H─9
「天星…なのか…」
十刃は自分の前に立つ女性の名前を呟く。
紫色の瞳は銀色の猫目となり、目の周囲に血管が浮かび上がっている。銀色でストレートロングの髪は艶やかな紫色へと変色していおり、胸の谷間に埋め込まれているUFの周囲も血管が浮かび上がっている。そして力が体の内から溢れんばかりに出てきて、人智を超える動きが容易いレベルであった。
──この力、『覚醒』であった。
「皆はんの魂ぃ、はよう返してもらおか。」
天星が鞭を構え、力を込める。
「汝、我カラ魂ガ解放サレテイタノカ。」
憤怒に満ちる顔で、蚩尤が天星に話しかけてきた。
「ご名答。あんたさんの中はホンマいけ好かん空間やったわ。せやから他の皆はんも早う解放してもらうで!」
次の瞬間、天星は地面を蹴った。そして瞬く間に蚩尤の目の前まで距離を縮めた。蚩尤は巨大な盾を構え、天星からの攻撃を防ごうとした。天星は鞭を巧みに操り、巨大な盾の下にある僅かな隙間から内側に侵入させ、巨大な盾を持つ腕に巻き付けると、千切れるくらいの強さで締め付け、骨を砕くことによって盾を落とさせた。そして防御がなくなった瞬間、炎を纏った鞭で滅多打ちにした。
「グッ…!オノレェェェェェェ!」
滅多打ちされている状態に怒りを爆発させた蚩尤は、怒りに任せて戈と戟を振るってきた。天星は攻撃を中断し、華麗な動きで回避しつつ、隙を突いて両足に鞭を巻き付け、四つん這いになる形に倒した。
「このまま終いにする!」
天星は足から鞭を首に巻き付けて骨を折ろうとした。
だが次の瞬間、蚩尤の身体中の傷から突如どす黒いオーラが禍々しく出始めた。天星の鞭はどす黒いオーラで防がれてしまった。
蚩尤はどす黒いオーラで全身の傷を塞いでいくと、切断している腕や折れている骨をオーラで形成すると、ゆっくりと立ち上がる。すると持っている全ての武器をその場に捨てた。
「ヴモォォォォォォォォォオォオオオ!」
耳を押さえたくなるほどの咆哮をすると、兜と鎧が砕け散り、代わりに筋肉が膨張し、身長が五メートル以上となった。そして己から放つどす黒いオーラで、六つ全ての武器を作り出すと、自身の周囲に浮かばせた。
「真の力…みたいなもんかえ?」
天星は少し動揺しつつ、鞭を構える。
「ヴオォォォォオォォォォォォォーー!」
また咆哮をする蚩尤に、殆ど自我は残っていないようだ。そしてもう一度咆哮をした瞬間、周囲に浮かぶ武器の中、弩以外の五つの武器が天星に向かって飛んできた。天星は剣や矛などの攻撃を回避し続け、反撃の隙を伺うが、なかなか隙がなく防戦状態となってしまった。
(一か八かや…!)
