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EISENWALD ONLINE《アイゼンヴァルト・オンライン》  作者: うっちー
MAGAZINE01 鉄と火の街アイゼンヴァルト

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BULLET2:ログイン


視界が暗転する。

一瞬の浮遊感。

しかし、それはエレベーターが落ちるような感覚ではなかった。

どこか深い水の中へ沈み込んでいくような感覚。

意識だけが静かに沈降していく。


「リンク開始」


どこからともなく声が響いた。

機械音声。そう認識したはずなのに、不思議と無機質には聞こえなかった。

男とも女ともつかない声。感情はない。

だが、人が話しているような自然さだけがあった。


視界がほどける。


輪郭が崩れる。


自分の身体が曖昧になっていく。


手がどこにあるのか。


足がどこにあるのか。


分からない。


それなのに、自分が存在していることだけは理解できる。


「感覚同期率を設定します」


次の瞬間――全身へノイズが走った。

ビリッ――

電気とは違う。もっと内側。神経を一本ずつなぞられるような感覚。

肩……腕……指先……胸……腹……脚。

身体の輪郭を確認するように、何かが通り過ぎていく。


「っ……」


思わず息を呑む。

不快ではない。

だが違和感は凄まじかった。

まるで身体そのものを書き換えられているようだった。


「……これ、やばいな」


声が漏れる。

VRゲームは何本も遊んできた。

それでも、こんな感覚は初めてだった。

そして次の瞬間。

黒髪、黒目。175cmほどの中肉中背の男性アバターが構築された。


視界が開ける。

真っ白な空間。壁も天井もない。何も存在しない場所。

それなのに、自分は立っている。

体重が足裏へ掛かっている。

重心も分かる。

指を動かせば指が動く。

拳を握れば筋肉が収縮する感覚まで伝わる。


「……すげぇな」


思わず呟いた。

ただ見えているだけじゃない。

そこにいる。

そんな感覚だった。


「チュートリアルエリアへ移動します」


空間が揺らぐ。

白い世界が崩れる。

景色が組み上がる。

鉄骨。コンクリート。無機質な壁。天井を走る配管。

まるで訓練施設のような空間だった。

油の臭いまで感じる。

思わず、すん、と鼻を鳴らす。

錯覚ではない。

確かに臭った。


「ゲーム適性テストを開始します」


目の前に武器ラックが現れる。

整然と並ぶ装備。

ハンドガン。ライフル。近接武器。

様々な武器が置かれていた。

足が自然と前へ出ていた。

考えるより先に身体が動く。

最初に手を伸ばしたのはハンドガンだった。

金属の冷たさ。重量。グリップの質感。

手のひらへ伝わる感触が異様に細かい。

滑り止めのチェッカリング。金属の継ぎ目。ほんの僅かな重心の偏り。全部分かる。


「……本物か?」


思わず呟く。

構える。

サイトを覗く。

自然と肩が落ちる。

肘が締まる。

視界の中央へ照準が収まる。

違和感がない。

まるで最初から自分の身体だったみたいに。


トリガーへ指を掛ける。

カチッ。

空撃ち。弾は出ない。

だが指先には確かな感触が残った。

トリガーの遊び。抵抗。落ちる瞬間。発射されるはずだった反動の予兆。

そこまで再現されていた。


「やりすぎだろ」


思わず笑う。


次はライフルを手に取る。

ずしりと重い。

肩へ担ぐ。

自然と姿勢が変わる。

前傾になる。

頬付けした瞬間、視界の使い方まで変わった。


「悪くないけど……違うな」


ライフルは好きだ。

だが、しっくりは来ない。

武器を戻す。

そのまま近接武器のラックへ向かう。

剣。槍。斧。大剣。

様々な武器が並んでいる。

どれもよく出来ていた。

重さがある。

握り心地も違う。

だが――その中で一つだけ視線が止まった。

銃剣付き長銃(バヨネットライフル)

ジョンは立ち止まる。

銃――そして剣。

二つを合わせた武器。

どこかロマンを感じる。

手を伸ばす。

持ち上げる。

重い。長い。取り回しも悪い。

実用性だけ見れば微妙だろう。

それでも――


「こんなのもあるのか」


思わず笑う。

脳裏に先ほど見たPVが浮かぶ。

銃。剣。動き。

このゲームなら、こういう武器も面白いかもしれない。

構える。

振る。

突く。

感触を確かめる。

そして。


「……これだ」


自然に言葉が出た。

理屈じゃない。

手に馴染む。

それだけで十分だった。


「ゲーム適性テスト完了を確認」


システム音声が響く。


「触覚設定を変更しますか?」


「触覚設定?」


ジョンは眉をひそめた。

改めて自分の手を見る。

拳を握る……開く。

皮膚の感覚。関節の動き。筋肉の張り。

全部ある。

ここまで来るとゲームというより現実だった。

だからこそ、設定画面を開く気にはならない。

気になるのはもっと先だ。

この世界そのものだった。


「プレイヤー登録:Johnジョン完了」


空間が揺れる。

光が集まる。

景色が崩れる。


「転送先:アイゼンヴァルト」


その言葉が響いた瞬間だった。


まだ何も見えていない。


それなのに。


鉄の臭いがした気がした。


油の臭い。


蒸気の熱気。


遠くで鳴る金属音。


錯覚かもしれない。

だがジョンは確信していた。

この世界は面白い。

光が落ちる。

世界が変わる。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。


本作が初めての作品となります。

まだまだ拙い部分も多いかと思いますが、楽しんでいただけましたら嬉しいです。


ご感想や応援の★をいただけると、とても励みになります。

一章は①から⑤まで5日連続で投稿します。

これからも少しずつ更新していきますので、ぜひお付き合いいただければ幸いです。



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