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#ハードボイルド探偵X FILE.1『古風な依頼書』  作者: 釈 余白


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2.ちょろい調査

 まさか小学生のクラスメートが夢に出てきて泣いていたから探してほしいだなんて、随分とメルヘンチックな依頼もあったもんだ。


 さてどこから手を付けようかと考えた結果、オレはまず卒業アルバムの中で一番はっきり写っている写真のコピーを取りにコンビニへ行くことにした。



 オレが繁華街の入り口にあるコンビニでコピーを取り終わると、入れ替わりで入ってきたやつと目があう。


「呑みに行くにはまだ随分と早いじゃねえか。これだから自由人てのはうらやましいねえ」


「バカ言え、オレだって時間の概念くらいあらあ。仕事中だよ」


「おめえさんが仕事? それこそバカ言っちゃいけねえぜ。道楽の間違いだろ」


 そう言って蝶ネクタイをした中年男はケラケラと笑った。まったく下品なやつだ。人間こうはなりたくない。


 もちろん口には出さないがオレはコイツが嫌いだ。間違っても友人ではなく、単に安酒を煽るために行く安スナックで良く会うだけの関係である。


 しかもこいつはやたらと目ざとくて、人のことを観察するような目で見てくるところも気に食わねえ。そして今回もオレが手に持っているブツに興味を示しやがった。


「なんだそりゃ、卒業アルバムじゃねえか。おまえさん小学生の子供でもいたのか?」


「まさか、オレはまだピチピチの独身だぜ。これは仕事関係の資料だ。それ以上でも以下でもねえ」


「そっか、たまには本業もあるってことだな。それにしても○○小とは偶然もいいとこだな」


「偶然ってどういうことだよ。まさか卒業生だなんて言わねえよな? お前に学があるとは思ってねえが、さすがに小学校くらいは出てるだろうからありえねえ話でもなさそうだ」


「いやいや、おれは北関東出身だから違うぜ。でも例のスナックのママはそこの卒業生だから客の中にも先輩後輩が結構いるらしい。さすがに現役はいねえだろうけどな。カッカッカ」


「なんだと!? そりゃいいことを聞いた。正直とっかかりが無くて何から始めようか悩んでたんだ。さて早速顔出しに行ってみるかな」


 なにがそんなにおかしいのか知らねえが、ニヤニヤと薄ら笑いをしている顔とはさっさとおさらばしようとオレがコンビニを出ようとすると、男は立ちふさがるように両手を広げた。


「なんだよ、昼間から呑める立場がうらやましいからって邪魔するこたあねえだろうに。嫌がらせはやめてくれや」


「なにかねえのか? おれのおかげでとっかかりができたんだろ? まあタバコ買いに来たところだ、ひと箱で勘弁してやんよ」


 いまどきタバコひと箱はなかなかの出費である。だがコイツの言うことももっともだと納得するしかねえ。オレはしぶしぶ必要経費を支払った。



 それにしてもひょんなところでいい情報が手に入ったもんだ。正直今回の調査は困難を極めるんじゃねえかと思っていた。


 それがこんなことがあるんだから探偵はやめられねえ。地元で商売を続けているようなママだ。それなりに顔が利くだろう。


 オレはご機嫌で繁華街へと入って行った。



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