このままではジリ貧だと判断した天星は、一か八か舞う武器の中を搔い潜って蚩尤に向かって走り始めた。しかし、真横から迫ってきた巨大な盾を避けきれず、衝突されて吹き飛んでしまう。
「くっ…!」
天星は空中で一回転してから着地するが、ダメージが大きく片膝をついてしまう。
「殺ス…汝ヲ…殺ス…!」
僅かに残った自我──殺意に従う蚩尤が、真っ赤な四つの目を天星に向ける。
(あかん…勝てる気がせぇへん…)
天星は一分も経たない戦闘で歴然の力を味わい、頭の中にネガティブな思考が過った。
青い空を飛ぶ一台のヘリコプターは、後ろから鴆に追いかけられながらも、ナンバーズがいる島へと向かっていた。
「ほらほら!もっと速くしないと追い付かれるよ!」
ヘリコプターの後部座席に座る、緑色のポニーテールにオレンジの瞳、白衣を身に纏い、茶色のフレームの眼鏡をかけた二十代後半の女性──『科楽理香』が、何処か楽しそうにヘリコプターの操縦士を煽る。
「分かっている大人しく座ってろ!」
三十代後半のベテラン操縦士は必死にヘリコプターを操作しながら、後ろから煽ってくる理香に命令する。理香は口を尖らせてブーブー言いながら、素直に後部座席に座った。
「待っててね皆、最高の手土産用意したから。」
理香はグヒヒと笑いながら、島に到着するのを待つことにした。
「死ンダ…?死ンダ…?死ンダ…?」
蚩尤が残り僅かの自我で、足元に横向きで倒れる、身体中ボロボロの天星を見下ろし、死んでいるかどうか確認している。
(あかん…力が入らへん…)
逃げなければ殺される──そんなこと頭で理解している。だが、体が動いてくれない。加えて心臓が鼓動を打つ度に痛みを生じる。これは十刃の覚醒が切れてしまった際と同じ症状、つまり天星も覚醒が切れてしまっている。
「生キ…テル?生キテル…生キテル!」
蚩尤は天星がまだ息をしていることに気付き、己の拳を振り上げ、止めを刺そうとした。その時、背後からロケットランチャーが直撃し、大きな爆発が発生する。その爆風によって天星は少し飛ばされてしまったが、結果的に蚩尤と距離が空くこととなった。蚩尤は少し焦げた背中をそのままに、ぐるっとロケットランチャーが飛んできた方向に体と視線を向ける。
「ちっ…ロケラン直撃して傷一つなしかよ…」
ロケットランチャーを発射した当人である十刃が、全くダメージを受けていない蚩尤に舌打ちをする。
「我ヲ…傷付ケシ汝…殺ス…!」
蚩尤の標的が十刃に変わる。
(保ってくれよ…俺の体…!)
十刃はUFを起動し、更に覚醒状態となる。そして人智を超えし速さで蚩尤との距離を一瞬にしてなくし、一本の腕を斬り落とした。しかし斬り落とされた腕はすぐにどす黒いオーラで義手を作られ、そのまま十刃を殴り飛ばした。吹き飛んだ十刃は空中で体勢を戻そうとするが、上手く動いてくれず地面に転がった。
「くっ…!」
十刃は直ぐに立ち上がると、頭上に気配を感じ、咄嗟に前にダイブした。すると頭上から剣が振り下ろされ、間一髪で回避する形となった。しかし安堵するのも束の間、他の武器を一気に攻撃を仕掛けてきたので、防戦一方となってしまう。そして正面から突進してきた矛を刀で弾いた際、左肩を擦ってしまい、大きな傷を負ってしまった。
「ぐっ…!」
十刃は痛みを堪えつつ、最後の力を込めて地面を蹴り、蚩尤の首を撥ね飛ばす勢いで急接近した。しかし巨大な盾によって攻撃は防がれ、怯んでいる間に蚩尤に殴り飛ばされた。飛ばされた先には天星が倒れており、気を失っているようだ。
「殺ス…!二人共…殺ス!」
蚩尤が二人に迫ろうとした時だった。顔面にロケットランチャーが直撃し、数メートルほど吹き飛ばされた。
「おー!流石最新型のロケットランチャー!威力が段違いだねー!」
新しいロケットランチャーの爆発力に大満足しながら現れたのは、科学理香であった。
──時は少し遡り、十刃が二度目の戦闘に入った頃の上空。
「あっ!見つけた!私はこのまま降下するから君はあの鳥達を引き付けてね!」
