり、苦しみの咆哮をあげる蚩尤の体がどんどんと消滅していく。そして二人が見守る中、蚩尤はその姿を完全に消滅させた。
「任務完遂、ご苦労だった緋雀。」
字史が十刃を労う。
「はい、ありがとうございま…す…」
十刃は字史からの労いに対し礼を言っている途中に覚醒が切れてしまい、体から一気に力が抜けて倒れ、そのまま気を失ってしまった。
字史は倒れる十刃を抱え、ゆっくりと地面に寝かせた。
「初の覚醒はかなりの負担があったか。──だが、はやり緋雀には覚醒者の素質があったようだな。」
字史は片膝を立てる形で座り、気を失っている十刃の顔を見詰めるのであった。
二人の元に、魂が戻ったナンバーズと面々と理香が駆け寄ってきた。
「おい理香、緋雀にさっき俺達に注入した薬を注入してやれ。」
字史が理香に命令すると、理香は首を横に振った。
「悪いけど、三日以内に指定した使用量を越えて注入した場合、副作用で廃人化する可能性があるの。だから次に彼へ注入出来るのは三日後だね。」
「…そうか。ならば緋雀を運ぶしかないな。」
ナンバーズと理香は、気を失っている緋雀を運びつつ、この島に上陸する際に使用した船の方へ戻り、全員で島を脱出する。そして緋雀を休ませるため、キオワナ地区基地内の病室へと向かった。
島から離れていく船を、平山の山頂から一人の男性が眺めていた。三十代半ばで、マダムにモテそうなワイルドチックな顔つきである。だが目を引かれるのは、紅色の髪の間から生えている二本の鬼の角であった。しかしそれ以上に目が引かれるのが、背中に背負っている自分の身長とほぼ同じ長さの瓢箪であった。
「己が絶望から脱するための術があるのならば、たとえその方法が他人の命をどれほど奪おうと実行する。それが人間の底なしの欲望。」
そう呟いた時、脳内に透き通った美しい女性に似た声が響いた。
(『酒呑童子』、またあなたは人間に化けて勝手な行いをしていますね。)
「俺がどうしようとお前には関係ないだろ、『フェニックス』。」
男性の正体は、三大幻想怪物の一体──『地帝鬼の酒呑童子』であった。そしてそんな酒呑童子にテレパシーをしてきたのは、酒呑童子と同じ三大幻想怪物の一体──『空妃鳥のフェニックス』であった。
(ですがその身勝手な行動で、今後面倒な事になる可能性もあるのですよ。)
「知れたこと。俺はもっと欲望に溺れる人間を見たいのだ。止めるつもりはない。だからもうテレパシーをしてくるな。」
酒呑童子は一方的にテレパシーを切ると、船が消えていった水平線を眺め、
「人間の底なしの欲望…これほど面白い玩具はなかろう。」
狂った笑みを浮かべた後、その場から音もなく姿を消した。
「ん……」
十刃が目を覚ますと、そこは病室のベッドの中であった。自分以外誰もいないらしく、病室には時計の針の音だけが響いている。
その時、病室の扉が開き、理香が入ってきた。
「おっ、起きたね十刃君。体の調子は大丈夫かい?」
ニコッと微笑みかけながら、十刃が寝るベッドの隣のベッドに腰掛ける。
「しっかし凄いね〜君!私字ちん以外に覚醒出来る人初めて見たよ〜!」
すると、理香が少し興奮気味に十刃に近付いてきた。
「ちょっとだけ十刃君の体を調べさせてくれないかな?字ちんは全然調べさせてくれないし。」
ジリジリと迫ってくる理香は、鼻息を荒くしている。恐怖を感じた十刃は逃げたいが、体が動いてくれない。そして鼻息が当たるところまで顔が近付けてから、理香はアハハ!と笑いながら離れていき、またベッドに腰掛けた。
「冗談だよ。研究したい時は字ちんを捕まえて無理矢理でも調べるから。」
十刃はホッと安堵してから話しかける。
「……理香さんって字史隊長とホント仲良いですよね。」
「そりゃ同期だからね。私と字ちん、あと元帥の永美ちんは同じ時期に入隊したんだよ。」
「祖猟元帥って最初から元帥じゃなかったんですか?」
