76 モルドガルド
「なるほど……そんなことが……」
「魔族なのに……なんと言うか……今までとは違う不思議な感じだったんですね……」
「それにしても、デコイで自分は身を隠すとか……凄いことしてんのな」
ニティアの話を聞いているルシオ達。
「結局、魔力探知ができる魔族には意味なかったけどね……」
「ですってフィニスさん!」
「あぁ!逆に言えば俺らにバレずになんでもできちゃうってことだよなルシオさん!」
「まぁ怖い!」
『あんた達なんなのよ』
2人のやり取りを見ていたゼフィリアが冷たい視線をルシオ達に送る。そしてその後、視線を地面の一点に移し、ゆっくりと口を開いた。
『やっぱりここにいたんだ』
ボコボコ……ヒョコっ
『急に風が吹き荒れて、こやつらが飛んでいったと思ったら……やはりゼフィリアか。久しぶりだな』
『そうね』
地面から急に出てきた小さなドラゴン。見たこともない小さな生き物の登場にフィニスとニティアの目が丸くなっていた。
「きゃっ!」
「うぉ!?なんだ急に!!」
2人の反応に一瞬首を傾げたエラリスであったが、ふと2人がモラティの存在をまだ知らなかったことに気づき、ゆっくりとモラティの前まで歩き、跪く。
「この子は土の精霊のモラティ。私たちの道で会ったんだよ」
「なるほど……」
「そうだったのね……」
ニティアが少しだけモジモジしている。おそらく触りたい欲求が出ているのだろうが、フィニスは気づかないふりをして口を開いた。
「まだ契約はしてないのか?」
「この坑道にいる魔族を倒したら契約してくれるって。結局私は何もしてないけどね」
『うむ。そうであったな』
『なんだ、まだしてなかったのね』
エラリスが目を閉じ、魔力の波長を調整。片手を地面に置き、魔法陣を展開させる。
『お主の魔名を』
「……エラリシア」
名前を聞いたモラティがゆっくりとエラリスに近づく。
距離が近づくにつれ、地面に展開されている魔法陣の優しい光が溢れ出していた。
『私の名はモルドガルドだ』
名前を聞き、目を開けて頷くエラリス。
「我が名はエラリシア。土の精霊、モルドガルド。その名を貴方に捧げます」
『我が名はモルドガルド。エラリシアの魔名を刻むとともに、契約を受け入れよう』
モラティが地面に置いたエラリスの手に口をつけるとともに、エラリスの胸元が黄色に輝く。
「……くっ!」
エラリスに苦痛の表情が浮かぶ。次の瞬間、胸元の輝きがふわりと身体から抜け出し、そのままモラティの身体へと入っていった。
『契約完了だ』
「はぁ……はぁ……」
リヴァレーとの契約の時、そのまま意識を失って倒れたことを思い出したフィニスが急いでエラリスの元へ駆け寄る。
「大丈夫か?!」
背を支えるような形でしゃがみ込むフィニスに、エラリスは疲労の表情を浮かべながらも首を傾げた。
「……ん?あ……ちょっと疲れたかも……」
トン……
そう言い、フィニスの肩にもたれ掛かるように体重を預ける。
「おっと……」
エラリスが倒れぬように、両手で肩をしっかりと押さえる。
『ねぇエラリス。わざとやってるでしょ?今回私そんなに魔力を使ってないわよ』
『うぬ。そんな枯渇するほど消費はしておらんだろ』
「バレてた……」
『全くもう!』
少しだけしょんぼりした顔をしながら、ゆっくりと身体を起こすエラリス。その瞬間、ゼフィリアはしれっとフィニスの肩に腰をかけていた。
「まぁ、無理はするなよ?」
フィニスが起き上がり、エラリスに手を差し出す。
「ん、ありがと」
その手を取り、エラリスはゆっくりと立ち上がった。
「さて、無事に魔族も倒せて、契約もできたわけなんだが……砂漠化の原因は大丈夫なのか?」
ひと段落ついたタイミングで、ルシオがモラティに尋ねる。モラティはのそのそと土の中へ戻り、ひょっこりと顔だけを覗かせるようにしてルシオの方を見た。
『原因はここだ』
「ここ?」
5人は周囲を見渡す。戦闘の影響により、所々崩れてはいるが、少し開けたただの空間である。
「どう言うことですか?」
『ふむ。ここは魔石がよく採れていた場所だと言うことは知っているか?』
「あぁ、そう言えばそんなことルシオが言っていたわよね」
『まずそれが原因なのだ』
「ん?」
全員がキョトンとした顔でモラティを見つめる。
『ここに埋まっている魔石の大半が、マナを溜め込む……地中においては、地中の水分を蓄えるような効果がある魔石なのだ。まぁ……掘り出した人間がその魔石をどう使っているのかは知らぬがな』
「と言うことは、人間が原因で砂漠化が進んでいたって言うことですか?」
モラティは首を左右に振る。
『それもあるが、それだけではない。ここにいた魔族。彼奴が自身の魔力を癒やすために、この近辺に埋まっておる魔石の魔力を吸い取っておってな…….』
「レヴスが……」
『しかし、これで砂漠化の進行は止まるであろう』
全員が安堵の息をついたものの、結局また人間がここで採掘を始めれば、砂漠化が進んでしまう。
一時的に止まっただけであって、根本的な解決にはなっていない。
「なぁ、モラティ。お前はここに住んでいるのか?」
急なフィニスの問いに首を傾げるモラティ。
『いや?特に決まった場所に住んでいると言うことはない。問題のある土壌があれば、そこに行くこともあるし、休みたい時は綺麗な地中や洞窟の中で休んでいるからな』
「ならさ、ここを崩して封鎖とかってできないのかな?」
「確かにそれもありだとは思いますが……オシスの人たちはこの採掘で生活を賄っていたというのも事実です。採掘ができなくなった今でも大変そうなのに、これから完全に仕事を失ってしまっては……」
「だめかぁ……」
「……なら別の収入源があればいいわけだろ?もしかしたら……何とかなるかもしれないぜ」
ルシオがニヤリと笑った。