双眼鏡で十刃達を発見した理香が、操縦士に指示をしつつ、ヘリコプターの後部座席で降下準備を始める。
「ミイラ取りがミイラになるなよ!」
操縦士が降下準備中の理香に釘を刺す。
「私ただの科学者から有り得るかもね♪もし死んじゃった時はちゃんと壮大にお葬式してね♪」
パチッ♪とウインクをしてから、理香はヘリコプターのドアを開け、躊躇なく空へダイブした。一人残された操縦士はハァと溜め息をついてから呟いた。
「何がただの科学者だ。俺はお前が入隊する前からいているんだぞ。──科学理香、狩人として幻想怪物を討伐していた時代、数多の爆発系の武器を駆使して討伐する姿から、『爆破姫』として名を知られていた女が、そんな奴が早々死ぬかよ。」
呟き終えた操縦士は、追い付いてきた鴆の群れから逃げるのであった。
──時は戻る。
理香は蚩尤の前に立つと、片手で三つの手榴弾を器用に回しながら話しかける。
「さてさて牛さん、ちょっとの間待ってくれないかな?」
「殺ス…我ヲ傷付ケル者…全テ殺ス!」
蚩尤は一切聞く耳を持たず、二本の腕で理香を鷲掴みにしようとした。しかし、掴んだのは三つの手榴弾だけであった。
「ありゃりゃ?もう自我が残っていない感じか。なら、力づくで時間を作らせてもらうよ。」
軽業で蚩尤の頭の上に乗った理香は、持っている三本の細い糸を引いた。すると糸が結ばれている手榴弾のピンが引き抜かれ、蚩尤の掌の中で爆発した。
「グオッ…!」
蚩尤が吹き飛んだ腕をどす黒いオーラで作り出している間に、理香は蚩尤の周囲に黒い粉を撒き散らして距離を空けた。そして火を付けたライターを投げつけると、蚩尤の周囲を舞う黒い粉──火薬に引火して爆発を発生させた。蚩尤は全身を焦がしつつ黒い爆煙の中から出てくると、音もなく出現していた無人戦車に主砲を向けられていた。
「じゃっ♪バイバイ♪」
戦車の上に立つ理香がウインクをした後、持っているボタンをポチッと押した。すると戦車が主砲を発射し、蚩尤に直撃させると、爆発によって何百メートル先に吹き飛ばした。
「よし、今の内に♪」
理香は蚩尤とかなり距離が空いたことを確認すると、戦車をチップ化させてから気を失っている十刃と天星の元へ急いで駆け寄った。そして二人の近くで屈むと、ある液体が入った二本の注射器を具現化させ、二人の腕に注入した。すると二人の傷がみるみる癒えていき、全回復した二人はパチッ!と目を覚ました。
「おっ!気が付いたね♪成功して良かったよ♪」
目の前でご機嫌に笑う理香と、自身のダメージが全回復した現状に、十刃は頭がついていけず、呆然とした顔で理香を見詰める。
「あっ、『自分に何をした?』って顔してるね。時間がないから簡単に説明するけど、君達二人に注入したのは字ちんが持ち帰ってきた『酒呑童子の酒』をベースにした回復薬さ。回復効果は今体験している通りね。私は他の連中の回復に向かうから、あの牛さんのことは頼んだよ。」
理香は二人に蚩尤を託すと、先に上空から他のナンバーズを見つけていたらしく、平山へ直行した。
十刃は隣に立つ天星と向かい合うと、無言で頷き、こちらに向かってくる身体中どす黒いオーラで再生されている蚩尤に視線を向けると同時に、覚醒状態となった。
「いくよ天星!」
「了解や十刃はん!」
二人は同時に地面を蹴り、蚩尤に接近する。
「ヴォォォォォォォォォォォォオ!」
遂に自我を失い、ただ目の前の生物を殺すだけの獣と化した蚩尤が咆哮をすると、周囲に浮かぶ六つの武器が十刃と天星の迎撃に向かった。
「全快になった俺達を舐めるな!」
十刃は振り下ろされた巨大な剣に対し刀を振り上げ、真っ正面から応戦した。すると剣の方に亀裂が走り、バラバラに砕け散った。その隣で天星は矛全体に鞭を巻き付け、思い切り締め付けることで矛を砕いていた。そんな二人に対して、蚩尤は弩でどす黒いオーラで形成された矢を連続で放つ。しかし体力全快覚醒状態の二人に、ただの乱れ撃ちなんて当たることはなく、蚩尤の目の前まで到着した。
「ヴォォォォォォォォォォォォオ!」