「うん。元々は一狩人として永美ちんも入隊したの。だけど入隊して一年後、その頃元帥を努めていた永美ちんのお父さんが病気で急死されて、早急に新しい元帥が必要となったの。で、白羽の矢が刺さったのが、娘である永美ちんだったってこと。」
「いきなり元帥って…大丈夫だったんですか?」
「大丈夫じゃなかったら、今も永美ちんが元帥をしてないでしょ?永美ちんは戦闘能力は中の上くらいだけど、頭はめちゃくちゃ良いの。確かIQが二百五十とかだったっけな〜」
「に、二百五十…!?」
桁違いの数値に、十刃は驚くしかなかった。
「そ。永美ちんはその頭の良さを活かして、今も元帥として頑張っているの。──で、私は入隊してから三年後、研究者の道を歩き始め、字ちんはそのまま狩人に居続け、今に至るの。」
「へぇ〜、理香さん達ってどうして世界の希望に入隊しようと思ったんですか?」
「入隊理由?ん〜っとね…永美ちんはお父さんの指示で、私は気分、字ちんは『自分の名字を歴史に刻む』ために入隊したの。」
その時、扉が開いて字史が入ってきた。
「おい、人の過去を勝手に話すな。」
「え〜良いじゃん別に〜減るもんじゃないし〜」
理香が口を尖らせてブーブーと文句を言うが、字史が無言で睨み付けるため、ハァと溜め息をついた。
「はいはい分かりましたよ。じゃ、私は帰るね。薬は三日後にちゃんと注入してあげるから待っててね十刃君♪」
そう言い残し、理香は病室を後にした。字史は理香を見届けた後、視線を十刃に向けた。
「どうやら無事のようだな。」
「はっ、はい。ご心配をおかけしました。」
どうやら字史は十刃の様子を見に来てくれたようだ。
「……ならば良い。」
そう言って字史は病室から出ていった。一人となった十刃は、理香の話していたことが気になりつつも、まだ疲れがあるので眠ることにした。
十刃の病室を後にした字史は、一人病院の屋上へと上り、柵に凭れながらキオワナ地区の強め日差しで日向ぼっこをしていた。
「俺はどこまで頑張れば、歴史に『数希晴』の名字を刻めるのかな…姉さん。」
晴天の空を仰ぎながら、字史は一人呟くのであった。
三日後、十刃には酒呑童子の酒ベースの超回復薬が注入され、無事に完全回復することが出来た。そして誰も欠けることなく、全員アズマキョウへと帰還した。
その翌日、早速十刃には新たな任務が言い渡された。
「はぁ…もうちょっと休ませてくれてもいいだろ…」
いつものカジュアルな服装を身に纏う十刃が、ハァと大きな溜め息をつきつつ、円柱型の高層ビル──『ホープビル』のエントランスを歩いている。
「つべこべ言わず従え。それが命令だ。」
そう言いながら十刃の前に現れたのは、いつもの黒を基調とした洒落た軍服を身に纏った字史であった。
「字史隊長、もしかして今回の任務ご一緒ですか?」
「ああ。少々骨がある敵のようだ。故に俺も駆り出されたのだ。」
字史はそう言うと、ホープビルから外に出る。十刃も遅れないように外に出て、字史の少し後ろを歩く。
「……あの、前に理香さんが話していたことなんですが、何で名字を歴史に刻もうと思っているのですか?」
十刃は覚悟を決めて尋ねた。すると数秒の沈黙があった後、字史が背を向けたまま答えた。
「約束なんだよ。俺の『姉さん』とのな。」
「えっ、お姉さんがいるんですか?」
十刃は流れで尋ねるが、字史がこれ以上訊いてくるなと言わんばかりの空気を作ったので、これ以上質問することを断念した。
(この人は一体何を背負っているんだ……)
十刃の中で、字史に対しての謎がまた増えるのであった。
ED23:名字を歴史に刻む、それが約束
〔Exへ〕
「製本版はここで終了なのですが、ネット版限定で新しく『Ex』という話を追加しました。正直読者の皆様にはどうでもいいことですが、一応報告しておきます。」
「それでは最後に『Ex』をお楽しみ下さい!」




