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72 グラダ坑道


「あの洞窟ですかね?」


 夕方に街を出て南に数時間。すでに当たりが暗くなる頃、視線の先に地面に埋もれた坑道の入り口が見えてきた。


「意外と遠かったな……」

「こんな距離をリヴちゃん1人で歩いたのかしら……」

「さすがに子供1人じゃ厳しいだよな……例のもぐらが関係しているのかもな」

「もぐらの精霊……」


 砂まみれになりながら、坑道の入り口まで辿り着いた5人。その入り口で一度立ち止まり、坑道の中を凝視する。


「かつては大量の魔石が採れたことで盛んに採掘が行われていたグラダ坑道」

「あら、ルシオよく知ってるじゃない」

「君たちが日中ダラダラしている間に、俺だって酒場に行ったりして情報を仕入れてんのよ?」

「てっきり昼間から飲み歩いてたのかと思った」


 エラリスの言葉に軽く肩を落とすルシオ。


「他には何か聞けましたか?」


 アルテアの言葉に少しだけ視線を上げるルシオ。


「約十年くらい前から、坑道に採掘に行った人間が帰ってこなくなったらしい。もちろん国に依頼して、調査団も派遣したらしいが……その調査団も帰って来ず……凶暴な魔物が住み着いたんじゃないかってことで、人が寄り付かなくなったそうだ」


 ルシオの話を聞き、眉を顰めるフィニス。それに気づいたルシオが、フィニスに視線を移した。


「なんか似てるだろ?」

「あぁ。湖畔の遺跡の時と似てるな」

「魔物じゃない。もしかしたら魔族の可能性もある。気をつけて行こう」


 ルシオの言葉に皆が頷き、坑道の中へと進んでいく。



 しばらく使われていない坑道。とうぜん照明などは無く、真っ暗な坑道内を、ニティアが作り出した火の玉の光を頼りに進んでいく。


「魔物一匹出てこないな……」


 フィニスがぽつりと呟く。


「でも、奥からは嫌な魔力を感じるよ」

「ええ……今まで感じたことがない魔力です」


 ニティアとアルテアの言葉に頷くエラリス。


「って事は、魔女や双剣の魔族では無いってことか……」

「ええ……どちらかと言えば、灯喰病の時の魔族の魔力に近い感じです……魔力の量は桁違いですが……」

「となると……」

「ギースみたいな黒い魔族の可能性があるって事か……」


 遺跡での戦闘を思い出し、額から嫌な汗が流れる3人。そんな3人を見たエラリスが、一歩先を歩き始める。


「目標は精霊。奥の嫌な魔力の調査はそのついでだから。とりあえず行けるところまで行ってから考えよう」


 3人の不安を払拭するためなのか、ただただ精霊のことしか頭にないのか……そんなエラリスの言動に心が軽くなった3人は軽く笑みを浮かべる。


「確かに、もぐらがスライムに襲われてるかもしれないしな(笑)先を急ごう」

「そうだね(笑)」


 辺りを警戒しながら、奥へと進んでいった。



「まぁ……こういうこともあるよな」


 そう言葉を発したフィニスの目の前に映っているのは、左右二つに分かれた道。もちろん、採掘した魔石を運び出すために作ったであろう、トロッコ用線路も左右二つに分かれている。


「どっちの方が嫌な感じがするとか分かるか?」


 フィニスがニティアに視線を送る。


「どっちも嫌な感じがする……と言うか、その嫌な魔力が坑道内に溜まりすぎてるせいで分からないわね……」


 ニティアの言葉に困ったような顔で頷くアルテア。


「どうしましょう……どちらかにみんなで行きますか?」


 その言葉に、エラリスが指先に小さな炎を発生させ、分かれ道の片方の前へ進み出した。


「二手に別れよう。行かなかった方に精霊がいたらすれ違っちゃうかもしれないし。魔族が現れても、私かニティアが魔法を使えばもう片方が気づく。どっちかの魔力を感じたら急いで合流すればいいよ」


 確かに一理ある。魔女並みの化け物でもない限り、会敵した瞬間にやられるという可能性も高くはないだろう。そう思ったルシオがフィニスを見て頷く。


「わかった。でも絶対に魔族と会っても、全員が合流するまで無理をしない。場合によっては逃げることも頭に入れておいてくれ」


 全員が頷く。


「なら、こっちは俺とニティアで行くよ。照明を灯せるニティアとエラリスは分けないとだし、前衛もそれぞれいた方がいいだろ?ルシオの耐久にはアルテアがいた方がいいだろうしな」

「大丈夫ですか?」

「私がいれば大体何とかなるわよ」

「いや、俺もいるんだって……」

「分かった。そうしよう。ニティア、その前に……」


 ルシオがニティアに何かを耳打ちする。


「え……あんた魔力大丈夫なの……?」

「そこは大丈夫な出力でお願いします(笑)」


 そう言い、壁を背にして盾を構えるルシオと、そのルシオの盾に杖を当てるニティア。


「いくわよ!」

「おう!」


 ピカッ!


 辺り一面を眩しい光が包み込む。


「うおっ……結構持っていかれたな……でもまぁ、これなら何とかなるわ。サンキュ!」

「使う時は気をつけなさい」

「分かってるよ。それじゃお前達も気をつけて!」


 構えていた盾を持ち上げ、ルシオとアルテア。そしてエラリスの3人が片方の道へと進んでいく。


「そんじゃ俺らも行きますか」

「そうね」


 3人を見送ったフィニスとニティアも、別の道へと歩をすすめていった。

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