蚩尤は残り四つの武器を使い二人を殺しにかかる。十刃と天星は見事なコンビネーションを駆使して応戦し、戈、戟、弩を破壊する。そして最後の盾を破壊した時、蚩尤が二人に殴りかかった。十刃と天星は蚩尤からの攻撃を防御すると、くるっと空中で回転してから同時に着地する。そして十刃は、刀を鞘に納めた。
「これで終わりだ蚩尤!」
「皆はんの仲間の魂!返してもらうわ!」
天星が先行し、鞭を蚩尤の上半身に締め付け、骨という骨をバラバラにする。そして十刃は全ての力を込め、蚩尤に居合いの一撃を喰らわした。
「ヴッ…!ヴォォォォォォォォォォォォオ!」
二人の攻撃が致命傷となり、苦しみの咆哮をあげる蚩尤の体がどんどんと消滅していく。そして二人が見守る中、蚩尤はその姿を完全に消滅させた。
「やったな十刃はん。」
天星が妖艶な笑みを浮かべる。
「あ、ああ。」
十刃は天星の笑みに照れつつ返事をした。そして二人は覚醒が切れ、体から一気に力が抜けて倒れて、そのまま気を失ってしまった。
気を失っている二人の元に、魂が戻ったナンバーズと面々と理香が駆け寄ってきた。
「おい理香、二人にさっき俺達に注入した薬を注入してやれ。」
字史が理香に命令すると、理香は首を横に振った。
「この二人には既に注入しちゃっているの。三日以内に指定した使用量を越えて注入した場合、副作用で廃人化する可能性があるの。だから次に二人へ注入出来るのは三日後だね。」
「…そうか。ならばこの二人を運ぶしかないな。」
ナンバーズと理香は、気を失っている二人を運びつつ、この島に上陸する際に使用した船の方へ戻り、全員で島を脱出する。そして二人を休ませるため、キオワナ地区基地内の病室へと向かった。
島から離れていく船を、平山の山頂から一人の男性が眺めていた。三十代半ばで、マダムにモテそうなワイルドチックな顔つきである。だが目を引かれるのは、紅色の髪の間から生えている二本の鬼の角であった。しかしそれ以上に目が引かれるのが、背中に背負っている自分の身長とほぼ同じ長さの瓢箪であった。
「己が絶望から脱するための術があるのならば、たとえその方法が他人の命をどれほど奪おうと実行する。それが人間の底なしの欲望。」
そう呟いた時、脳内に透き通った美しい女性に似た声が響いた。
(『酒呑童子』、またあなたは人間に化けて勝手な行いをしていますね。)
「俺がどうしようとお前には関係ないだろ、『フェニックス』。」
男性の正体は、三大幻想怪物の一体──『地帝鬼の酒呑童子』であった。そしてそんな酒呑童子にテレパシーをしてきたのは、酒呑童子と同じ三大幻想怪物の一体──『空妃鳥のフェニックス』であった。
(ですがその身勝手な行動で、今後面倒な事になる可能性もあるのですよ。)
「知れたこと。俺はもっと欲望に溺れる人間を見たいのだ。止めるつもりはない。だからもうテレパシーをしてくるな。」
酒呑童子は一方的にテレパシーを切ると、船が消えていった水平線を眺め、
「人間の底なしの欲望…これほど面白い玩具はなかろう。」
狂った笑みを浮かべた後、その場から音もなく姿を消した。
「ん……」
十刃が目を覚ますと、そこは病室のベッドの中であった。徐に顔を横に向けてみると、そこには隣のベッドで自分と同じ状況の天星の姿があった。暫くボ〜ッと眺めていると、天星が目を覚まし、こちらを向いてきた。
「お、おはよう天星。」
いきなり目が合ったことに少し照れつつ、挨拶をする十刃。
「おはようさん。どうやらあて等はまた気を失ったみたいやなぁ。」
「そのようだね。まぁあんだけ無茶なことしたんだし、当然の反動だな。」
十刃がハハハと笑うが、天星もクスクスと色っぽく笑う。そして一頻り笑った二人は、同時に白い天井に視線を向けた。すると病室内に時計の針の音だけが響いた。
(……気まずい空気…)
十刃は病室内を包む無言の空間に耐えきれなくなってきた。
(何か話題になるものは……)
十刃は一分ほど考えた後、一つ話題を思い付いたので、早速話しかけることにした。
「天星ってさ、何で世界の希望に入隊しようと思ったの?」
