表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私の異世界征服記  作者: 伊簑木サイ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/7

《迷子になったら、それ以上その場所から動かないのよ。近くの大人に助けを求めなさい》

《迷子になったら、それ以上その場所から動かないのよ。近くの大人に助けを求めなさい》


 注意力散漫な子供だった私は、母からそのように言い聞かされたものだったけれど、この状況でそれが適用できるかというと、できない気がした。

 それは、私が二十四歳で子供の部類には最早入らないからではなく、ここが人に出会えそうもない、深い森の中だったから。

 上は高い樹木が空を覆い、おかげで昼間らしいのに薄暗く感じる。足元はまばらに丈の短い草木か、水気に満ちて苔むしているか。

 里山しか知らない私には、詳しいことはよくわからないけれど、確か地理の教科書に載っていたこんな写真の気候は、降水量が多かった気がする。飲み水には困らないかもしれない。でも、雨をしのぐ方法がわからない。

 あたりを見回しながら、さっきから私の脳はフル回転していた。ただし悲しいかな、私の頭のデキはそれほどよくない。

 ここで生きていくのに、圧倒的に知識が足りない。

 それを痛感していた。

 不安がむくむくと大きくなっていく。冷静になれ、冷静になれと自分に言い聞かせてみたが、とうとう我慢できずに、しゃがみこんだ。そんなことしている場合じゃないとわかっていても、立っていられなかった。

 どうしよう。ここ、どこ。なにがどうなったの。どうやったら元に帰れるの。……もしかしたら、帰れないの。

 その恐ろしい考えに、呼吸が早くなる。

 やだ、やだ、やだ、やだ!!

 私は頭を抱え込んだ。何も考えたくなかった。ここで目をつぶって、寝て起きたら、そうしたら。

「……どうにもなるもんかっ」

 私は叫んだ。勢いをつけて、とにかく立ち上がる。

 そんなことしていたら、死ぬ。このまま夜がきたら、山の中は冷える。雨でも降られたら、低体温で間違いなく弱る。

 食べ物がなくても死ぬし、飲み水を確保できなくても死ぬし、でも、一番考えたくないのは、毒を持った虫類や、人を襲う猛獣に遭遇することだった。

 安全な場所を探さなければならない。少なくとも、日が暮れるまでに。

 どうすればいい。どっちへ行けばいい。

 考えろ、考えろ、考えろ!

「わっかんないよぉっっ」

 私はまたもや叫んだ。その声で何かをおびき寄せることになるかもしれないなんて、考えられもしなかった。

 私の常識では、山に入るときは、大きな音をたてることになっている。そうすると、猪も熊も鉢合わせする前に違う道を選んでくれる。

 少なくとも、幼い頃から連れて行かれた山菜狩りでは、そう習った。

 けれど、ここでは。この、違う世界では。

 背後で、それもすぐ近く、手を伸ばせば触れそうなあたりで、ザンッと音がした。重いものが落ちたような。

 私は反射的に振り返った。

 そのとたん、ぐ、と両肩を掴まれ、ダンッと体を地面にたたきつけられる。

 背中を強く打って、息ができなくなる。痛みと恐怖で吐き気がしてくる。

 私は咳き込みながら、必死に肩を掴むものに手をやり、朦朧と霞みがちな目を開いて、何が私を襲っているのか、確かめようとした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