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復讐のベアリーパー  作者: Pのりお
第一章 二人の出会い
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17話-2 不穏

 二人の会話はまだ続いていた。


 公爵が尋ねる。


「それ、で、どうする、ので、す?」


 何を言うかはおおむね想像できている。だが、あまり聞きたくない言葉だ。


「そうですね……殺しますか」


 平坦な口調だった。


「で、も」

「ええ。そうですね。王妃を殺すとなると、リスクが非常に大きい。さらに言えば、まだそこまでする必要があるわけではないです。まあ、冗談ですよ」


 しかし、今の段階ではまだ必要ないというだけで、必要があると判断され次第殺しにかかるということだ。


「おうじ、は?」

「王妃を殺すのであれば当然殺します。一人殺すのであれば、二人まとめて殺したほうが楽です。二人殺そうが一人殺そうが、リスクもあまり変わりません」

「そう、ですね。ま、とめてころ、しちゃえばいいと、おもい、ます」

「二人殺されれば、国は揺れるでしょう。悲しむものも多いでしょう。しかしながら、我々のなすべきことにはそれだけの大義がある。そうは思いませんか?」

「神、ののぞむことで、あれば」


 ええ、と相槌を打つ声が聞こえてくる。


「この国は腐っています。力のあるものを上に引き上げられない今の仕組みは間違っています。魔力を持つ者が支配し、魔力でもっておさえつけなければなりません。魔力こそ正義です。どんな国であっても、誰かが襲ってきたときに守ってくれるのは魔力です。魔力という、神がお預けになった力こそ、人類を導く道しるべとなるべきです」


 これが、レイア教。


 俺は、そのご高説を黙って聞いていた。レイア教が魔力を重視していることは聞いたことがある。しかし、実のところ、魔力を重視しているというより崇拝している。それは、神が与えたもうたものであるから。


 魔力が重要でないとは思わない。魔力はほぼ軍事力と言っても過言ではない。そして、軍事力がなければ国は滅ぼされるだけだ。


 しかしながら、魔力でおさえつけるという言葉に強い違和感を覚えた。この男の目指す未来が訪れたとき、いったいどうなっているのだろうか。


「そして、我々は魔力の強い者の集まりでもあるわけです。すでに国一つ分の軍事力は備えています。これはもはや戦争なのですよ」

「……そ、のときは、きょ、うりょくをおしみ、ませ、ん」

「ありがとうございます。必ずやあるべき姿に正しましょう」


 レイア教の規模がどれほどのものなのかはわからない。しかし、今の言葉を信じるのであれば、相当な人数がいるものと思われる。もしかしたら、トリトロンだけに収まらず、ほかの国にも存在するのかもしれない。そもそも、あの褐色の男は、トリトロンの人間ではないかもしれない。


「ひとまず、これからやるべきことは、リナを手元に戻し、リナから許容量以上の情報を入手した者を始末することです。すでに強い力を持っていますが、まだ我々の存在を公にされるわけにはいきません。確実に勝てる戦力、確実に新しい世界を作れるだけの地力を得るまで力をためておく必要があります」


 近いうちに動きがありそうだと感じた。リナにしゃべらせたくないのであれば、リナを早々に引き戻さなければならない。


「そして、つぶすべき人間は確実につぶします。あなただけには任せません。必要が生じれば、こちらからも戦力を渡しましょう。決して逃がすことなく、息の根を止めるのです。王子シルヴィルトはともかく、ビリヤンカ王妃の魔力は強い。油断してはなりません」

「わ、かっています。この、けんについては、わた、しが必ず決着を、つけます」

「楽しみにしておりますよ。明日までには結論を出します。殺すべきか、そうでないのか。そして、前者の結論となり次第、あなたには準備を始めてもらいます。そのことを覚えておいてください」

「りょう、かい、しました」


 公爵はよだれを垂らしながらうなずいた。


「では、今日の通信は以上にしましょう。これから忙しくなります。お薬も控えめにしてください」

「……でき、る限り努,力します」


「あなたにとってもこれは汚名返上のチャンスです。自分で招いた危機くらいは自分で解決してみせてください」

「は、い」


「もしも、リナの存在が厄介になれば、リナを消すことも考えなければなりません。リナの存在がなければ、あなたの発言力も自然と弱まることでしょう。今回の件を見事に収め、リナの存在を今まで同様に活かすことができれば、あなたはこの教団において強い地位を維持しつづけられます」


 がんばってください。その言葉を最後にアクチュエータからの音声が途絶えた。


 その途端、公爵の体が崩れ落ちる。相変わらず口からよだれが垂れている。仰向けに寝転がり、うーうーと獣のようにうなりながら天井を見上げていた。


 今、公爵は何を考えているのだろうか。目がさらに血走り、呼吸が荒くなっている。


 しばらく天井に向かって吠えていたかと思うと、急に立ち上がり、カーテンにかみついた。そして、カーテンレールから引きはがし、カーテンの堅い生地を引き裂こうと両腕に力を込めている。


 びりっ。音を立ててカーテンに穴が開いた瞬間、公爵は満足そうに小さく笑った。


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