「ん〜そんなん訊いてどないするん?」
天星が誘惑するような感じで質問する。
「あ…いや、別に話したくないなら良いけど…」
十刃は顔を赤らめつつ返答する。天星は十刃のピュアな反応にクスクスと笑った後、
「そうやなぁ…どう話そかぁ…」
話の構成を考えた後、自分の入隊までの過去を語り始めた。
あては『ミコヤイケ』という街で生まれたんや。ミコヤイケは、麗華はんの故郷のナイラに負けず劣らず古風な街や。あての母親はそんな街で『花魁』として一番人気の人やった。だからあても小さい頃から花魁になるための修行をさせられていたんや。そして二十歳になった頃、あては花魁として働き始めた。別に花魁としての仕事は楽しかったし、嫌いやなかった。でも一つ気になってたんは、自分と同い年の子が、楽しそうにデートしていた姿やった。
あては恐らく同い年の女の子の中やったら、群を抜いて沢山の男性と触れている。それはまぁ花魁やさかい当たり前やけど。でも、あてと男性の間には『愛』がなかった。どれだけ肌を重ねようが、そこにあるのはビジネス愛と性欲だけやった。せやからあては、『真実の愛』というもんに憧れていたんや。
そしてあてが二十六歳になった時、あてにアズマキョウの『ラワシヨ』という店で働くように言われたんや。あては首都に行けば真実の愛があるかもしれんと、アズマキョウ行きを承諾した。
そしてあては電車に乗り、アズマキョウへと出発した。でもその途中で幻想怪物に襲われてな、パイプ状檻が破壊させ、あてが乗ってた電車は横転してもうた。あては奇跡的に無傷やったけど、車内から出た瞬間、幻想怪物に襲われそうになった。その時あてを救ってくれたんが、当時二十歳の字史隊長やった。その戦いの美しさに、あては一目惚れしてしもうたんや。今まで偽りの恋の中で生きてきたあてにとって、この初恋はかなり衝撃的な出来事やった。
あては字史はんのお陰で無事にアズマキョウに到着した。そして後に字史はんが世界の希望に入隊した期待の超新星だと知ったあては、すぐに花魁を止めて、世界の希望に入隊した。少しでも字史はんに近付きたくて。
「……てのが、あての入隊理由や。」
天星が入隊の理由を話し終えた。
「天星、字史隊長のこと好きだったんだ。」
意外な事実に、十刃は驚いている。
「お、お願いやから本人には言わんといてな…!」
天星は頬を赤らめて十刃に背を向ける。
「心配するな。俺は応援してるぜ。」
十刃が優しい声で告げる。
「……ありがとうさん。」
天星は背中を向けたまま、笑顔で小さく礼を言った。
三日後、十刃と天星には酒呑童子の酒ベースの超回復薬が注入され、無事に完全回復することが出来た。そして誰も欠けることなく、全員アズマキョウへと帰還した。
その翌日、早速十刃には新たな任務が言い渡された。
「はぁ…もうちょっと休ませてくれてもいいだろ…」
いつものカジュアルな服装を身に纏う十刃が、ハァと大きな溜め息をつきつつ、円柱型の高層ビル──『ホープビル』のエントランスを歩いている。
「そうやなぁ〜あても焼酎飲みたかったのにぃ。」
そう言いながら十刃の前に現れたのは、いつもの高級な草履を履き、紫を基調とした花魁が着るような肩を露出した着物を身に纏う天星であった。
「もしかして今回の任務、天星と一緒?」
「そうやでぇ。よろしゅう頼みますぅ。」
天星はニコッと笑ってからホープビルの外へ出る。十刃も外に出て、天星の隣を歩く。
「天星ってさ、字史隊長のどこに惚れたの?」
十刃が興味本位で訊くと、天星はいつもの大人の余裕をなくし、
「な、何をいきなり訊いてるんや!そんなん言う訳ないやろ!」
少し頬を赤らめて視線を逸らした。十刃はその天星の反応を見て、まだまだ天星もピュアだなと笑うのであった。
ED22:天に輝く星々の中で見付けた、真実の光
〔Exへ〕
「製本版はここで終了なのですが、ネット版限定で新しく『Ex』という話を追加しました。正直読者の皆様にはどうでもいいことですが、一応報告しておきます。」
「それでは最後に『Ex』をお楽しみ下さい!」




