BULLET1:PV
「……であるからして」
教授の声が教室に流れている。
誰も真面目に聞いていない講義室で、学生たちはスマホを触り、時間を潰していた。
その中で俺も同じように画面を開いていた。
「おい、またアクション映画か?」
横から学友の声が飛ぶ。
「いや、違う」
俺は視線を外さずに答えた。
「VRMMOの新作PV」
「へえ、グラすげぇな」
学友は軽く笑う。
だが俺が見ているのはそこじゃない。
画面の中。
森。
ゴブリン型モンスターが4体。
武装したプレイヤーがM1911を構えている。
動画を少し戻す。
プレイヤーが銃を構える場面で止めた。
「ん?」
学友が首を傾げる。
「どうした」
「いや」
俺は画面を拡大する。
肩……肘……手首……重心。
どれも自然な流れだった。
ゲーム特有のモーションの簡略化がない。
銃を構える動作そのものが現実に近い。
「すごい自然だな」
思わず呟く。
「何が?」
「動き」
学友は意味が分からない顔をした。
俺は説明しない。
再生を続ける。
ドン、キィン。
銃声。
1体目……2発。
首元へ吸い込まれるように命中する。
ゴブリンが崩れ落ちた。
残り3体。
「AGIブースト」
プレイヤーの身体が加速する。
だが、ただ速いわけじゃない。
踏み込み。体重移動。銃を構える動作。視線移動。
一つ一つの動作が速く、全部が噛み合っている。
「……速い、じゃないな」
無意識に呟いていた。
距離が消える。そんな表現が近かった。
ダン……ダン……ダン。
もう1体が倒れる。
残り2体。
ゴブリンが同時に突進した。
プレイヤーが一瞬遅れる。
体勢が崩れる。
視界が揺れる。
吹き飛ばされた。
「……崩された」
思わず身を乗り出す。
ゴブリンが迫る。
倒れたままでは間に合わない。
そう思った瞬間だった。
カシャッ。
ダンッ、ダンッ、ダンッ、ダンッ、ダン。
地面に倒れたまま撃っている。
「リロード……」
思わず声が漏れる。
金属音。
マガジン交換。
動作が速い。
だが、それ以上に無駄がない。
銃を落とさない。
視線を切らない。
敵から目を離さず、立ち上がる。
その手には直剣があった。
「スラッシュ!!」
刃が光る。
一閃。
最後の1体の首が飛ぶ。
静寂。
画面が暗転した。
『どう?ガンアクションも剣も、かなりリアルだぜ!』
PVの締めくくり。
学友が笑う。
「すげぇな」
「だろ?」
「リアルなゲームだな」
「いや」
俺は首を振った。
「そうじゃない」
「また始まった」
呆れた声。
だが構わない。
俺が見ていたのは剣でも銃でもない。
プレイヤーの動きだった。
「今までのVRMMOはゲームだった。でも、これは違う」
「何が?」
少し考える。
そして答えた。
「人が動いてる」
学友が固まる。
「……は?」
「動かしてるんじゃない、動いてるんだ」
上手く説明できない。
だが感覚としては確かにあった。
レベル。装備。スキル。
そういう数字だけじゃない。
プレイヤー自身の動きが結果になる。
そんな空気があった。
学友は苦笑する。
「相変わらず変なところ見るな」
「そうか?」
「まぁ、リアルってことか。お前、アクション映画好きが転じて、武術やサバゲーも齧ってたぐらいだもんな」
キーンコーンカーンコーン。
講義終了の鐘が鳴る。
学生たちが立ち上がる。
学友も荷物を持った。
「ところで今日暇か?夜出かけないか?」
聞こえてはいた。
だが意識は別の場所にあった。
もしPV通りなら。
このゲームは面白い。
それもたぶんかなり。
俺はスマホを閉じる。
そして席を立つ前に、もう決めていた。
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最後までお読みいただき、ありがとうございます。
本作が初めての作品となります。
まだまだ拙い部分も多いかと思いますが、楽しんでいただけましたら嬉しいです。
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これからも少しずつ更新していきますので、ぜひお付き合いいただければ幸いです。




